政府が2020年9月までに使用割合を80%以上まで高めることを目標とする後発医薬品。これまでさまざまな使用促進策を行われてきましたが、それもそろそろ頭打ちの気配が見えてきました。
厚生労働省が行った調査によると、後発品を「全体的に積極的に調剤している」という薬局は全体の68.3%で、前年から2.3ポイント減少。13年度以降、初めての減少で、逆に「積極的に取り組んでいない」薬局は増加しました。18年度の診療報酬改定では、どんな使用促進策が打ち出されるのでしょうか。
「一般名処方で後発品調剤」も減少
厚生労働省は11月10日の中央社会保険医療協議会に、後発医薬品の使用促進策の影響に関する調査結果を示しました。
今回、注目されたのは、後発品の調剤に対する考え方で「全体的に、積極的に後発品の説明をして調剤するように取り組んでいる」と答えた薬局が、前年の調査に比べて減少したこと。割合としては全体の68.3%を占めましたが、前年の調査からは2.3ポイント低下。逆に「積極的には取り組んでいない」とする薬局は3.6%に増えました(前年は2.1%)。後発品の調剤に積極的に取り組む薬局の割合は13年度以降、増加を続けてきましたが、ここにきて初めて減少したことになります。
前回の2016年度の診療報酬改定では、薬局向けの後発品使用促進策として、「後発品調剤体制加算」の算定要件となる数量ベースの割合が、加算1(18点)が55%から65%に、加算2(22点)が65%から75%に、それぞれ引き上げられました。
さらに、病院・診療所の処方箋料に対する「一般名処方加算」も、それまでは1品目でも一般名処方すれば2点が加算されていましたが、これに加えて後発品のあるすべての医薬品を一般名処方すれば3点の加算が取れることになりました。
こうした使用促進策がどのような影響をもたらしたかを調べたのが、冒頭の厚労省の調査です。しかしそこから見えてきたのは、今の使用促進策が頭打ちになりつつある現状でした。
同じ調査からもう1つ具体的な数字を挙げると、一般名処方自体は16年度の31.1%から17年度には34.9%と増えてはいるものの、一般名処方で実際に後発品を調剤した割合は76.2%と前年から1.2ポイント減少。こちらも頭打ちとなりました。一般名処方で後発品を調剤しなかった理由としては、64.7%の薬局が「患者が後発品を希望しなかった」と答えています。
患者と薬局 それぞれに事情
政府は「2020年9月までに80%以上」とする目標の前段階として、「17年半ばまでに70%以上」を目指していましたが、実際の使用割合は17年6月末時点で65%程度にとどまったとみられ、目標は達成できませんでした。ここから80%まで伸ばしていくため、厚労省は18年度の診療報酬改定でさらなる使用促進策を打つ見通しですが、一筋縄ではいきそうにありません。
1つは後発品を使いたくない患者の存在です。冒頭に示した厚労省の調査によると、「少しでも安くなるのであれば使用したい」という患者は増えている(17年度調査では64.8%)一方、「いくら安くなっても使用したくない」患者が12.1%いました。この割合はここ数年ほとんど変わっておらず、その理由として6割以上が「効果や副作用に不安がある」と答えています。
外用薬など「後発品調剤しにくい」
薬局としても、積極的に後発品を調剤しづらい医薬品があります。同じ調査では、薬局が積極的に後発品を調剤していない・しにくい医薬品の種類として、「精神神経用剤」(28.5%)や「抗悪性腫瘍剤」(27.8%)、「睡眠鎮静剤」(21.3%)、「抗不安剤」(20.7%)、「免疫抑制剤」(20.0%)などが挙がりました。剤形別では薬局の42.5%が「外用剤」と回答しました。
患者の不安や品質・使用感の違い、副作用の懸念など理由はさまざまですが、こうした薬剤では、平均7%前後が「後発品を調剤しにくい」という理由で先発品が処方されていました。
薬局の3割は加算の算定なし
薬局の後発品調剤体制加算の算定状況を見てみると、使用割合65%の「加算1」は35.0%、75%以上の「加算2」は32.0%の薬局が算定。合わせると67%の薬局が加算を算定していた一方で、32%の薬局は算定していませんでした。
18年度の診療報酬改定では、政府目標の達成に向けて加算の基準となる使用割合がさらに引き上げられる可能性があります。ただ、3割の薬局が加算を取っていない状況は、金銭的なインセンティブ頼みの使用促進の限界を物語っているとも言えるのではないでしょうか。
「20年9月までに80%以上」の目標を達成するためには、今よりも普及のペースを早めなければなりませんが、使用促進策は尽きた感もあります。18年度の診療報酬改定では、どんな促進策が打ち出されるのでしょうか。関係者は高い関心を寄せています。