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ニュース解説

長期収載品「後発品並みに薬価引き下げ」でどうなる?

今年4月の薬価制度改革で、薬価を大幅に引き下げる新ルールが導入されることになった長期収載品。後発医薬品並みに薬価が引き下げられることで、長期収載品はどうなるのか。探ってみました。

 

置き換え率80%以上なら後発品と同じ薬価に

厚生労働省は今年4月に行う2018年度の薬価制度改革で、長期収載品の薬価を大幅に引き下げる新たなルールを導入します。

 

新ルールは、後発医薬品の発売から10年たった時点でまず後発品の2.5倍まで薬価を下げ、その後は▽後発品への置き換え率が80%以上の場合は6年かけて後発品と同じ薬価に引き下げる(いわゆる「G1」)▽80%未満の場合は10年かけて後発品の薬価の1.5倍まで引き下げる(いわゆる「G2」)――というもの。これとは別に、後発品発売5年後から後発品の置き換え率に応じて薬価を引き下げるルール(いわゆる「Z2」)があり、この要件もあわせて厳格化されます。

長期収載品の薬価の引き下げルール

 「日本の製薬産業の構造を、長期収載品依存から、より高い創薬力を持つものへと転換する」という今回の薬価制度改革の大きなテーマを反映した見直しとはいえ、長期収載品にとってはまさに大逆風。売り上げの減少に拍車がかかります。

 

後発品 選ぶ理由乏しく

長期収載品と後発品の薬価が接近し、最終的に同じになると何が起こるのか。考えられるのは、後発品を積極的に選ぶ理由がなくなるということ。価格がほとんど変わらないのであれば、供給や情報提供、品質などを考慮し、長期収載品を選択する医師や患者が増えるであろうことは想像に難くありません。

 

長期収載品にとっては一見チャンスともとれますが、薬価が後発品並に下げられれば、安全管理などにかかるコストをまかない切れなくなるおそれも出てきます。このため今回の制度改革では、代替する後発品の増産を条件に、長期収載品を販売する企業自らが市場からの撤退(=販売をやめる)を判断することも認められました。

 

後発品企業としては、長期収載品と競争するために医療機関への納入価を下げざるを得なくなるでしょう。市場実勢価格は下がり、それによって長期収載品も後発品も、薬価の引き下げがさらに加速していくことになります。

 

収益貢献 見極めるメーカー

新薬メーカーは今、長期収載品がどこまで収益に貢献するのか、慎重に見極めています。

 

新薬メーカーの間ではここ数年、長期収載品を同業他社に売却する動きが広がってきました。16年4月には武田薬品工業がイスラエル・テバと合弁会社を設立し、ARB「ブロプレス」などを移管。塩野義製薬やアステラス製薬、中外製薬も相次いで売却に踏み切りました。

 

今回の薬価制度改革は、長期収載品を主力とする企業にとってはまさに死活問題です。久光製薬は消炎鎮痛剤「モーラステープ」に連結売上高の36.0%を依存しており、科研製薬と持田製薬も、それぞれ関節機能改善剤「アルツ」と高脂血症治療薬「エパデール」に売上高の2割以上を頼っています。厚労省は長期収載品の薬価引き下げの影響が大きい企業を対象に激変緩和措置を講じる方針ですが、それでも経営への打撃は避けられません。

長期収載品の売上が大きい会社の表。社名:久光製薬、製品名:モーラステープ、製品売上高(16年度):526.05億円、売上高全体に占める割合:36.0パーセント。社名:科研製薬、製品名:アルツ、製品売上高(16年度):289.78億円、売上高全体に占める割合:28.6パーセント。社名:持田製薬、製品名:エパデール、製品売上高(16年度):206億円、売上高全体に占める割合:21.2パーセント。

 

撤退加速も受け皿は…

売却するにせよ、販売を中止するにせよ、今回の制度改革は新薬メーカーが長期収載品から撤退する動きを加速させるとの見方が大勢です。ただ、長期収載品の収益性を見極めているのは買収する側の後発品メーカーや投資ファンドも同じ。価格差がなくなって長期収載品が選ばれやすくなる点ではチャンスですが、収益確保の道筋を描きにくくなったのは事実でしょう。

 

後発品メーカーはこれまで、医療機関や医薬品卸へのアプローチ強化を狙って積極的に長期収載品を受け入れてきました。投資ファンド傘下でアステラス製薬から長期収載品16製品を買収したLTLファーマは、徹底したローコスト経営で収益を確保しながら、取り扱い品目を増やして売り上げを伸ばしていく方針を掲げています。薬価の大幅引き下げは、こうしたビジネスモデルにも影を落とします。

 

今回の薬価制度改革により、国内の医薬品市場は、従来の「新薬」「長期収載品」「後発品」という3つのカテゴリから、「新薬」「特許切れ薬(長期収載品と後発品)」という2カテゴリに変化していくことになります。後発品と同じ位置付けとなる長期収載品をどう扱い、その上でどんな成長の絵を描いていくのか。今回の薬価制度改革は、製薬企業に決断を迫っています。

 

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