分子標的薬
分子標的薬とは、主にがん治療で用いられる薬で、特定の分子の機能を制御する作用を持つ。分子標的治療薬ともいう。
分子標的薬は、正常な細胞と、がん細胞などの異常な細胞との違いを分子レベルで解明することで、疾患の原因となっている分子だけに標的を定めて作用するよう作られている。多くの医薬品はもともと、何かしらの標的分子を持っているが、分子標的薬は創薬や治療法設計の段階で分子レベルの標的を定めることができるため、より精度が高く効率的に、病気を治療できる。
また、異常な細胞にだけ働きかけるため、正常な細胞を傷つけずに治療でき、副作用が少なくてすむという大きなメリットがある。
分子標的薬は、大きく2種類に分けられる。
・低分子医薬品
標的とするのはタンパク質で、従来の医薬品の多くが、この低分子医薬品にあたる。血液脳関門(血液と脳内の組織液とを結びつける場所)を通ったり、細胞膜の中や細胞核に入り込むことができる。
例:イマニチブ(白血病治療薬)
・抗体医薬品(バイオ医薬品)
生体がもともと持っている抗体を主成分として作られた医薬品。低分子医薬品に対して分子の量が多いことから、高分子薬ともいわれる。
抗体が持つ「特定の抗原(異物)だけに特異的に結合し、その異物を生体内から除去する」という特徴を活かして作られている。低分子医薬品と比べて、異常な細胞をピンポイントで攻撃する精度が高いため、次世代の医薬品として注目を集めている。
例:リツキシマブ(関節リウマチやリンパ腫など、自己免疫疾患の治療薬)
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