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後発医薬品「80%」目標 達成へ正念場―18年度診療報酬改定 使用促進策はどう変わる?

更新日

医療費削減策の一環として政府が使用を推進している後発医薬品。使用割合は昨年9月時点で65.8%まで高まりましたが、「2020年9月までに80%」とする政府目標の達成には依然として高いハードルがあります。

 

診療報酬・調剤報酬によるインセンティブには息切れ感も漂っており、目標達成への正念場を迎える中、18年度改定で使用促進策はどう変わるのか、まとめました。

 

薬局の加算ハードル引き上げ 減算規定も新設

厚生労働省の調査によると、後発医薬品の使用割合は2017年9月時点で65.8%。2年前と比べて9.6ポイント伸びました。

 

政府は従来、後発品の使用割合について「17年半ばまでに70%以上、18年度から20年度末までのなるべく早期に80%以上」とすることを目標としていましたが、昨年、80%以上とする時期を「20年9月」と定めました。残された3年間で14.2ポイント引き上げなければならない計算で、今のペースでは達成できるかどうかギリギリのところです。

 

後発品使用割合の推移の棒グラフ。2005年9月:32.5パーセント。07年9月:34.9パーセント。09年9月:35.8パーセント。11年9月:39.9パーセント。13年9月:46.9パーセント。15年9月:56.2パーセント。17年9月:65.8パーセント。【政府目標】20年9月:80パーセント。

 

18年度の診療報酬・調剤報酬改定では、政府が新たな使用目標を掲げたことを受け、後発品の使用促進策が一部見直されます。主な項目は、
▽薬局向けの「後発医薬品調剤体制加算」の見直し
▽薬局向けに新設される「地域支援体制加算」の算定要件として後発品使用割合を設定
▽医療機関向けの「後発医薬品使用体制加算」の見直し
▽医療機関向けの「一般名処方加算」の点数引き上げ
の4点です。

 

(1)後発品調剤体制加算の見直し

後発品の使用割合が高い薬局を評価する調剤報酬の「後発品調剤体制加算」は、政府目標に合わせて基準となる使用割合が引き上げられ、それに応じた評価に見直すとともに、使用割合が低い薬局に対して調剤基本料の減算規定が新たに設けられます。

 

従来は「後発品調剤体制加算1」(65%以上・18点)、「加算2」(75%以上・22点)の2段階でしたが、改定後は「加算1」(75%以上・18点)、「加算2」(80%以上・22点)、「加算3」(85%以上・26点)の3段階になります。新設される調剤基本料の減算は、使用割合が2割以下の薬局が対象です。厚労省の「調剤医療費の動向」調査によると、昨年9月時点で後発品の使用割合が20%未満の薬局は全体の0.6%ありました。

 

薬局の後発品調剤体制加算の見直しの表。【現行】加算1、使用割合65パーセント以上:18点。加算2、使用割合75パーセント以上:22点。<減算規定:なし>【見直し後】加算1、75パーセント以上:18点。加算2、80パーセント以上:22点。加算3、85パーセント以上:26点。<減算規定:使用割合が2割以下の薬局は調剤基本料を2点減点>

 

(2)地域支援体制加算の算定要件に設定

調剤報酬では、基準調剤加算の廃止に伴って新設される「地域支援体制加算」(35点)の施設基準にも後発品の使用割合が盛り込まれます。

 

地域支援体制加算は、夜間・休日対応など地域医療への貢献を評価するために設けられる加算。特定の医療機関からの処方箋の割合(集中率)が85%を超える薬局は、後発品の使用割合が50%以上でなければこの加算を算定できません。

 

従来の基準調剤加算でも、「集中率90%以上の場合は後発品の使用割合が30%以上」との要件が課されていました。地域支援体制加算への衣替えに伴って、要件が厳格化された形です。

 

(3)後発品使用体制加算の見直し

医療機関での後発品の使用を評価する加算も、薬局の後発品調剤体制加算と同様に、政府目標に合わせて算定要件が見直されます。

 

医療機関の後発品使用を評価する項目としては、入院(病院と有床診療所)の「後発医薬品使用体制加算」と外来(院内処方を行っている診療所)の「外来後発医薬品使用体制加算」があります。18年度改定では、入院は従来の3段階から4段階に、外来では2段階から3段階に評価を見直し、点数も変更されます。薬局では使用割合が低いと基本料が減算されますが、医療機関には減算規定は設けられませんでした。

 

医療機関での後発品使用の評価の見直しの表。【入院】後発品使用体制加算(病院・有床診療所の入院)<現行>加算1、使用割合70パーセント以上、42点。加算2、使用割合60パーセント以上、35点。加算3、使用割合50パーセント以上、28点。<見直し後>加算1、使用割合85パーセント以上、45点。加算2、使用割合80パーセント以上、40点。加算3、使用割合70パーセント以上、35点。加算4、使用割合60パーセント以上、22点。【外来】<現行>加算1、使用割合70パーセント以上、4点。加算2、使用割合60パーセント以上、3点。<見直し後>加算1、使用割合85パーセント以上、5点。加算2、使用割合75パーセント以上、4点。加算3、使用割合70パーセント以上、2点。

 

(4)一般名処方加算の見直し

薬の処方を製品名でなく一般名で行った場合に、医療機関の処方箋料に加算される「一般名処方加算」は、後発品の使用推進に効果があるとの検証結果も踏まえ、点数が引き上げられます。

 

現行では、処方された薬のうち後発品があるすべての薬を一般名処方した場合は3点(加算1)、1つでも一般名処方した場合は2点(加算2)が加算されますが、18年度からは「加算1」が6点、「加算2」が4点と、点数が2倍になります。

 

報酬でのインセンティブには息切れ感

ただ、診療報酬・調剤報酬での使用促進策には息切れ感も漂っています。

 

厚労省が前回改定の結果を検証するために行った17年度の調査によると、「後発品を積極的に調剤する」と答えた薬局の割合は68.3%と13年度以降で初めて減少。今回、加算の点数が引き上げられる一般名処方は増加しているものの、一般名処方で実際に後発品を調剤した割合は17年度にわずかに減少しました。

 

使用促進策には息切れ感。▼「積極的に後発品を調剤する」と答えた薬局の割合。13年度:50.6パーセント。14年度:61.4パーセント。15年度:65.9パーセント。16年度:70.6パーセント。17年度:68.3パーセント。▼一般名処方の割合。13年度:10.6パーセント。14年度:18.1パーセント。15年度:24.8パーセント。16年度:31.1パーセント。17年度:34.9パーセント。▼一般名処方のうち後発品を調剤した割合。13年度:59.6パーセント。14年度:70.8パーセント。15年度:73.0パーセント。16年度:77.4パーセント。17年度:76.2パーセント。

 

同じ調査によると、薬局では32.0%が後発品調剤体制加算を算定しておらず、入院の後発品使用体制加算を算定していないのは有床診療所の81.6%、病院の68.5%に上ります。外来後発品使用体制加算も71.0%が算定していません。金銭的なインセンティブに頼る使用促進策は限界に達しつつあります。

 

厚労省は18年度から、後発品の使用割合が低い都道府県を重点地域に指定し、地域ごとの問題点に応じた対策を行うことで全体の底上げを図る取り組みを開始する予定。今国会に提出中の生活保護法改正案では、受給者には後発品の使用を原則とする規定を盛り込みました。使用割合を引き上げるため、診療報酬・調剤報酬以外の対策も強化していく考えです。

 

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