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乾癬治療薬、新薬相次ぎ市場に活気―生物学的製剤が続々、新たな経口薬登場間近

更新日

相次ぐ新薬の発売で、国内の乾癬治療薬市場が活気付いています。

 

2010年以降、より高い効果が期待できる生物学的製剤や利便性の高い塗り薬が登場し、市場は拡大基調に。今年以降も、新たな生物学的製剤や経口薬が続々と発売される見通しです。

 

民間調査会社の富士経済は、国内の乾癬治療薬市場が2022年に652億円に達し、2013年から3.1倍に拡大すると予測。患者数の増加と相次ぐ新製品の登場を背景に、市場は急速に成長すると見込まれています。

 

 

乾癬患者は増加傾向に

乾癬とは、赤く盛り上がった皮膚の上に乾燥した白銀色の厚い角質(鱗屑)が付着し、ぼろぼろとはがれ落ちる疾患です。

 

患者の9割はこの典型的な「尋常性乾癬」で、それ以外にも、関節に腫れや変形、痛みが出る「関節症性乾癬」や、全身に赤みが広がり発熱や悪寒といった症状が出る「乾癬性紅皮症」、皮膚表面に膿がたまる「膿疱性乾癬」といった種類があります。

 

はっきりとした原因は分かっていませんが、発症に深く関わっていると考えられているのが、免疫の異常です。免疫異常によって炎症を引き起こすサイトカインが過剰になると、表皮細胞が通常の10倍の速さで作られるようになります。成熟していない表皮細胞は厚く積み上がり、やがて癬屑となってはがれ落ちていくとされています。

 

国内患者は12.5万人、43万人とする報告も

国内の乾癬患者数は増加傾向にあると言われています。

 

国内の乾癬患者数の推移

 

厚生労働省が3年に1度行っている「患者調査」によると、2014年の乾癬患者数は推定12万5000人で、02年から4万人程度増加。国内患者数を約43万人とする疫学研究も報告されています。

 

生物学的製剤の登場契機に市場拡大

乾癬治療は、表皮細胞の増殖を抑える活性型ビタミンD3や、炎症を抑えるステロイドの外用剤(塗り薬)が中心。紫外線を当てる光線療法や免疫抑制剤による治療も行われますが、生物学的製剤や配合外用剤といった新薬が相次いで登場し、治療選択肢が広がりました。

 

2010年以降に承認・発売された乾癬治療薬

 

民間調査会社の富士経済によると、乾癬治療薬市場は09年までは伸び悩んでいましたが、「ヒュミラ」(アッヴィ/エーザイ)と「レミケード」(田辺三菱製薬)の適応拡大や、「ステラーラ」(ヤンセンファーマ)の発売を契機に拡大に転じました。15年2月には「コセンティクス」(ノバルティスファーマ/マルホ)も発売され、市場拡大に拍車をかけています。

 

生物学的製剤はいずれも、炎症を引き起こすサイトカインの働きを抑制するもので、従来の治療に比べて高い効果が期待できます。使用は既存治療で効果不十分な患者に限られますが、薬価が高いこともあり、市場拡大を牽引する存在となっています。

 

外用剤には合剤登場、利便性向上で販売好調

一方、治療の中心を担う外用剤には活性型ビタミンD3とステロイドの配合剤が登場。14年9月には、「ドボベット」(レオファーマ/協和発酵キリン)が発売され、今年3月には「マーデュオックス」(中外製薬/マルホ)が承認されました。

 

レオファーマによると、乾癬患者の90%以上は活性型ビタミンD3やステロイドの外用剤による治療を受けていますが、その半数は両剤を併用しているといいます。従来は、薬局で両剤を混合したり、患者が自分で重ね塗りしたりする必要がありました。

 

配合剤の登場によりこうした手間が省け、利便性は大きく向上しました。「ドボベット」の販売は好調で、15年の売上高は47億円。発売当初に予測していたピーク時(発売7年度)の予測売上高45億円を早くも上回りました。

 

生物製剤2品目が申請中、経口剤にも新たな選択肢

乾癬には、今年以降も続々と新薬が登場する見込みで、市場はさらに活性化しそうです。

 

国内で開発中の乾癬治療薬

 

生物学的製剤では、協和発酵キリンのブロダルマブと、日本イーライリリーのイキセキズマブが申請中です。イキセキズマブは「コセンティクス」と同じIL-17Aがターゲット。ブロダルマブは、IL-17の受容体に結合することでIL-17の機能を阻害します。いずれも早ければ今年夏にも市場に出る見通しです。

 

JAK阻害剤が申請中、PDE4阻害剤も申請準備

経口剤では、ファイザーのJAK阻害剤トファシチニブクエン酸が申請中。セルジーンのPDE4阻害剤アプレミラストが申請準備段階にあります。

 

トファシチニブは13年から、関節リウマチ治療薬「ゼルヤンツ」として販売されています。細胞内のシグナル伝達経路の1つであるJAK経路を阻害することで、免疫細胞の遊走やサイトカインの産生を促すシグナル伝達を抑制。サイトカインの過剰な産生を抑えます。

 

一方、アプレミラストは、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)という酵素を阻害することで、細胞内のサイクリックアデノシン1リン酸(cAMP)の濃度を上昇さるという作用機序。cAMPにはサイトカインの発現を調整する機能があり、これを通じて炎症を抑える効果が期待されています。

 

効果の面では生物学的製剤に軍配が上がりそうですが、注射に比べて利便性が高く、中等症の患者にとっては新たな選択肢となる可能性があります。乾癬の経口剤はこれまで選択肢が限られていただけに、新薬がどのようなポジショニングを築くのか、注目したいところです。

 

市場は10年で3倍超に拡大

富士経済が14年に発表したレポートによると、国内の乾癬治療薬市場は2022年に652億円に達し、13年に比べて3.1倍の規模に拡大すると予測されています。

 

相次ぐ新薬の登場が市場拡大を後押ししますが、昨年7月には日本化薬が販売するインフリキシマブのバイオシミラーが先行品と同じ乾癬の適応を取得。日医工も申請中で、ファイザーはインフリキシマブとアダリムマブのバイオシミラーを開発中です。

 

乾癬治療薬市場は今後、バイオシミラーも巻き込みながら一層競争が激化していくことになりそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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