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メディカルサイエンスリエゾン(MSL)の仕事とは?
メディカルサイエンスリエゾン(Medical Science Liaison)とは、医学・薬学・科学のスペシャリストを示す職種。頭文字をとってMSLと呼ぶ場合や、リエゾン、メディカル アフェアーズ(Medical Affairs)と呼ぶこともあります。※1
メディカルサイエンスリエゾンはKOLに対する情報提供を中心に、製品開発に関するエビデンスの構築、臨床研究・論文投稿の支援などを行います。
メディカルサイエンスリエゾンは、広範囲かつハイレベルな医学・製品情報の提供により、KOLの信頼を獲得することで、自社製品と自社の評価を高めることをミッションとしています。そのため売上額の目標は持たず、「どれだけ医学・科学的な観点によるアプローチを医師に行い、信頼関係の構築に努めたか」という過程がメディカルサイエンスリエゾン自身への評価につながります。製品の売り上げ拡大が目的であるMRと比較すると、より高いサイエンスレベルやKOLとの深い関係構築力が求められるのです。
勤務地については基本的に本社勤務となることが多く、転勤の可能性もほぼないといって良いでしょう。※2
情報提供や自主研究をサポートするためにKOLの元を訪れる時以外は、社内で情報収集や資料作成などを行います。
- ※1
- メディカルサイエンスリエゾンという職種が国内でメジャーになり始めた時期が最近であるため、言葉の定義自体がまだ曖昧であるのが現状です。どの名称を用いるか統一されておらず、上記の仕事内容を行う人を何と呼ぶかは、企業によって異なります。
- ※2
- 企業によっては、支店ごとにメディカルサイエンスリエゾンを勤務させるところも。 面接時には、勤務地の確認を忘れずに行いましょう。
上記で書いた仕事内容は、メディカルサイエンスリエゾンをどの部署の管轄下に置くかによって多少変わります。
たとえば営業部署の管轄下に置かれる場合は、自社製品の売り上げと直結する仕事を行う傾向が強くなります。
また、メディカルサイエンスリエゾン自体がメディカルアフェアーズという名の部署として独立している、もしくは開発系の部署に所属している場合は、本来の「情報提供により、医師との関係を構築する」といった色が強い仕事が増える傾向にあります。
このように、メディカルサイエンスリエゾンの細かい仕事内容は企業ごとに特徴があります。
応募前に、各企業の傾向を掴んでおくと良いでしょう。
メディカルサイエンスリエゾン(MSL)のやりがい
メディカルサイエンスリエゾンの特徴として、企業・KOLの双方から求められるもののレベルが非常に高いという点が挙げられます。企業がこの職種に対して求めていることは、主に3点です。
1.医師からの信頼の獲得
新薬市場が円熟化してきた近年、生き残っていくために戦略の変更を図る企業が増加。
今後は自社製品をただ売り込み続けるよりも、医師からの支持を集めて企業全体の信頼度を高めていくことや、臨床研究支援によって製品のエビデンスの確立を増やしていくことが、重要性が高いと考えられるようになりました。
医師からの信頼を得るために必要なことは、幅広く、かつハイレベルな知識の提供。
そこでメディカルサイエンスリエゾンは、担当領域の専門家として、様々な治験情報や最新医学情報を国内外問わず収集し、有用だと思われる情報をKOLへ提供することが求められるようになりました。
MRと違い、自社製品のプロモーションが目的ではないため、必要であれば海外の薬や開発中の薬などの情報提供も行うことができます。自社製品に縛られることなく、医師が本当に必要としている情報を提供できる点は、あらかじめ決められた情報の伝達にとどまるMRとの大きな違いです。
2.臨床研究に活用できる情報の提供
新薬市場が落ち着いた今、今後の企業の存続においては、いかに発売済みの製品のライフサイクルを伸ばすかということと、アンメットメディカルニーズ領域にアプローチできる新薬をどれだけ生み出せるかが、非常に重要なポイントです。適応拡大や新薬創出のため、著名な医師に臨床研究を行ってもらうことが必要であり、そうした医師と研究開発部門との架け橋となってくれるメディカルサイエンスリエゾンの存在が重要視されているのです。
3.エビデンスの構築
