2014年の改正で、旧薬事法から中身とともにその名を変えた「医薬品医療機器等法」。施行から丸5年の節目が近づき、次の改正に向けた議論がスタートしました。厚生労働省の審議会で年内に意見をとりまとめ、改正の必要性について結論を出す予定です。
INDEX
来年の通常国会での改正視野に
厚生労働省は4月11日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会を開き、医薬品医療機器等法(薬機法)の改正に向けた議論を始めました。現行法の附則では施行後5年をめどに見直しを行うと規定されており、2019年が丸5年にあたります。
前回の改正では、
▽医薬品・医療機器などの安全対策の強化
▽医療機器に関する規制の構築
▽再生医療等製品に関する規制の構築
▽一般用医薬品(OTC)の販売ルールの整備
などが行われました。安全対策の強化では、添付文書の記載は最新の知見に基づいたものとすることを規定し、厚生労働相への届け出を義務付ける「添付文書の届出制」を新設。再生医療等製品を早期に実用化するため「条件・期限付き承認」制度を導入し、OTCは第1類・第2類医薬品のインターネット販売が解禁されました。
厚労省は年内に部会の意見を取りまとめ、改正を行うかどうか結論を出す予定。改正が必要となれば、2019年の通常国会への法案提出が視野に入ります。
改正議論の3つの論点
厚労省は改正議論のキックオフとなった4月11日の部会に、
▽革新的な医薬品・医療機器等への迅速なアクセス確保、安全対策の充実
▽医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を確保する仕組みの充実
▽薬局・薬剤師のあり方、医薬品の安全な入手
の3つの検討テーマを示しました。今後、これらを軸に改正に向けた議論が進むことになります。
(1)革新的医薬品への迅速なアクセス
1番目の「革新的な医薬品・医療機器等への迅速なアクセス確保、安全対策の充実」は、AI、核酸医薬、ゲノム創薬、ゲノムによる個別化医療、ビッグデータといった技術革新への対応が目的です。
検討の視点としては、医療上の必要性が高く、開発段階で画期性が期待される医薬品・医療機器などを迅速に実用化する承認制度や、リアルワールドデータを承認審査や市販後の安全対策に利用するための制度、などが挙がっています。
(2)適切な製造・流通・販売の確保
2番目の「医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を確保する仕組みの充実」がテーマに挙がった背景には、承認書と異なる方法で医薬品を製造していた化学及血清療法研究所(化血研)の問題や、C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が流通した問題などがあります。
メーカーのいわゆる「三役」(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)をはじめとする管理者・責任者の役割や責務の明確化や、製造・流通・販売に関わる企業の経営者・責任者の責務の明確化、違反に対する新たな行政上の措置の導入などが論点です。
(3)薬局・薬剤師のあり方
3番目の「薬局・薬剤師のあり方、医薬品の安全な入手」では、地域包括ケアシステムの中で薬局が果たすべき役割を整理し、国民や患者がより利益を享受できるような医薬分業・かかりつけ薬剤師・薬局を推進することや、遠隔服薬指導を含むICT技術の活用策、個人輸入の法令上の位置付けの明確化が検討されることになりそうです。
今回、厚労省が示した改正に向けた検討テーマには、革新的医薬品の迅速な承認やリアルワールドデータの活用など規制緩和策も盛り込まれていますが、4月11日の部会では慎重な意見も出ました。製薬企業に大きな影響を及ぼす法律だけに、議論の行方が注目されます。