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ニュース解説

緊急事態宣言解除から半年あまり…新型コロナ MR活動のいま【匿名座談会】

更新日

新型コロナウイルスの感染拡大で様変わりした医薬品の情報提供活動。4月末に緊急事態宣言が全国で解除されて半年あまりたちましたが、MRたちは今どんな活動をし、何を思っているのか。3人のMRに話を聞きました(座談会は11月中旬にオンラインで開催)。

【参加者プロフィール】
Aさん…31歳/MR歴7年/内資系製薬企業
Bさん…31歳/MR歴9年/外資系製薬企業
Cさん…38歳/MR歴16年外資系製薬企業

 

対面活動なお戻らず

――緊急事態宣言の解除後、対面での情報提供活動はどれくらい戻りましたか?

Aさん:私が担当している基幹病院ではすべて、直接の面談は難しい状況です。主にWeb面談で情報提供をしています。

 

Bさん:私のエリアでは、病院の訪問制限も一旦は解除になったんですが、感染の再拡大を受けて、また活動を制限しているところが多いです。開業医については、7~8割は面会できる機会はあります。

 

Cさん:私のところも同じような感じで、8月ごろ一部の医療機関で訪問制限が解除されたものの、再び感染が広がってきたことで、今はまたWeb面談が中心になっています。

 

――緊急事態宣言前の訪問活動を10とした場合、緊急事態宣言中はほぼゼロになったと思いますが、今は数字で表すとどれくらいですか?

Aさん:ドクターに限ると1くらいです。

 

Bさん:私は7くらいですかね。

 

Cさん:私は2くらいです。

 

――リモートでの情報提供活動で苦労していることはありますか?

Bさん:Web面談をやってくれる医師は、最初のころに比べると増えました。ただ、環境としては全然整っていないところもあるので、Web面談中心の活動がこのまま続くと厳しいです。Web面談による情報提供先が特定の医師に限られてきているような気はします。開業医は会える医師も多いので、「わざわざそこまでする必要はないのではないか」という意見もいただきます。

 

Cさん:リモートの裾野は広がっていると思いますが、本当に会いたい医師の中にはWeb面談を受けてもらえない人もいます。会いたい医師ほどリモートではアクセスしにくいというのが本音です。

 

Aさん:会いたい医師にアプローチできないというのは同感です。コロナ前に継続的に会っていた医師については、その後のアプローチも比較的しやすいですが、初めて面談する医師に最初からWeb面談となると、なかなか壁は高い。

 

――リモートでの活動で成果を上げるために工夫していることはありますか?

Cさん:Webとはいえ、頻繁に面談できるわけではないので、1回の面談でどれだけ話を詰められるかを意識しています。対面のときに比べて、ゴール設定を明確にして面談に臨むようになりました。

 

Bさん:Web面談の場合、医師もそれなりに覚悟をもって受けてくれているので、対面で面談するよりも、情報はいろいろと聞き出しやすくはなったと思っています。それこそ、アジェンダを提示しなければならないですし、医師としても面談の目的をはっきり理解してもらえるようになったのではないでしょうか。

 

――Web面談を受けてもらうのは難しいけど、受けてもらえる医師については、互いの目的意識が高まったことで面談の濃度が上がっているという感じでしょうか。Aさんはいかがですか?

 

Aさん:Web面談を受けてくれる医師については、ベクトルがこちらの方を向いているので、ある程度時間をとってもらいやすいという利点はあると考えています。継続性という点で言うと、そこで「また次も」と思わせるような面談をすることが重要でしょうね。

 

売り上げへの影響は

――新型コロナで、担当製品や担当エリアの売り上げに影響はありましたか?

Bさん:変わらなかったものもあれば、減ったものもあります。長期処方できないものや、来院が必要な薬剤については、目に見える形で減っています。

 

Aさん:主に感染症領域を担当しているので、新型コロナウイルスによって非常に大きなダメージを受けました。コロナウイルス患者を受け入れている病院が多いので、手術の件数も少なくなり、結果として売り上げも下がりました。

 

Cさん:コロナの売り上げへの影響は、事実としてあると思っています。ただ、それがリモートでの活動によるものかというと、私自身はあまり感じていません。売り上げベースで見ると、活動がリモートになったことで特段マイナスになったとは思っていません。

ただ、われわれにとっては患者さんの同定というのが重要な仕事の1つですが、リモートでの活動では、どういた患者に投与されたのかといったことは確認しづらいので、会社へのレポーティングで苦労している面はあります。

 

――リモートでのMR活動に必要なスキルについてはどう考えていますか?

