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中外製薬 がんゲノム医療を事業化へ―“究極の個別化医療”進む普及環境の整備

がん領域で国内トップシェアの中外製薬が、注目の「がんゲノム医療」に参入します。4月の組織改正で専門部署を新設し、ロシュ子会社が手がける遺伝子パネル検査の承認取得と保険適用を目指す考えを表明しました。

 

国は2019年にもパネル検査を保険適用する方針です。“究極の個別化医療”とも言われるゲノム医療の普及に向けた環境整備が進む中、企業側の動きも活発化しています。

 

「がんトップ企業として個別化医療に貢献」

「オンコロジー領域のトップ企業として個別化医療に貢献していく」。中外製薬の小坂達朗社長COO(最高執行責任者)は、2月1日に開いた2017年12月期決算会見で、がんゲノム医療の事業化に強い意欲を示しました。

 

同社は4月1日付の組織改正で「PHC(Personalized Healthcare)推進部」を新設し、個別化医療の実現に向けた戦略の立案・実行機能を強化します。当面の目標となるのが、がん遺伝子パネル検査の国内事業化です。

 

中外が事業化を目指すのは、親会社であるスイス・ロシュが2015年に買収した米ファンデーション・メディスン(FMI)が手がける「FoundationOne CDx」。324のがん関連遺伝子変異を一括して調べられるもので、17年11月には米FDA(食品医薬品局)から承認を取得しています。

 

中外は国内でこの検査の薬事承認と保険適用を目指します。現時点でその時期については明らかにしていませんが、小坂社長は「できるだけ早く申請したい」と話しています。

 

遺伝子パネル検査 19年度にも保険適用

がんのゲノム医療は、患者からがん組織を採取し、次世代シークエンサーと呼ばれるゲノム解析機器を使って大量のがん関連遺伝子の変異を調べ、その結果に基づいて治療を行うこと。患者ごとに最も効果が高く、副作用も少ないと期待できる治療を選ぶのに役立つとして注目されています。

 

国内でも2015年から一部の大学病院などで始まっていますが、保険適用されていないため自由診療として行われており、患者は1回あたり数十万円の検査費用とその後の治療費を全額自己負担しなければならないのが現状です。最適な治療の選択につながるとの期待は高い反面、費用や実施体制に課題があるとされてきました。

 

現在、政府は、がんゲノム医療の普及に向けた環境整備を進めています。17年10月に閣議決定された第3期がん対策基本計画では、がんゲノム医療の推進が柱の一つとして明記され、具体的な施策として、ゲノム医療の提供拠点となる医療機関の整備や、遺伝子パネル検査の保険適用などが盛り込まれました。

 

18年度前半には先進医療で使用可能に

厚生労働省のがんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会が17年6月にまとめた報告書では、18年度前半には先進医療で遺伝子パネル検査が使えるようになり、19年度にも保険収載されるとの見通しが示されています。

 

17年2月には、国立がん研究センターとシスメックスが共同開発するパネル検査が体外診断用医薬品の「先駆け審査指定制度」の対象品目に選定。同センターは今年1月、この検査を先進医療に申請しました。

 

ゲノム医療の提供拠点としては、▽パネル検査を実施できる体制がある▽パネル検査結果を医学的に解釈できる専門家集団がいる▽パネル検査対象の対象について一定の症例がある――などの要件を満たす医療機関を「がんゲノム医療中核拠点病院」として厚労省が11医療機関を選定。中核拠点病院は、直接患者を診療する「がんゲノム医療連携病院」と連携して医療を提供することとされており、18年度から全国でパネル検査による医療を受けられるようになる見通しです。

 

がんゲノム医療の流れの図。1、患者が受診をする。2、がんゲノム連携医療病院にて、患者に検査の説明をする。3、検体採取。がんゲノム医療中核拠点病院に検体臨床情報を渡し、4シークエンス実施。5、レポート作成。6、専門家会議。7、がんゲノム医療連携で、患者に結果を説明。8、治療。4・5、は遺伝子検査室(外注をふくむ)。

 

治療可能な変異はごく一部…新薬開発への活用に期待

がんゲノム医療の普及に向けた環境整備が進む中、企業側の動きも活発です。コニカミノルタは17年、産業革新機構と共同で、がん遺伝子検査を手がける米アンブリー・ジェネティクスを買収。日本でもがん遺伝子検査事業を展開する方針です。

 

ただ、パネル検査で遺伝子の変異が見つかったとしても、それに応じた治療薬が見つかるケースは少ないのが現状です。パネル検査では数十から数百のがん関連遺伝子を調べますが、現時点で治療薬があるのはEGFRやALK、BRAF、KRASなどごく一部に過ぎません。中外が事業化を目指す「FoundationOne CDx」は324のがん関連遺伝子を調べますが、その結果を参考に選べる治療薬は、米国でも17しかないといいます。

 

臨床試験も効率化

それでも国や企業がゲノム医療に取り組むのは、今後、遺伝子パネル検査の普及に伴って治療薬の開発が進むとの期待があるからです。

 

厚労省はがんゲノム医療中核拠点病院が行った遺伝子検査の情報を収集する「がんゲノム情報管理センター」を整備する方針で、ここに集まったゲノム情報を新薬開発やバイオマーカーの探索に役立てる考え。どの医療機関にどんな遺伝子変異を持った患者がいるかも分かるようになるので、臨床試験の患者登録の効率化も期待されます。

 

中外の伊東康プロジェクト・ライフサイクルマネジメントユニット長は「開発の段階でもFMIの検査はかなり使われており、ロシュの治験の中でもFMIの技術を使って患者の層別が行われている。そういう技術を中外の開発テーマに応用できるのはメリットだ」と話しています。コニカミノルタも、解析したゲノム情報をもとに製薬企業向けに創薬支援ビジネスを展開する構えです。

 

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