CRO(医薬品開発受託)の市場が活況を呈しています。
日本CRO協会の年次業績報告によると、協会会員企業の売上高は合計1925億円で前年から11.7%増加。18年は5.5%増の2031億円を予想しており、2000億円の大台を超える見通しです。国際共同治験の増加が売り上げ拡大を後押ししています。
売上高 17年は前年比11.7%増加
日本CRO協会が4月3日に発表した2017年(1~12月)の年次業績報告によると、同年の協会会員32社の総売上高は1925億円で、前年から11.7%(201億円)増加しました。17年は会員企業が6社増えており、この影響を除くと売上高の増加は8.1%。18年は32社で2031億円(前年比5.5%増)に達する見通しで、初めて2000億円の大台に乗ります。
会員企業の総売上高を領域別に見てみると、医薬品の開発関連業務が1693.4億円(6.6%増)で全体の88.0%を占めました。医療機器は46.7億円で全体の2.4%に過ぎませんが、前年比では36.8%、13年との比較では76.9%増と近年大きく伸びています。今年4月の臨床研究法でモニタリングが義務付けられた臨床研究は36億円(全体の1.9%)でした。
国際共同治験、全体の4割まで増加
業績の拡大を支えているのが、国際共同治験の受託です。CRO協会の年次報告によると、2017年に会員企業が受託した医薬品のモニタリングプロジェクト839件のうち、国際共同治験(マルチナショナルスタディ)は312件と全体の37.2%を占めました。国際共同治験の受託は、13年と比べて件数で2.7倍に増え、全体に占める割合も15ポイント近く上昇しています。
モニタリングプロジェクトを疾患領域別に見ると、最も多かったのはやはりがん領域。プロジェクト数は200近くで16年と大きな変化はありませんでしたが、がん領域の国際共同治験は40件ほど増加しました。
プロジェクト数ががん領域に次いで多かったのは代謝性医薬品。以下、中枢神経系、循環器、消化器、血液・体液と続きました。
人員急拡大 目立つ「PV」「統計解析」の伸び
業容の拡大に伴い、CRO各社は人員の拡充を進めています。日本CRO協会会員企業の従業員数は17年に1万7261人に達し、前年から10.1%(1590人)増加。18年には1万8714人(17年比8.4%増)まで増える見通しで、18年4月の新卒採用は1000人を超えました。
会員企業の従業員を職種別に見てみると、最も多いのはモニタリングに従事するCRA(臨床開発モニター)。17年は7165人(前年比9.7%増)で、全体の41.5%を占めました。
前年からの伸びが大きかったのは、統計解析(673人、23.9%増)とGVP関連(PV、1963人、22.1%増)。CROに対する製薬企業のニーズは多様化しており、統計解析やGVP関連(PV)の業務の受託は今後も伸びていくとみられます。
医薬品の臨床開発をめぐっては、スピードアップとコストダウンが求められている上、開発品目は多様化し、専門性も高まっています。新薬創出の難易度が上がり、開発競争も激しく成る中、今後も開発環境が好転するとは考えにくく、アウトソーシングの需要はさらに高まっていくでしょう。
今年4月からは、医薬品の市販後調査にデータベースの利用が認められ、一部の臨床研究にモニタリングを義務付ける臨床研究法も施行されました。臨床開発や市販後のエビデンス創出にリアルワールドデータを活用する動きも出てきており、CROへのニーズもさらに広がっていきそうです。