治験
治験とは、薬事法に基づき、国の承認を受ける目的で、医薬品などの試験成績に関する提出データを収集するために行われる臨床試験のこと。 医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等を臨床開発する最終段階で臨床試験が行われる。医薬品や医療機器等は、製造、販売の承認を受けるまでに、治験実施施設(医療機関)で長い期間をかけて臨床研究や試験が繰り返される。動物実験(非臨床試験)で、効果や毒性についての実験が行われた後に、人間に対する効果や安全性を確認する治験が必要となる。
治験を行なう際は、薬事法に基づく「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」あるいは「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」を遵守しなければならない。この省令をGCPといい、医薬品GCPや医療機器GCPなどと呼んで区別する。
治験では、参加協力者(被験者)の人権、安全および福祉(肉体的、精神的健全性)の保護、また「治験実施計画書(プロトコール)」に則った、信頼性の高い結果の確保が最優先される。「治験実施計画書」とは、医療機関および治験責任医師の合意を得て、製薬会社等が厚生労働省に提出する、遵守すべき拠り所となる計画書である。
1996年に国際基準となるICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)-GCPが完成した。それを受けて、我が国でも1998年4月から、新GCP省令が施行されている。2002年7月の薬事法の改正に伴い、2003年6月には医師や歯科医師あるいは医療機関が主体となる治験の実施も可能になった。
治験実施施設内には、医師や薬剤師以外に、学識経験者なども含めた治験審査委員会(IRB)が設置される。IRBは、治験実施前には医療機関の設備やスタッフがGCP省令を満たしているかどうか、また、治験参加協力者の人権と安全が守られているかどうかなどを、治験開始以降も定期的に審査する。 治験を行う企業、医療機関は、外部の専門機関(CRO、SMO等)を通じて専門職(CRA、CRC等)に業務委託するケースも増えている。多くの人が関わるため、治験参加協力者の医療記録などのプライバシーは厳重に保護されている。
治験は、3段階に分けて行われ、第1相(フェーズⅠ)では、健康な成人を対象にして安全性や薬物動態を確認し、第Ⅱ相、第Ⅲ相試験では、患者を対象にして安全性、用法・用量の設定や有効性の確認が行われる。
治験に参加・協力する候補者は、医師から治験に関する説明を受け、GCP省令で定められた説明文書を受け取る。説明文書には、治験の目的、使用方法、検査内容、参加期間、期待される効果、予想される副作用などが記載されている。すべての疑問や不明点を確認し、納得したうえで、強要されることなく自由意志により同意書に署名することが重要になる(インフォームドコンセント)。
治験参加協力者(被験者)となる健康な成人あるいは患者は、血液、組織、細胞、体液、排泄物及び、それらから抽出したDNAなど人体の一部(試料)を提供することもある。
被験者には、治験途中での参加中止、副作用による補償を請求する権利がある一方で、安全性の確保と正確なデータ作成のために服薬期間、服薬回数を守る義務がある。食事や運動、飲酒、喫煙などの生活習慣の変更や、試験効果に影響を及ぼす風邪薬など一般用医薬品や漢方薬などの使用を制限される場合もある。
治験を依頼した企業は、治験が計画書通りに進行しているかどうかの確認(モニタリング)業務を随時行ない、未知の重大な副作用が発生した場合は、治験審査委員会で治験を継続するか否かを審査する。治験を依頼した企業は国に定められた期間内に報告し、治験実施計画の見直しなどを行う。 治験で良好な結果が得られた場合は、国に申請し、厳格な審査を受けた後、承認を受けて新薬や新しい医療機器として認められる。
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