1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. 海外レポート>
  4. バイオシミラー「切り替えるのか、切り替えないのか。それが問題だ」―リウマチ領域の動向から|DRG海外レポート
海外レポート

バイオシミラー「切り替えるのか、切り替えないのか。それが問題だ」―リウマチ領域の動向から|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはバイオシミラー。昨年11月に開かれた米国リウマチ学会で「切り替えるのか、切り替えないのか?それが問題だ」と題するシンポジウムが開かれました。海外でも賛成派と慎重派の議論が続いています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

依然続く賛成派と慎重派の議論

2017年11月3~8日、米国リウマチ学会が開かれ、世界110カ国から1万6000人を超える医療従事者や業界関係者が晴天のサンディエゴに集まった。

 

会議の主要テーマの1つが、昨今のバイオシミラーの登場。ポスター発表やセミナーに加え、「バイオシミラー 切り替えるのか、切り替えないのか?それが問題だ」と題するシンポジウムも開かれた。バイオシミラーの専門家であるJonathan Kay医師が切り替えに賛成意見を述べたのに対し、Roy Fleischmann医師は「バイオシミラーには依然として疑問点が多く、医師は処方について慎重を期すべきだ」と聴衆に訴えた。

 

低分子医薬品とは異なり、バイオ医薬品の製造ではロットによってばらつきが生じる。しかしこのばらつきは、製造工程の既知または未知の変更により、許容範囲を超えて安全性や有効性、免疫原性に影響を与える可能性がある。

 

pixta_2396515_M_R

 

ロット間のばらつきに懸念

医師は、バイオシミラーと先行バイオ医薬品の間の免疫原性のばらつきが、薬の切り替えとあいまって、有効性の低下をもたらす可能性を認めている。承認後、バイオシミラーのばらつきがどのようにモニターされるかは現時点で不明確だ。そのうえ、1つの先行バイオ医薬品に対して複数のバイオシミラー(例えば、「レミケード」にはバイオジェンの「Flixabi」、セルトリオンの「Remsima」、ファイザーの「Inflectra」)が存在することで、事態は複雑化している。

 

バイオシミラーの承認プロセスは、先行バイオ医薬品とは異なり、その焦点は主に、バイオシミラーと先行品の類似性が十分であることを示す分析試験に置かれている。バイオシミラーは、ある1つの適応で承認を受ければ、臨床試験を行っていない別の適応についても、先行品で承認されていれば承認される場合がある。臨床試験が少なくて済むことと、適応が補われることで、バイオシミラーの使用は促進され、薬剤のコストを押さえることができる。

 

しかし、バイオシミラーの類似性をほかの適応に広げることに対して懸念を示す医師もいる。例えば、関節リウマチを対象に試験が行われ、それでクローン病の適応も承認するようなケースだ。

 

切り替え試験が活発化

米国と欧州、それに日本では、バイオシミラーのTNF-α阻害薬が承認・発売されるとともに、先行品からの切り替えに焦点を当てた試験の数が増加している。

 

バイオシミラーの安全性と有効性のエビデンスとして広く引用されている「NOR-SWITCH」試験では、ノルウェー人患者がレミケードからその後続品であるRemsima/ Inflectraに切り替えた場合の非劣性が報告されている。

 

pixta_8651079_M_R

 

中止率が高いのはノセボ効果のせい?

より問題となるのが、デンマークの国家レジストリ「DANBIO」の記録や、オランダで行われたインフリキシマブの切り替え試験「BIO-SWITCH」だ。

 

両試験は、バイオシミラーで中止率がより高くなる理由を、患者からの報告がより客観的な疾患の評価と比べて悪くなる「ノセボ効果」にあるとしている。患者教育がバイオシミラーへの切り替えに対する否定的な認識を改善し、ノセボ効果を低下させると考える医師がいる一方、この結果は臨床的に重要だと主張し、さらなる試験の必要性を指摘する医師もいる。

 

さらに、先行バイオ医薬品からバイオシミラーへの切り替えについては試験が行われているものの、異なるバイオシミラー間での複数回にわたる切り替えについての研究はまだなされていない。米国では相互に切り替え可能な医薬品として承認されたバイオシミラーはまだない。しかし、そうした承認が下りれば、医師への相談なしに薬局レベルで切り替えることが可能になり、医師の懸念を引き起こす。

 

普及を左右する要因は?

