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ニュース解説

C型肝炎治療「究極のところまできた」―8週投与・パンジェノタイプ「マヴィレット」が発売

インターフェロンとの併用がいらない治療薬の相次ぐ登場で大きく変化したC型肝炎の治療。先月、アッヴィが国内で初めて8週投与が可能で、あらゆるジェノタイプが1剤で治療できる「マヴィレット」を発売しました。新薬による治療は一巡したと言われますが、専門家はマヴィレットの登場で「日本のC型肝炎治療は最終章を迎える」と話しています。

 

国内初の「8週」「パンジェノ」

「C型肝炎の治療は究極のところまできた」。肝臓専門医で虎ノ門病院分院長の熊田博光氏は、アッヴィが11月27日に発売したC型肝炎治療薬「マヴィレット」の意義をこう強調します。

 

11月28日、同社が開いたメディア向け説明会で講演した熊田氏によると、マヴィレットの特徴は大きく2つ。1つは、これまで最短12週間だった治療期間が一部のC型肝炎で8週間まで短くなったこと。もう1つは、あらゆるタイプのC型肝炎が1つの薬剤で治療できる(パンジェノタイプ)ようになったことです。いずれも国内では初めての薬剤です。

 

マヴィレットは、いずれも直接作用型抗ウイルス薬(DAA)のNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬グレカプレビルと、NS5A阻害薬ピブレンタスビルの配合剤。ジェノタイプ1(GT1)とGT2のC型慢性肝炎では8週間での治療が可能で、それ以外のC型慢性肝炎とC型代償性肝炎は12週間の治療となります。GTはC型肝炎ウイルスが持つ遺伝子の違いによる分類で、日本ではGT1とGT2で全体の97%を占めると言われています。

 

薬価は1錠2万4210.40円。8週投与では406万7347円、12週投与なら610万1020円かかる計算です(医療費助成により自己負担は月額1万円または2万円)。アッヴィはピーク時に薬価ベースで377億円の売り上げを予測しています。

マヴィレットの概要 「製品名」マヴィレット配合錠 「一般名」グレカプレビル・ピブレンラスビル 「作用機序」NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬・NS5A阻害薬

 

GT問わずリバビリンフリーに

2014年9月の「ダクルインザ」「スンベプラ」(ブリストル・マイヤーズスクイブ)を皮切りに、新薬が相次いで登場したC型肝炎。インターフェロンとの併用が不要となったことで副作用も軽減され、10年ほど前は48週間(インターフェロンとリバビリンの併用療法)に及んだ治療期間も大幅に短縮されました。「患者負担は当時からは想像できないくらい軽減されている」。日本肝臓病患者団体協議会代表幹事の米澤敦子さんは話します。

インターフェロンフリーのC型肝炎治療薬(発売順に記載します) 「ダクルインザ・スンベプラ」適応:GT1 治療期間:24週 「ソバルディ」適応:GT2及び、GT1・GT2以外 治療期間:GT2は12週、GT1・GT2以外は24週 共にリバビリンとの併用が必要 「ハーボニー」適応:GT1 治療期間:12週 「ヴィキラックス」適応:GT1及び、GT2(C型慢性肝炎) 治療期間:GT1は12週、GT2は16週 GT2ではリバビリンとの併用が必要 「エレルサ・グラジナ」適応:GT1 治療期間:12週 「ジメンシー」適応:GT1 治療期間:12週 「マヴィレット」適応:GT1・GT2(C型慢性肝炎)及び、GT1・GT2(DAA治療歴ありのC型慢性肝炎)及び、GT1・GT2(C型代償性肝硬変)及び、GT1・GT2以外 治療期間:GT1・GT2(C型慢性肝炎)は8週、それ以外は12週

 それでも課題は残っていました。

 

GT1以外に使えるのはこれまで「ソバルディ」(ギリアド・サイエンシズ)と「ヴィキラックス」(アッヴィ)の2種類がありましたが、いずれもリバビリンとの併用が必要。リバビリンには貧血の副作用があり、これによって必要な量を投与できず、十分な効果が得られない例も少なくありませんでした。

 

さらに各薬剤ともウイルスに薬剤耐性変異がある場合は効果が下がり、GT1で最も使われる「ハーボニー」(ギリアド)は腎機能障害のある患者に使えない、などといったことも既存のC型肝炎治療薬の課題として指摘されてきました。

 

耐性にも効果 腎機能障害でも使用可能

一方、マヴィレットはGT1、GT2以外でもリバビリンの併用が不要。GTを問わず「リバビリンフリー」で治療できる薬剤は国内初となります。さらに国内臨床第3相試験では、薬剤耐性変異や高度腎機能障害に対しても高い効果を示しました。

 

「治療期間はさらに短くなり、リバビリンを使えない人にも投与できる」(米澤さん)と患者の期待も高く、アッヴィのジェームス・フェリシアーノ社長は「現在のC型肝炎治療のアンメットニーズは、高齢者、腎機能障害合併、リバビリン不耐用、既存のDAAで効果が得られなかった患者だ。マヴィレットはこれらに対しても高い有効性を示しており、アンメットニーズに応えることができる」と話します。

 

「ファーストラインの薬剤の開発は終わり」

マヴィレットの発売でアンメット・メディカル・ニーズが満たされつつある中、今後のC型肝炎治療薬の開発について熊田氏は「ファーストラインの薬剤の開発は終わる」と見通します。各社のパイプラインを見てみると、新規の薬剤として開発中なのは、ギリアドのソホスブビル/ベルパタスビル配合剤(DAA治療不成功のGT1、GT2のC型慢性肝炎・C型代償性肝硬変)だけです。

 

民間調査会社の富士経済が17年4月に発表したレポートによると、国内の肝炎治療薬市場は16年の4157億円をピークに、24年には1472億円まで縮小する見通し。「ハーボニー」など相次いで発売された新薬で市場は急拡大したものの、治療は一巡したと言われます。

 

肝疾患領域の新薬開発は今後、「ウイルス排除に成功した後に肝がんにならないようにする線維化改善剤や、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)を改善する薬剤に移っていくだろう」と熊田氏。NASHではギリアドや大日本住友製薬、ノボノルディスクファーマ、田辺三菱製薬が国内で新薬開発を進めています。よりアンメット・メディカル・ニーズの高いところで開発競争が繰り広げられることになります。

 

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