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吸入vs舌下フィルム 選ばれるのはどっち?パーキンソン病 レスキュー療法に新薬登場へ|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはパーキンソン病治療薬。レスキュー療法に使う2つの新薬が開発の最終段階に差し掛かっています。注射剤の既存薬より簡単に投与できる吸入剤と舌下フィルム製剤、医師が選ぶのはどちらでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

「アポカイン」効果高いが使用広がらず

パーキンソン病のアンメットニーズの中心は「オフ時間」への新たな対処法だ。オフ時間とは、標準治療薬のレボドパを使っても効果が持続しない、次の服用の前に運動症状が出てしまうことを指す

 

Decision Resources Groupの疫学専門家は、オフ症状を呈するパーキンソン病患者は40%に上ると推定しており、疾患の経過とともにほぼすべての患者にオフ症状が起こるようになる。パーキンソン病の初期ではレボドパの服用回数を増やし、ほかの薬を追加することでオフ症状に対処できるが、進行すると今ある治療薬ではオフ症状を十分に予防できない場合もある。

 

主要国では、アポモルヒネの皮下注射剤である「APO-go PEN/アポカイン」が進行パーキンソン病のオフ症状に対するレスキュー療法薬として承認されている。同剤の効果に疑いの余地はない。使用した患者の90%はオフ症状から20分以内に完全な「オン」の状態となり、運動関連の症状は大幅に改善する。

 

パーキンソン病1

 

注射がネックに

しかし、注射には介護者の助けが必要で、我々のインタビューに応じたキーオピニオンリーダー(KOL)によると、患者は人前で自己注射をすることをみっともないと感じているという。アポカインには不快感をもよおす副作用もあり、患者はあらかじめ制吐薬を使用しなければならない。価格も比較的高い。

 

このため、アポカインの使用は広がっておらず(G7の市場で薬物治療を受けているパーキンソン病患者のうち、アポカインを使っているのは0.5%にも満たないと推定)、使用頻度も低い。

 

レボドパ吸入剤とアポモルヒネ舌下フィルム P3試験を終了

アポカインに代わる治療選択肢にチャンスがあるのは明らかで、そこを狙う2つの新規レスキュー療法薬が米国と欧州で臨床第3相(P3)試験を終了した。Acorda Therapeuticsの「Inbrija」(レボドパの吸入剤)と、大日本住友製薬の子会社Sunovionが開発する「APL-130277」(アポモルヒネの舌下フィルム剤)だ。

 

我々が話を聞いた複数のKOLがこの種のレスキュー薬を待ち望んでいた。正直、私もその1人だ。いずれもプラセボ対照のP3試験は成功したと言える。ただ、データをよく見ると期待外れな部分もあり、特にAPL-130277は私の(高い)期待を裏切る部分があったのも事実だ。

 

これらの新薬候補が強みとするのは、いずれもオフ症状での使用がアポカインよりもかなり簡単で、忍容性が良好な点だ(APL130277はアポカイン同様、制吐薬による前処置を行っているが)。こうした特徴だけをもってしても、レスキュー療法薬への需要を掻き立て、市場成長の原動力となるだろう。

 

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有効性はアポカインに軍配か

ただ、十分にオン状態に転換する患者の割合は、アポカインが90%なのに対し、Inbrijaは58%、APL-130277では35%に過ぎない。運動症状の改善でもアポカインが上回っており、UPDRS(パーキンソン病統一スケール)パートIIIによる評価では、アポカインが19ポイント改善したのに対し、Inbrijaは4ポイント、APL-130277は8ポイントにとどまった。効果発現までの時間(約10分)や効果の持続時間(60~90分)は3剤とも同程度だったが、アポカインがいずれの時間もわずかに短いようだ。

 

ところが、APL-130277はP3試験のオープンラベル用量設定期に得られた結果がより有望だったようだ。設定した6段階の用量のうち1つで、患者の83%が十分なオン状態に転換し、運動機能の改善度もアポカインに近いものだった。オープンラベル期とランダム化期の間に何があったのかについては、発表されている限られたデータから推測するしかない。

 

開発中の2つの新薬 専門医は「使う価値ある」

医師らは、InbrijaとAPL-130277がパーキンソン病患者の生活にプラスになると受け止めると私は確信している。

 