医師がバイオシミラーの信頼性について議論しているかたわら、価格や入手可能性といった市場要因が、バイオシミラーの普及には重要な役割を持つと考えられる。

 

「NOR-SWITCH」の結果が欧州で受け入れられるのは、バイオシミラーを使うことで削減されるコストが、切り替えを促進する政策を行うのに十分だからだ。しかし米国では、バイオシミラーによるコスト削減は、医師や患者よりもむしろ薬剤給付管理会社を利するものとなっており、バイオシミラーの魅力が損なわれている。

 

Active senior man touching his injured knee on a sunny day

 

ファイザー 先行品が独占契約で処方妨害と提訴

加えて、企業は先行バイオ医薬品の市場シェアを維持する方法を模索し始めている。つい最近、ヤンセンがレミケードに使用について保険会社や病院と独占契約を結んでいることが、ファイザーのInflectraの処方を妨害しているとして、ファイザーがヤンセンを相手取って訴えを起こした。

 

また、バイオシミラーは欧州でより早く使用が可能となることが多い。例えば、アッヴィとアムジェンが最近和解したことが、アダリムマブのバイオシミラーは欧州で2018年に使用可能となるのに対し、米国では2023年まで使えない。

 

インセンティブが不足していること、バイオシミラーの利用可能性が限られていること、医療システムが違うことがあいまって、米国では、ブランドへの侵食が欧州よりも遅くなっている。

 

JAK阻害薬は安全性がカギに

話は変わるが、新規の関節リウマチ治療薬、特にJAK阻害薬であるupadacitinib(アッヴィ)とfilgotinib(ギリアド)が臨床試験で有望な有効性を示す一方、安全性シグナルへの対応は特に急務だと思われる。

 

イーライリリーのJAK阻害薬「オルミエント」(バリシチニブ)とヤンセンのIL-6阻害薬シルクマブに対して米FDA(食品医薬品局)が出した審査完了報告通知では、安全性に関する懸念が指摘されており、承認を危うくする以上な安全性シグナルがないかどうか、臨床試験を行う者にデータを十分に検証させるものとなった。

 

arthritis old person and Elderly woman female suffering from pain at home

 

ヤンセンはシルクマブの承認を世界的に断念したと発表した。しかしリリーは、2018年1月に再申請を行う予定で、オルミエントが承認されること強く期待しているようだ。

 

オルミエント 欧州ではスムーズに市場導入

このことは、リリーが米国リウマチ学会で主催したJAK阻害薬に関するプログラムからも見て取れる。オルミエントは発売済みの欧州5カ国ではスムーズに導入が進んでおり、血栓塞栓性事象に対する規制当局の懸念について、欧州の医師はそれほど気にしていないことがうかがえる。

 

Decision Resources Groupがインタビューしたキーオピニオンリーダーは、JAK阻害薬が実際の医療現場でどう使われるのか、興味を持っている。関節リウマチ治療薬市場の競争が激しさを増す中、規制当局にとっては、安全性シグナルに対する注意がより重要になってきている。革新的新薬と、有効性にほとんど差がない第2、第3、第4クラスの医薬品を比較評価する場合はなおさらだ。

 

(原文公開日:2017年12月12日)

 

【AnswersNews編集長の目】

バイオシミラーへの切り替えの是非をめぐっては、日本でも議論が活発です。医療費削減の観点からも使用拡大に期待がかかる一方、バイオシミラーがあくまで先行品の「類似品」であることや、それによる有効性・安全性に関するエビデンスが不足していることを背景に、使用に慎重な意見も根強くあります。

 

政府は2017年6月に閣議決定した「骨太の方針2017」で、20年度末までにバイオシミラーの品目を成分数で倍増させるとともに、バイオシミラーの使用による医療費適正化効果額と金額ベースのシェアを公表する方針を掲げました。厚生労働省は18年度予算にバイオシミラーの開発を支援したり、医療従事者・国民への理解を促進したりするための予算を計上。普及に向けた政策的な動きが本格化しています。

 

バイオシミラーの普及をめぐっては、高額療養費制度がネックとなっているとの指摘もあります。バイオシミラーとはいえ治療費は高く、高額療養費制度の対象となるので、切り替えたとしても患者の自己負担は減りません。患者側にとっては、切り替える動機に乏しいのが実情です。

 

高額療養費制度を改正し、バイオシミラーと先行品の差額を患者の自己負担とすることなどを求める意見も出ています。バイオシミラーの推進には、日本のバイオ医薬品の研究開発力や製造力を強化するという意味合いもあります。普及に向けてはまず、エビデンスの蓄積が欠かせません。

 

この記事はDecision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。Decision Resources Groupは、世界のバイオシミラー動向を分析した「Biosimilar Database」を発行しています。データベースに関するお問い合わせはこちら

 

DRGバナー

 

  1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. 海外レポート>
  4. バイオシミラー「切り替えるのか、切り替えないのか。それが問題だ」―リウマチ領域の動向から|DRG海外レポート