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ニュース解説

世界初「デジタルメディスン」が承認…飲み忘れ防止、製薬会社あの手この手

大塚製薬が、錠剤に埋め込んだセンサーで服薬状況を管理する「デジタルメディスン」の承認を米国で取得し、話題となっています。

 

ここ数年、製薬会社の間で活発化している、IT技術を活用した服薬支援の取り組み。医療費削減の流れとあいまって、新たな付加価値戦略として広がっていく可能性があります。

 

錠剤にセンサー 身体に貼ったパッチで服薬検知

大塚製薬が米国で承認を取得し話題となった「エビリファイ マイサイト」は、大塚が製造販売する抗精神病薬「エビリファイ」の錠剤に、米プロテウス・デジタル・ヘルス社が開発した極小のセンサーを組み込んだもの。センサーは胃液に触れるとシグナルを発し、患者の身体に貼り付けたパッチ型検出器でシグナルをキャッチ。服薬した日時と錠数を記録します。

 

大塚によると、このように医薬品と医療機器を一体化した製品が承認されたのは世界で初めて。パッチ型検出器は睡眠など患者の活動データも記録し、服薬状況とともに専用アプリに送信します。患者が同意すれば家族や医療従事者、介護者もデータを確認することが可能。センサーは体内で消化・吸収されることはなく、そのまま排泄されるといいます。

 

「大塚の精神疾患領域での25年以上の経験の中でも、今回の承認は大きな契機となる。服薬状況を客観的に把握することで、よりよい治療に貢献していく」。大塚の樋口達夫社長はこうコメント。統合失調症は薬を規則正しく飲まなくなることで再発のリスクが増大しますが、統合失調症患者の6割が服薬不良との報告もあります。

 

大塚とプロテウスは、米国でまず少数の患者に使ってもらい、有用性を確認しながら展開していく方針です。

 

大塚は服薬支援機能付き包装 エーザイは機器を販売

大塚の「デジタルメディスン」に象徴されるように、製薬会社の間でここ数年、IT技術を活用した服薬支援の取り組みが広がりを見せています。

 

国内の複数の調査によると、薬の飲み残しを解消することで百数十億円から数千億円(年間)の薬剤費を削減することができると推計。飲み忘れの防止は医療費の削減につながるだけでなく、製薬企業にとっても、正しく飲んでもらうことで薬物治療の効果を最大化できるというメリットがあります。

 

大塚は17年7月、抗血小板薬「プレタールOD錠剤100mg」について、NEC(日本電気)と共同開発した服薬支援機能付きの新包装品の承認を取得しました。56錠(1日2回服用、4週間分)入りのプラスチックケースで、別売りの「服薬アシストモジュール」を取り付けて使用。LEDが点滅して服薬時間を知らせるとともに、薬の取り出し履歴を記録し、専用アプリで確認することができます。

 

エーザイも同年1月から、服薬時間を知らせ、患者が薬のケースを取り出すとその情報が家族や医療従事者に通知される服薬支援機器「eお薬さん」を、薬局や医療機関、介護施設向けに販売。機器には1週間分の薬をセットすることができ、時間になると1回分の薬が入ったケースが出てくるとともに、音声と画面表示で服薬を促します。

 

アプリで副作用マネジメント 服薬適正化

一方、中外製薬は抗がん剤の適正な服薬を支援するアプリを開発。日本エンブレースが展開する医療従事者専用SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「MedicalCareStation」と連動させての試験的利用を今年始めました。

 

外来でのがん治療では、次の受診までの間に副作用が重くなり、薬を飲み続けられないケースがあるといいます。アプリを通じて患者が服薬状況や気になる症状をタイムリーに医療従事者に知らせることができれば、副作用マネジメントが必要な患者の適正な服薬につながると中外は期待しています。実験でアプリの有用性や課題を検証し、利用を広げていきたい考えです。

国内製薬企業によるIT技術を活用した服薬支援の取り組み

日本製薬工業協会のシンクタンクである医薬産業政策研究所のまとめによると、英グラクソ・スミスクラインやスイス・ノバルティスなどが喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬の服薬を管理する“スマート吸入器”を、米イーライリリーが注射の回数や量を記録するスマートフォン連動型のインスリン注射器を開発するなど、ITを活用した服薬支援の試みは海外の製薬大手でも進んでいます。

 

世界各国で医療費の増大が課題となり、薬の費用対効果も問われる中、「正しく飲ませる」ことは、製薬企業の新たな戦略として広がっていくかもしれません。

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