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がんゲノム医療

がんゲノム医療とは

がんゲノム医療とは、がんに関連する遺伝子変異を網羅的に調べ、その結果に基づいて患者一人ひとりに合った最適な治療を行うことです。「個別化医療」「プレシジョン・メディスン(精密医療)」とも呼ばれ、より効果的で副作用の少ない治療が可能になると期待されています。

 

がんは様々な遺伝子の変異が積み重なることで発症しますが、中でもがんの発生や増殖に重要な役割を果たす遺伝子の変異をドライバー遺伝子変異といいます。ドライバー遺伝子としてよく知られているものとしては、「EGFR」「ERBB2(HER2)」「BRAF」「KRAS」「ALK」「ROS1」などがあり、これらに変異が起こると、がん発症の引き金となります。

 

一部のがんではすでに、特定のドライバー遺伝子の変異を調べるコンパニオン診断薬を使い、変異が見つかればそれに対応した薬剤を投与するというのが標準的な治療となっています。しかし、こうした治療は通常、がんゲノム医療とは呼びません。

 

がんゲノム医療では、「がん遺伝子パネル検査」によって100種類を超えるがん関連遺伝子を一括して調べ、そこで得られたゲノム情報をもとに専門家が議論し、患者一人ひとりに最適な治療を提案します。ただし、100を超える遺伝子を調べても、実際に承認されている薬が見つかるのはごく一部。場合によっては、適応外薬の使用や治験への参加を提案されることもありますが、検査をしても遺伝子変異に合った治療薬が見つからない場合が多いのが現状です。

 

従来の遺伝子検査に基づく治療とがんゲノム医療の違い。従来の遺伝子検査:特定のドライバー遺伝子の変異を調べるコンパニオン診断薬を使い、変異が見つかればそれに対応した薬剤を投与する。ゲノム医療:「がん遺伝子パネル検査」によって100種類を超えるがん関連遺伝子を一括して調べる。得られたゲノム情報をもとに専門家が議論し、患者一人ひとりに最適な治療を提案する。

 

がん遺伝子パネル検査とは

がんゲノム医療の中核となるがん遺伝子パネル検査は、次世代シークエンサー(DNAの塩基配列を大量に読み取る解析装置)を使い、1つの検体(がん組織や血液など)からがん関連遺伝子の変異を網羅的に調べる検査です。

 

国内では2018年12月、▽OncoGuide NCCオンコパネルシステム(シスメックス)▽FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(中外製薬)――の2つのパネル検査が薬事承認を取得。2019年半ばごろに保険適用される見通しとなっています。

 

シスメックスのOncoGuideは114、中外のFoundationOneは324の遺伝子を調べることができます。FoundationOneはさらに、分子標的薬のコンパニオン診断薬としての機能も兼ね備えています。

 

がんゲノム医療の提供体制

がん患者が全国どこにいても適切なゲノム医療を行けられるよう、厚生労働省はがんゲノム医療の提供体制を整備しています。2019年4月現在、厚労省は「がんゲノム医療中核病院」として11病院、「がんゲノム医療連携病院」として156病院を指定。がんゲノム医療はこうした医療機関で提供されます。

 

がんゲノム医療中核病院は、「がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関」と位置付けられ、▽パネル検査の実施▽専門家会議による検査結果の解釈と治療方針の決定▽治療の実施・治験への案内――といった役割を担います。一方、がんゲノム医療連携病院は、中核拠点病院と連携し、パネル検査の結果を踏まえた治療を行う医療機関。パネル検査は中核拠点病院に依頼し、患者への説明と検体の採取、実際の治療を行います。

 

がんゲノム医療の流れは、まず連携病院が患者に説明を行い、検体を採取して中核拠点病院に送付(直接、中核拠点病院を受診する場合もあり)。中核拠点病院がパネル検査を行い、専門家会議で結果に基づき治療方針を検討した上で、連携病院が患者に説明し、治療が始まります。

 

がんゲノム医療で得られたゲノム情報は、国立がん研究センターにある「がんゲノム情報管理センター」に臨床情報とともに収集され、新薬の研究開発などに活用されます。

 

がんゲノム医療の提供体制と治療の流れ

 

臓器別から遺伝子変異別の治療に

従来のがん治療は「肺」「乳腺」「胃」「大腸」など発生した臓器ごとに行われていますが、今後、ゲノム医療が普及することで、遺伝子変異別の治療へと変化していくと言われています。

 

国内では2018年12月、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)が、「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)のある固形がん」への適応拡大の承認を取得。国内で初めて、複数のがんにまたがってみられるバイオマーカーを対象に臓器横断的な適応が認められました。

 

さらに、中外製薬は、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを「NTRK融合遺伝子変異陽性の固形がん」の適応で申請しています。

 

がんゲノム医療をめぐっては、国立がん研究センターを中心に、産学連携で遺伝子異常に合った治療薬や診断薬の開発を目指すプロジェクト「SCRUM-Japan」「MASTER KEY」が行われています。

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