昨年、Inbrijaのデータについて我々のインタビューに応じたKOLは、オン状態への転換率と運動症状の改善度が比較的低いことには驚いていたが、試験に参加した患者はアポカインの試験の患者ほど進行しておらず、「十分なオン状態」も患者の報告による主観的な定義であるとし、楽観していた。

 

KOLがさらに強調するのは、オン状態が十分でなかったとしても、次にレボドパを服用して効果が出るまで患者がある程度自立して過ごせるのは大きいという点だ。英国のある専門医は「これらの新薬候補が狙っているのは、本当にオフ症状を治療するというよりは、レボドパを次に服用するまでの『つなぎ』としての効果だ。このため、レスキュー薬は十分なオン状態に転換できなかったとしても、患者にとっては使う価値がある」と説明している。

 

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難しい使い分け 優勢なのはレボドパ吸入剤?

InbrijaもAPL-130277も有効性のプロファイルが(少なくともアポカインとの比較においては)同程度という状況の中、医師がどちらのレスキュー療法薬を先に手に取るのか、見極めるのは難しい。

 

あるKOLは「APL-130277よりもInbrijaを優先する」と打ち明けるが、その理由は、忍容性が良好なことと、アポモルヒネよりレボドパが使い慣れているからだという。このKOLは、オフ症状の時に患者が使いやすいのは舌下フィルムのAPL-130277だが、患者によってそれぞれメリットがあるとも述べている。

 

別のKOLは患者の併存症(喘息や口腔内潰瘍など)が選択の決め手になると指摘し、さらに別のKOLは朝のオフにはAPL-130277、日中のオフにはInbrijaが最適とみている。

 

それでも、パーキンソン病患者にアポカインが必要であるということは、この先も変わらないだろう。使用は限定的だが、重度の患者にとっては有効性が顕著なアポカインがベストの選択肢だからだ。

 

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2新薬 米国だけで売り上げ5億ドル超えと予想

2015年に私がDecision Resources Groupでパーキンソン病の調査を引き継いだ時点では、Inbrija(当時はCVT-301と呼ばれていた)が優勢だった。

 

しかし2017年、私はそれとは違うシナリオを描いた。当時、APL-130277は忍容性プロファイルもオープンラベルの有効性データも良好だったため、神経科医は最終的にAPL-130277を選ぶというものだった。ところが今は、APL-130277の有効性はInbrijaを大きく上回ってはおらず、私としては、以前ほどではないにしろInbrija優勢の予測に戻ると考えている。

 

それでもやはり、いずれの薬剤も今後レスキュー薬の使用患者数をかなり伸ばし、2026年には米国市場だけで5億ドルを超えると私は考えている。

 

(原文公開日:2018年2月12日)

 

【AnswersNews編集長の目】

記事でも言及があった通り、オフ症状への対処はパーキンソン病に残された大きなアンメットニーズです。オフ症状は1日に1~6回起こるとされ、▽オフ状態のまま起床▽レボドパ製剤の効果発現に時間がかかる▽次の服薬の前にレボドパ製剤の効果が切れる(ウェアリングオフ)――などの種類があります。

 

大日本住友製薬が開発中のAPL-130277は、米国子会社サノビオンがカナダの米バイオベンチャー・シナプサスを買収して獲得した新薬候補。今年1月にはP3試験で良好な結果を得たと発表しました。米国で今春に申請する方針で、日本でも開発を始める予定。ピーク時には500億円規模の売り上げを期待しています。

 

一方、Acordaは17年6月にInbrijaを米国で申請したものの、FDA(食品医薬品局)は申請を却下。Acordaは12月に再申請を行いました。

 

一方、パーキンソン病治療薬では血中濃度のコントロールも課題。パーキンソン病は進行すると薬が適切に効果を発揮する血中濃度の範囲が狭くなり、オフ症状やジスキネジア(薬が効きすぎることで体が勝手に動く)が出現する時間が多くなります。

 

田辺三菱製薬は17年にイスラエルのニューロダームを買収。レボドパとカルビドパを液剤化し、携帯ポンプで24時間持続的に皮下注射する「ND0612」を獲得しました。レボドパ・カルビドパの液剤化に成功したのは世界初で、経口剤では難しかった血中濃度のタイトコントロールが可能になると期待されています。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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