Cさん:Web面談では、相手の表情を捉えにくく、その場の雰囲気もわかりにくい。一方通行のコミュニケーションになりがちなので、「このデータに対してどう思いますか?」といったように、細かく医師に投げかけをする力が求められると思います。

 

Aさん:やはり、「また会いたいな」と思わせるような情報提供と、そのための準備が非常に大切だと考えています。Cさんも話したように、Web面談は一方通行になりがちなので、コメディカルからの情報収集など、多方面からのアプローチも重要になると思います。

 

Bさん:話す流れ、話し方、話す速さなど、対面の時以上に相手を意識しなければいけないと思います。顔を出さない医師もいるので、そうなると余計こちらが想像しなければならない。個人的に意識しているのは事前の準備です。画面をコロコロ変えるのは相手にとっても見づらいので、その日の面談で出す資料をしっかり決めて、それは同じファイルに全部まとめておくとか、そういったことを意識しています。

 

効率化でMR減る

――MR不要論についてはどう思っていますか?

Bさん:これまでのように、たくさん訪問して関係を構築し、数字をつくっていというやり方は、間違いなく変わっていくと思います。1人のMRがカバーする範囲が広がり、担当する医師の数も増えていくのではないでしょうか。

不要論については私自身も意識していますし、医師からもよく言われます。今後はやはり、いかにデジタルを駆使できるかということになりますが、ただのデジタル化ではほかと同じになってしまいます。自分で頭を使っていかないと、MRとしての長所を見いだせてもらえなくなるのではないかと感じています。

 

Aさん:担当エリアは拡大していくでしょうね。医師が自分で情報を簡単に入手できる時代になってきたのが、コロナの影響で一気に加速したと感じています。MRとしては、専門知識をしっかりつけないといけないでしょうし、活動も学術的な方に寄っていくのかなと考えています。

 

Cさん:個人的には、こんなに数はいらないだろうと思っています。リモートによる活動で移動時間がかなり減っているので、今後は人数を減らして自宅から情報提供を行うという方向もあり得る。必要とされるMRになるには、情報提供にプラスアルファして、例えば医師の治療に何か気付きを与えられるとか、提案できるとか、そういうことができるようにならないといけないのではないかと思っています。

 

Aさん:やはり今のMRの人数は多いと思います。規制も厳しくなってきていますので、学術的な情報提供が中心になっていくなら、それに特化した専門の人がWebで面談するという未来もあるのではないでしょうか。

 

Bさん:今までだと週に1回ぐらいは行かなきゃという感じでしたが、リモートだと月1回面談できれば十分という感覚がお互いにあると思います。そうなると、効率性というのが今後より求められるようになると考えています。

 

――コロナの状況を受けて、今後のキャリアについて考えていることはありますか。

Bさん:コロナ以降、家族との時間が増えて、両立という意味では今、いいバランスで働けていると思います。テレワークが中心になり、転勤しなくても本社業務ができるのではないかと思っていて、家族に負担をかけることなく本社というキャリアを考えやすくなったのかなと。そのあたりも、会社の動きを見ながら視野に入れているところです。

 

Aさん:正直、ずっとMRをするということは考えていません。こういうご時世ですし、個人として生きていける力をつけないといけないと思い、今、個人投資家として資産運用を頑張っているところです。コロナによって時間に余裕ができましたし、家族を養っていかなければいけないという気持ちも強くなりました。今の仕事がこの先、必ずしも保証されているわけではないので。

 

Cさん:MRは不安なので本社の経験を積みたいと思ったりもするんですが、向き不向きで言うと現場の方が向いていると感じています。顧客から直接「効いたよ」という話を聞けるのはうれしいので。ずっとMRでいたいというわけではないんですが。マネジメントも含めて営業のラインで仕事をしてきたいとは思っています。

 

(聞き手・前田雄樹)

 

座談会の模様は、M3デジタル・コミュニケーションズの「デジぽち」でも動画配信しています。視聴ページはこちら(要会員登録)。

 

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