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肺がんに第3の免疫チェックポイント阻害薬―テセントリクが発売 市場競争の行方は?

がん領域でトップシェアを誇る中外製薬が、抗PD-L1抗体「テセントリク」を発売し、免疫チェックポイント阻害薬市場に参入しました。「オプジーボ」と「キイトルーダ」が先行する中、第3の免疫薬の登場は市場をどう変えるのでしょうか。

 

テンセントリク まず2次治療で

中外製薬は4月18日、抗PD-L1抗体「テセントリク」(一般名・アテゾリズマブ)を「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応で発売しました。薬価は1200mg20mL1瓶62万5567円。1日当たりの薬価は2万9789円で、小野薬品工業の抗PD-1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)と同額に設定されました。

 

国内では「テセントリク」を含め5つの免疫チェックポイント阻害薬が販売中。非小細胞肺がんの適応では、「オプジーボ」と「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ、MSD)に続く3剤目となります。

 

非小細胞肺がんの適応を持つ免疫チェックポイント阻害薬の概要を表にまとめました。大きな違いは、▽1次治療に使えるかどうか▽PD-L1の発現率によって投与に制限が設けられているか――の2点です。

非小細胞がんの適応を持つ免疫チェックポイント阻害薬の表。【オプジーボ】一般名:ニボルマブ、作用:抗PD-1抗体、適応:切除不能な進行·再発の非小細胞肺がん、用法用量:1回3mg/kgを2週間間隔(「1回240mgを2週間間隔」への変更を申請中)、一次治療:×、PD-L1発現率による投与の可否:原則なし・非扁平上皮がんでは、発現率も確認した上で投与可否の判断をすることが望ましい。発現率1%未満の場合はドセタキセルなど他の抗がん剤を優先、承認:2015年12月、社名:小野薬品工業。【キイトルーダ】一般名:ペムブロリズマブ、作用:抗PD-1抗体、適応:PD-L1陽性の切除不能な進行·再発の非小細胞肺がん、用法用量:1回200mgを3週間間隔、一次治療:○、PD-L1発現率による投与の可否:あり・1次治療: 50パーセント以上/2次治療: 1パーセント以上、承認:2016年12月、社名:MSD。【テセントリク】一般名:アテヅリズマブ、作用:抗PD-L1抗体、適応:切除不能な進行·再発の非小細胞肺がん、用法用量:1回1200mgを3週間間隔、一次治療:×、PD-L1発現率による投与の可否:なし・扁平上皮がんでは、発現率も確認した上で投与可否の判断をすることが望ましい。発現率がTCOかつIC0の患者には、本剤以外の治療選択肢も考慮、承認:2018年1月、社名:中外製薬。1次治療での使用は今のところ、臨床試験(KEYNOTE-024)で化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したキイトルーダだけに認められています。オプジーボも1次治療の適応取得を目指して臨床試験(CheckMate-026)を行いましたが、化学療法に対する優越性を示すことはできず、試験は失敗に終わりました。テセントリクは現在、臨床試験(IMpower110)を行っている最中で、18年中に1次治療への適応拡大を申請する予定としています。

 

キイトルーダの1次治療での使用をめぐっては、米メルクが先日、PD-L1発現率1%以上の患者で、化学療法に比べて全生存期間(OS)を有意に延長したとする臨床試験(KEYNOTE-042)の結果を発表しました。申請の予定は不明ですが、現在は対象になっていない発現率1~49%の患者にも、キイトルーダによる1次治療の道が開けるかもしれません。

 

一方でキイトルーダは、適応に「PD-L1陽性」というしばりがついています。これは、承認の根拠となった臨床試験(1次治療はKEYNOTE-024、2次治療はKEYNOTE-010)がPD-L1陽性の患者を対象に行われたため。1次治療はPD-L1発現率50%以上、2次治療は同1%の以上の患者に限られます。

 

対するオプジーボとテセントリクは、原則としてPD-L1の発現率に関わらず使用することができます。ただし、オプジーボの最適使用推進ガイドラインでは、非扁平上皮がんに限り、発現率1%未満の場合はドセタキセルなどほかの抗がん剤を優先するとされています。テセントリクはこうした制限は一切設けられていません。

 

臨床現場での使い分けは?

こうした違いを踏まえ、臨床現場では今後、3剤をどのように使い分けていくのでしょうか。4月12日、発売に先立って中外製薬が開いた報道関係者・アナリスト向けの説明会で、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎副院長・呼吸器内科長が解説しました。

 

日本肺癌学会が昨年12月に公表した「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン2017年版」によると、IV期の非小細胞肺がん(EGFRやALKなどの遺伝子変異が陽性の場合を除く)では、PD-L1発現率が50%以上の場合はキイトルーダ、50%未満は化学療法を行うのが標準的な治療。2次治療では3剤ともに選択肢となりますが、キイトルーダはPD-L1発現率が1%以上の患者にしか使えません。

EBMの手法による肺がん診療ガイドラインの図。

 

臨床医「2次治療 扁平上皮がんならオプジーボ」

2次治療での使い分けについて大江氏は「個人的な考え方」と前置きした上で、「扁平上皮がんの場合は、オプジーボの試験の成績が非常によかったので、私としてはオプジーボを使うと思う」と述べました。

 

一方、非扁平上皮がん(PD-L1陰性)については、承認の根拠となった臨床試験でオプジーボの生存曲線は投与6カ月ごろまで化学療法を下回った後逆転するのに対し、テセントリクは最初から化学療法を上回っている点を評価。さらに、オプジーボが2週間間隔で投与するのに対し、テセントリクは3週間間隔で利便性が高い点もメリットに挙げました。

 

迫る「第4の免疫薬」の承認 III期の治療に大きなインパクト

三つ巴の競争は始まったばかりですが、非小細胞肺がんでは早くも第4の免疫チェックポイント阻害薬の承認が迫っています。アストラゼネカの抗PD-L1抗体「イミフィンジ」(デュルバルマブ)で、6月の承認、8月の薬価収載が見込まれています。

 

イミフィンジの最大の特徴は、III期の非小細胞肺がんを対象としている点。III期の非小細胞肺がんは、放射線療法と化学療法が標準治療ですが、ここ20~30年はほとんど治療に進歩はありません。

 

根治的同時化学放射線療法後の地固め療法としてのデュルバルマブの有効性・安全性を検証した臨床第3相試験「PACIFIC」では、プラセボに比べてPFSを大幅に延長しました。IV期の患者に使われるほかの3剤とは対象患者が違うものの、大江氏は「非常に大きなインパクトがある。使える患者にはかなり積極的に使われるようになるだろう」と期待します。

 

併用療法の開発も活発化

併用療法の開発も活発化しています。各薬剤とも化学療法との併用療法を開発しているほか、テセントリクは血管新生阻害薬「アバスチン」との併用療法を開発中。小野薬品と米ブリストル・マイヤーズスクイブは先日、オプジーボと「ヤーボイ」の併用療法が非小細胞肺がんの1次治療を対象とした臨床試験で好結果を得たと発表しました。アストラゼネカも、イミフィンジと抗CTLA-4抗体トレメリムマブの併用療法や、イミフィンジとイレッサの併用療法で臨床試験を行っています。

 

「オプジーボ」「キイトルーダ」の登場で大きく変わった非小細胞肺がんの治療。併用療法も含め、免疫チェックポイント阻害薬による治療選択肢が拡大することで、治療は今後、さらに変化していくでしょう。

 

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