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バイオ版オーソライズド・ジェネリックが承認―注目の薬価は?バイオシミラー市場へのインパクトは?

更新日

協和発酵キリンが、子会社を通じて主力の腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得しました。バイオ医薬品のAGは国内初。バイオシミラー市場に大きなインパクトを与えそうで、薬価をどう設定するのか、厚生労働省の判断にも注目が集まります。

 

バイオシミラーではなく後発品として承認

厚生労働省は8月15日、協和発酵キリン子会社の協和キリンフロンティアが申請していた腎性貧血治療薬「ネスプ」(ダルベポエチンアルファ)のオーソライズド・ジェネリック(AG)を承認しました。バイオ医薬品のAGが承認されるのは国内で初めて。協和発酵キリンは2019年のネスプの特許切れを見据え、17年1月に協和キリンフロンティアを設立。AGの承認取得に向けた取り組みを進めてきました。

 

ネスプのAGは今回、バイオ医薬品でありながら低分子の後発医薬品と同じ扱いで承認されました。そのことは、製品名「ダルベポエチンアルファ注シリンジ『KKF』」にバイオシミラーであることを示す「BS」の文字がないことにも表れています。

 

承認を取得した「ネスプ」AGの概要

 

そもそも、バイオ医薬品は構造が複雑なため、先行バイオ医薬品との「同一性」を示すのは困難で、低分子のような後発品の概念はありません。そのかわり、先行品との「同等性・同質性」を示せば、バイオシミラー(バイオ後続品)として後発品とは別の扱いで承認されます。

 

ただし、先行品と原薬や添加物、製造方法が同じAGとなると話は別。先行品と同じように製造すれば同一性を示すことも可能で、こうした場合、類似品であるバイオシミラーと区別して「バイオセイム」とも呼ばれます。

 

バイオシミラーは臨床試験を行った上で承認申請し、厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会・第二部会への報告を経て承認され、5月か11月に薬価収載されるのが通常。一方、今回承認されたネスプのAGは、先行品と同一性を持った後発品として、低分子の後発品と同じタイミングでの承認となりました。

 

薬価は「×0.5」か「×0.7」か

8月に承認された後発品は、その年の12月に薬価収載されるのが原則。年内にも国内初のバイオAGが登場する可能性もあります。

 

市場投入に向けて注目されるのが、薬価の設定です。バイオシミラーの収載時の薬価は、先行品に0.7倍(臨床試験の充実度によって10%を上限に加算がつく場合がある)とされている一方、後発品の薬価は先発品の0.5倍。ネスプのAGは今回、後発品として承認されましたが、現時点では薬価も後発品と同じ扱いになるかは不透明な状況です。

 

後発品とバイオシミラーの薬価

 

ネスプを含むエリスロポエチン製剤が主に使われる透析医療では、2006年4月から薬剤の料金が透析の技術料に包括化されました。しかも、その技術料は診療報酬改定のたびに引き下げられる傾向にあり、バイオAGが発売されれば、コスト削減の観点から先行品からの切り替えが急速に進むとみられています。

 

ネスプは17年12月期に563億円を売り上げた協和発酵キリンの最主力品。AGを投入すれば先行品の売り上げは大幅に落ち込むことになるため、発売のタイミングは重要。国内では現在、2つのバイオシミラーが開発の最終段階を迎えており、同社は競合の開発状況もにらみながら発売のタイミングを慎重に検討することになりそうです。同社は「安定供給体制の確保ができ次第、販売の準備を進める予定」としています。

 

「ネスプ」バイオシミラーの開発状況

 

バイオシミラー市場に波紋

バイオAGが発売されれば、バイオシミラーを開発する企業にとっては大きな脅威となるでしょう。バイオシミラーの振興と普及を目指すバイオシミラー協議会は昨年、「まだ理解と浸透が進まない状況で、先行品と同一とされるバイオAGが承認される場合、バイオシミラーの浸透に深刻な影響が生じる」との懸念を表明。バイオ医薬品産業全体の成長にも悪影響を及ぼすと指摘しました。

 

バイオシミラーは臨床試験などに多額の投資が必要で、事業リスクは低分子の後発品と比べると格段に高くなります。先行品と同一で、特許切れ前に発売でき、しかも薬価も0.5倍となれば通常のバイオシミラーよりさらに安いバイオAGが発売されるとなると、ただでさえ不確実な投資回収の見通しがさらに低下するのは明らかです。今後、バイオシミラーの開発から手を引く企業も出てくるかもしれません。

 

一方、協和発酵キリンは「バイオシミラーにはそれぞれ特徴がある。それぞれの会社がそれぞれの特徴を活かせば、それぞれのシェアを取れる。何もバイオシミラーを駆逐するというような考えでやっているわけではない」(17年2月の決算説明会で、当時の花井陳雄社長)。いずれにしても、国内初のバイオAGは、バイオシミラー市場に大きなインパクトを与えそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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