塩野義製薬は10月25日、開発中の新規抗インフルエンザウイルス薬「S-033188」について、成人・小児のA型・B型インフルエンザウイルス感染症を対象に日本で承認申請を行ったと発表した。同剤は厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、6カ月程度で承認される見通しだ。
S-033188は、塩野義が創製したキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬。細胞内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑える新規作用機序の薬剤で、1回の経口投与で治療が完結する。
健常なインフルエンザ患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験「CAPSTONE-1」では、インフルエンザウイルス力価を「タミフル」に比べて有意に低下した。感染性を持つインフルエンザウイルス粒子が検出されなくなるまでの期間もタミフルに比べて有意に短縮し、投与翌日には患者の半数でウイルス力価が陰性化。有害事象の発現率もタミフルを有意に下回った。
塩野義は「(ウイルスの消失が早いことで)家庭内や学校、職場などでのウイルスの伝播、飛沫感染や空気感染の拡大にも一定の抑制効果を示すと期待。安全性も従来の治療と同等以上と考えられる」とコメントした。
塩野義はS-033188の海外での開発と販売でスイス・ロシュと提携。大型化が期待されており、英調査会社エバリュエートファーマは同剤の2022年の世界売上高を5億9700万ドル(約794億円)と予測している。