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リアルワールドデータでわかった 抗がん剤治療の実態|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、製薬企業で活用が急速に広がっているリアルワールドデータ。がん治療を分析したところ、抗がん剤の意外な使われ方がわかりました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

選択肢の増加とベストな治療を選ぶ難しさ

この20年、がんの治療パラダイムは見違えるほどの変貌を遂げてきた。

 

一例を挙げると、20年前に多発性骨髄腫と診断された患者には、わずかな治療オプションしかなかった。しかしその後、「レブラミド」「サレド」「ポマリスト」「カイプロリス」「ファリーダック」「エムプリシティ」「Venclexta」(日本は未承認)などが発売され、治療オプションに変革をもたらした。世界中で何千人もの多発性骨髄腫患者の人生が変わったことを考えると、この変化の大きさを実感できるだろう。

 

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治療法の直接比較は不可能

治療オプションが増えたのは喜ばしい一方、臨床試験のデザインはまちまちで、異なる治療法の有効性・安全性を直接比較するのは事実上不可能だ。このため、臨床現場ではベストな治療選択肢を選ぶのが難しくなっている

 

リアルワールドデータ(RWD)の欠如とは、臨床現場が治療パラダイムの変化の真っただ中にありながら、個別の治療シークエンスの評価は従来の統計的手法に依存していたことを意味する。このため、新規の治療法の導入に時間がかかり、医師によって差ができてしまっていた。これは製薬企業にとっても同様で、製品が実臨床でどう使われているのかを把握するのは難しかった。

 

抗がん剤 頻度・量とも標準より少ない

最近、高品質なRWDへの道が開かれ、単剤療法と併用療法、いずれのレジメンについても、実臨床での治療シークエンスの変更が徐々にわかるようになってきた。

 

RWDの精度はかつてないほど向上しており、治療シークエンスのダイナミクスに対応していくのに欠かすことはできないものとなっている。いまや、電子カルテと医療費請求データを使えば、製品が実際にどう使われているか詳細に把握することができる

 

また、RWDの応用によって、それぞれの治療オプションのアウトカムと比較可能性を評価するためのエビデンスを得られる可能性もある。

 

 

分子標的薬でもコンパニオン診断受けず

リアルワールドエビデンス(RWE)から得られる洞察は、実に驚くべきものだ。

 

数カ国のRWDを評価したところ、多発性骨髄腫や非小細胞肺がんの患者は、診療ガイドラインや添付文書の記載に比べ、薬剤の使用頻度がはるかに低く、使用量もかなり少ないことを示唆するエビデンスが得られた。

 

同様に、分子標的薬による治療を受けている患者は、投与の可否を判断するコンパニオン診断薬検査を受けていないことを示すエビデンスもある。

 

この先数十年、RWEが果たす役割はますます重みを増すことになるだろう。実臨床下での治療シークエンス、治療継続率、コンプライアンス、アウトカムを精度高く把握し、分析したいという要求は高まる一方、規制当局や支払機関の意思決定プロセスでも、RWDから得られる洞察の持つ意味は大きくなる。

 

この記事で述べた見解は、Decision Resources Group独自のもので、信頼できるグローバル医療データ提供機関から得られたドイツと日本の医療データの評価に基づくものだ。

 

(原文公開日:2018年4月4日)

 

【AnswersNews編集長の目】

近年、製薬企業の間で活用が急速に広がっているリアルワールドデータ(RWD)。マーケティングだけでなく、臨床開発から市販後の安全対策まで、さまざまな場面で活用されるようになっています。

 

最近では英アストラゼネカの日本法人が、肺がん治療薬「タグリッソ」へのアクセスの実態を把握する観察研究「REMEDY」で得られたリアルワールドエビデンスを欧州肺がん学会で発表。米ブリストル・マイヤーズスクイブと米ファイザーは、直接作用型経口抗凝固薬を服用中の非弁膜症性心房細動患者を対象とした大規模RWD解析により、両社の「エリキュース」(アピキサバン)の服用は、独バイエルの「イグザレルト」(リバーロキサバン)の服用と比較して、脳卒中/全身性梗塞症や大出血の有意に低い発現率を関連していたと発表しました。

 

日本ではこの4月から、医療情報データベース「MID-NET」が本格稼働し、市販後調査に活用することが可能となりました。対照群をRWDで補うなど、臨床試験への活用に向けた検討も本格化する見通しです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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