右肩上がりの成長を続けてきたCSO(医薬品営業受託機関)業界が正念場を迎えています。日本CSO協会の調査によると、加盟8社の2017年の稼働コントラクトMR数は3515人で前年から9.5%減少。協会は2022年にアウトソーシング率(全MRに占めるコントラクトMRの割合)を10%まで高めたい考えですが、足下では6%を下回っています。
過去最大の減り幅
日本CSO協会が4月に公表した「わが国のCSO事業に関する実態調査」の結果によると、加盟8社の2017年10月1日現在の稼働コントラクトMR数は3515人で、前年から9.5%減少。09年の調査開始以来、減り幅としては過去最大となりました。
協会は減少の要因について「製薬業界でMR組織の再編が進む中、コントラクトMRの稼働数にも影響が出た」と分析。MR認定センターの「MR白書」によると、国内のMR数は13年の6万5752人をピークに3年連続で減少。協会の阿部安孝会長(アポプラスステーション社長)は「プライマリー領域の売り上げが大きかったメーカーが、後発医薬品への置き換え率が高くなるにつれて人員の調整をしているというのが一番大きな理由ではないか」と話します。
「2000人は増える余地ある」
後発医薬品の使用拡大と長期収載品の売り上げ減、薬価の引き下げにプライマリー領域からスペシャリティー領域へのシフト…。市場環境が大きく変わる中、営業体制の見直しはどのメーカーにとっても大きな課題。MRの削減はもはや業界のトレンドになったと言ってもいいでしょう。
こうした中、CSO協会は2022年にアウトソーシング率(全MRに占めるコントラクトMRの割合)を欧米並みの10%程度まで高めることを目標に掲げています。仮に全MR数が現在の水準を維持すれば、22年にはコントラクトMRは6000人以上に増える計算。阿部会長は「MRが10%減って5万7000人になったとしても、アウトソーシング率10%ならコントラクトMRはまだ2000人くらい増える余地がある」と期待します。
しかし、17年の全MRに占めるコントラクトMRの割合は5.6%にとどまり、前年から0.5ポイントダウンしました。ここ数年は5%台後半から6%台前半で増減を繰り返しており、かつてのような右肩上がりではなくなっています。業界としては「ここ2、3年がチャレンジ」(木﨑弘副会長=シミック・アッシュフィールド社長)です。
中小メーカーの利用拡大に期待
コントラクトMRは減少した一方で、CSOを活用するメーカーの数は増加を続けています。17年は116社で前年から13社増と、10年(16社増)に次ぐ高い伸びとなりました。
活用企業数の広がりを支えているのが、中小メーカーの増加です。MR500人未満でCSOを利用するメーカーの数は、09年から3倍以上に増えました。病院市場へのアプローチを強化する後発品メーカーなどで利用が広がっているといい、協会は中小メーカーでの利用拡大に期待しています。
欠員補充や新薬の発売といった従来のニーズに加え、最近では産休・育休への対応も増えています。働き方改革や女性の活躍が企業経営の大きなテーマとなる中、「残業の削減や、女性が働きやすい環境の構築といった経営課題について、CSOが製薬企業の相談相手として協力することでアウトソーシング率を上げていきたい」(阿部会長)考えです。
2018年は、日本でCSOのサービスが開始されてから20年の節目の年にあたります。協会は、▽中小メーカーでの活用が広がってきたこと▽一部メーカーでは人員調整が一巡したこと――を背景に、18年は稼働コントラクトMR数がプラスに転じると見ています。節目の年に「アウトソーシング率10%」という目標の達成に向け、弾みをつけることができるのでしょうか。