新薬開発までのスピードが上がっている近年では、ドクターが開発中の薬に触れる期間が短いために、販売後にどれだけ様々なエビデンスを構築し、薬の信頼度を高めていけるかが重視されます。MRがドクターから求められる情報も、エビデンスベースのものに変化してきている傾向が見られます。そうした市場変化に対応できるようにするためにも、メディカルサイエンスリエゾンの高いレベルの知識が求められているのです。
上記のような市場の変化を背景に、必要性が増しているメディカルサイエンスリエゾン。一方、KOLからも、
- 目的が販売と直結していないために、中立性・公平性の高い情報を提供してくれるのでは
- 情報、意見共にハイレベルなものを提供してくれ、建設的な意見交換ができる存在になってほしい
と、非常に高い期待を寄せられています。
企業・KOLの両方から必要とされ、自分の介在価値を深く感じることができる仕事といえます。
ただし、メディカルサイエンスリエゾンは国内で台頭してまだ日が浅い職種です。全ての企業で上記に書いた通りの仕事ができているかというと、会社によってバラつきがあります。今後、メディカルサイエンスリエゾンの一人ひとりが、業界から求められている水準の仕事ができるよう努力していくことで、この職種全体のレベルが上がっていくと言えるでしょう。
メディカルサイエンスリエゾン(MSL)に必要な3つのスキル
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医学・薬学・科学に関するハイレベルな知識
メディカルサイエンスリエゾンはKOLとの対等な意見交換を求められるため、専門性の高い豊富な知識が必要です。
そのため、大学病院などを担当していたMRやマーケティング経験者、学術、R&Dなどの勤務経験がある人であれば、今まで自分が培ってきた知識を大いに活用できます。
また理系分野でのマスターやPh.Dを修了している人も、サイエンスレベルの向上を目的とした企業から求められる角度が高まっています。現在働いているメディカルサイエンスリエゾンを見ると医療系資格を持っている人が多く、薬剤師や医師などの資格を保持していると重宝されます。ただし、これらの資格が必須であるかは企業によって変わるので、応募前に必ず確認しておきましょう。 -
コミュニケーション力
メディカルサイエンスリエゾンはKOLマネジメントのための情報提供や、研究サポートを行う一方で、KOLから収集した情報を社内の開発部などに伝える役割も担っています。社内外共に、幅広い職種の人たちと関わっていく仕事のため、コミュニケーション力も重要なスキルの一つです。
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語学力
基本的に、海外の論文や文献を読み解けるレベルの語学力は必要です。ただ、Speakingに関して求められるレベルは企業によって異なります。ネイティブに近いスキルを求めるところから、Speaking skillは必要ないとするところまで、業務の内容によって様々です。TOEICなどのボーダースコアを提示している企業もあるので、確認を忘れずに。
メディカルサイエンスリエゾン(MSL)の求人動向
今メディカルサイエンスリエゾンの求人が増えている
メディカルサイエンスリエゾンという職種が日本国内でメジャーになったのは、直近5~10年のこと。現在は、既に大型の製品を持っており新薬開発に投資する資金も潤沢にある、世界トップクラスの外資系企業を中心に、この職種に就く人の数を充実させようとしている傾向があります。
上の項目でも書いたように、新薬市場の変化に合わせて求められる知識なども変化し、メディカルサイエンスリエゾンの必要性は更に増しています。
今なら未経験でも挑戦できる
中途採用のニーズが高まるなか、これまでメディカルサイエンスリエゾンとして働いている人の総数が少ないため、企業側は未経験の採用にも積極的。中には、数十名の規模での未経験採用を予定しているところもあります。
- 大規模病院の担当経験を持つMRや研究開発部門で働いている人
- 医師や薬剤師資格を持っている人
にとっては特に、自分の知識や経験を充分に活かせる仕事です。
メディカルサイエンスリエゾンの仕事に関心がある方は、この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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