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海外レポート

「ブレグジット後」に製薬企業はどう備えるべきか|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、いわゆるブレグジット。混乱が予想される中、製薬企業はこれにどう備えるべきなのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

本当のインパクトはこれから

2016年6月、英国がEU(欧州連合)から離脱する道を選んだ運命の国民投票。その後のひと月は、ブレグジットの不安を煽る報道が相次いだ。海外の優秀な人材を引き寄せようと懸命な英国製薬企業から、ブレグジットの余波で薬が不足すると心配する薬剤師まで、悩みは多岐に渡り、グローバル製薬企業の不安と焦りを掻き立てている。ただし、本当のインパクトはこれからだ。

 

英国がEUから正式に離脱するのは2019年3月30日だが、その後の世界の輪郭はまだ描けていない。最も不透明なことの一つが、英国とEUの関係がどうなるかだ。これは製薬業界にも大きな影響を与える。両者の関係がどうなるかによって、販売承認からサプライチェーン、研究資金の調達まで、あらゆることが左右される

 

Great Britian flag in front of a blue sky

 

英国がブレグジット後もEMA(欧州医薬品庁)の規制下に留まれるよう働きかけを行っているのは公然の事実だが、EU各国―それに英国のメイ政権内部の派閥―に認められるかは依然として不透明だ。

 

製薬各社のみならず、当のEMAとMHRA(英国医薬品医療製品規制庁)までもが、両者の関係が不明なまま離脱を迎えるという最悪のシナリオ、いわゆる「ハードブレグジット」に備えている。

 

承認は取り直し?サプライチェーンも混乱

EMAは、英国をEUの規制の枠外に位置付けるガイダンスを出している。これによれば、英国に本拠を置く企業はすべての製品の販売承認をEU内の法人に移すか、新たに承認申請を行わなければならない。分散承認や相互承認の手続きの下でMHRAが承認したものを、すべてほかのEU加盟国の機関に移管することにもなりかねない。同じようなことが、分散承認や相互承認でほかのEU加盟国が承認したものにも必要になり、英国では承認の取り直しを求められることになる。

 

EMAはアムステルダムへ

ブレグジットによる変化として最も分かりやすいのは、EMAが本部をロンドンからアムステルダムに移転することだ。これにより、数千人規模の専門家集団がロンドンを去ることになる。EMAは、アムステルダムへの移転が、当局にとっても、業界にとっても、最も混乱の小さい道であるとしている。

 

しかし、この最良のシナリオでさえ、EMAが元の状態を取り戻すのに3年はかかる。EMAの職員の多くは、アムステルダムに行くつもりはないと言っており、そうなるとEMAの機能と専門性は壊滅的なダメージを受ける。

 

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ブレグジットは販売承認だけでなく、欧州のサプライチェーンにも影響を及ぼす。

 

ABPI (英国製薬産業協会)によると、英国はEUに月間4500万パックの医薬品を輸出し、3700万パックを輸入している。英国では2600種類以上の医薬品が製造され、それらの多くはEU全土で販売されている。英国は欧州の医薬品サプライチェーンに欠かせない存在で、その離脱は大きな混乱を招く。製薬各社はすでに、サプライチェーンの再編を始めている。市販後のファーマコビジランス(医薬品安全性監視)にも変化が出てくるだろう。

 

最悪のシナリオに備える

販売承認やサプライチェーンへの影響を見てきたが、製薬業界はブレグジットの出口をどう見いだしていけばいいのだろうか。

 

EMAとMHRAの関係が続くかどうかはさておき、製薬業界の希望は離脱後の移行期間に託される。ハードブレグジットが現実のものとなり、輸出入や販売承認に特段の配慮がなされない場合に備え、製薬業界は2年以上の移行期間を設けることを強く求めている。

 

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MHRAは2018年1月に発表した声明で、ハードブレグジットとなっても、スムーズな移行のための期間を設けること、さらに移行期間終了後は連携を緊密に行うことを、断固として要求すると約束した。英国とEUはブレグジット後に21カ月間の移行期間を設けることで暫定的に合意しているが、何一つ確定には至っていない。

 

EUと加盟国が最終合意を批准するための時間を確保するため、EUは英国との離脱交渉を2018年10月までに完了させる予定だ。交渉の過程で、製薬業界の将来に対するイメージも明確化してくるだろう。それまでは、最悪のシナリオに備えて必要な手段と知識を装備しておくことが、製薬企業がとるべき最善の行動と言えそうだ。

 

(原文公開日:2018年3月29日)

 

【AnswersNews編集長の目】

世界に衝撃を与えた国民投票からはや2年。英国のEU離脱まで1年を切っても、確定したのはEMAの移転先くらいで、不安はなお拭えません。

 

英国には、多くの日本の製薬企業が拠点を置いています。アステラス製薬は欧州・中東・アフリカの地域本社を、エーザイも欧州の統括会社を構え、武田薬品工業は欧州の開発拠点を英国に配置。さらにエーザイは、グローバル生産拠点の1つとなる工場も置いています。

 

英国のメイ首相は3月に行った演説で、EMA本部のオランダ・アムステルダム移転後も、準加盟国として参加すれば英国医薬品産業への投資は維持されるとの考えを示しました。一方、EUは産業ごとの単一市場への参加には否定的。離脱後に21カ月間の移行期間を設けることで合意したものの、その短期間で貿易交渉をまとめるのは難しく、サプライチェーンへの影響も避けられそうにありません。

 

依然として先行きに不透明感が漂う中、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は加盟企業に対し「あらゆるシナリオを準備し、欧州と英国の患者が必要な医薬品にアクセスし続けるための適切な計画を確実に立てるよう」要請しています。アナリストも指摘する通り、製薬企業には、最悪のシナリオを想定した動きが求められています。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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