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「特例拡大再算定」効果はてきめん―医療費削減、薬価頼み

更新日

2016年度の薬価制度改革で導入された、販売額の極めて大きい医薬品の薬価を大幅に引き下げる「特例拡大再算定」。その医療費削減効果は、やはりてきめんだったようです。

 

16年度の概算医療費が、前年度から0.4%、額にして0.2兆円減ったことが、厚生労働省のまとめで明らかになりました。特例拡大再算定で薬価が30%以上下がった「ソバルディ」「ハーボニー」といったC型肝炎治療薬の薬剤料が大幅に減ったことが、医療費全体を押し下げました。

 

概算医療費14年ぶり減少 薬剤料が大幅減

厚生労働省は9月15日、2016年度の概算医療費(労災や全額自費診療は含まず。医療費全体の98%に相当)は41.3兆円で、前年度から0.4%(0.2兆円)減少したと発表しました。概算医療費が減少したのは、診療報酬の大幅な引き下げが行われた02年度以来、14年ぶりです。

概算医療費の推移

16年度、医療費の減少に大きく影響したのが、薬剤料の大幅な減少です。

 

概算医療費の内訳を見てみると、「医科」「歯科」の診療費が計33.6兆円で前年から0.5%増えた一方、「調剤」の医療費は7.5兆円で4.8%減少。このうち薬剤料は5兆5778億円(前年度比6.7%減)で、11.3%増と大きく伸びた前年度から一転、大幅なマイナスに転じました。

薬剤料の推移

 

「抗ウイルス剤」薬剤料は35%減

厚生労働省は16年度の医療費の減少について、
「15年度はC型肝炎治療薬等の抗ウイルス剤の薬剤料の大幅な増加等により高い伸びとなったのに対し、16年度は診療報酬改定のほか、抗ウイルス剤の薬剤料の大幅な減少等により、一時的にマイナスになったと考えられる」
と分析しています。高額なC型肝炎治療薬を含む「抗ウイルス剤」の薬剤料が大幅に減ったことが、医療費全体を押し下げました。

 

下のグラフは、14~16年度の月別の「抗ウイルス剤」の薬剤料の推移を表したものです。ギリアド・サイエンシズの「ソバルディ」「ハーボニー」など高額なC型肝炎治療薬が相次いで発売された15年度は4139億円と前年度の2.5倍まで膨らんだのが一転、16年度に入ったのを境に急激に減少。16年度は前年度比34.6%減の2706億円まで縮小しました。

「抗ウィルス剤」の月間薬剤料の推移。

 

薬価引き下げの抗ウイルス剤 0.5%の医療費削減

16年度の薬価制度改革では、年間販売額が極めて大きい医薬品の薬価を最大50%引き下げる「特例拡大再算定」が新たに導入されました。16年度改定で対象となったのは4品目で、このうち「ソバルディ」と「ハーボニー」は31.7%の薬価引き下げ。「ダクルインザ」「スンベプラ」(いずれもブリストル・マイヤーズスクイブ)や「ヴィキラックス」(アッヴィ)も市場拡大再算定の対象となり、13~14%薬価が引き下げられました。

16年度薬価改定で「特例拡大再算定」を受けた4品目

クインタイルズIMSの調べによると、特例拡大再算定の対象となった「ソバルディ」の16年度の売上高は52.7%減、「ハーボニー」は38.8%減と大幅に減りました。12週間の治療で患者のほとんどが治癒するため、使用が急速に広まり、ピークアウトも早いという特性はあるものの、薬価の引き下げが大きく影響したことは間違いありません。

 

厚労省は「抗ウイルス剤」の薬剤料の減少が医療費全体に与えた影響をマイナス0.5%程度と見ています。売れすぎた薬は値段を大幅に下げる――。製薬業界の反対の中導入された特例拡大再算定は、医療費削減の“特効薬”となったようです。

 

薬価 抜本改革へ…引き下げメニュー目白押し

医療費削減の“頼みの綱”となった薬価をめぐっては、2018年度に向けて制度の抜本改革に向けた議論が進んでいます。

 

現在、議論されている主な項目をあらためて挙げてみると、

▽市場実勢価格との乖離の大きい品目に限った薬価の毎年改定
▽適応拡大などに伴って販売が急増する医薬品の薬価を、年4回ある新薬の薬価収載の機会を使って見直す新たなルールの導入
▽新薬創出加算の対象品目の絞り込み
▽費用対効果評価の本格導入

など、薬価の引き下げにつながるメニューが目白押し。今年2月には、薬価改定の時期ではないにもかかわらず、「医療保険財政への影響が極めて大きいことから、緊急的に対策を講ずる」(厚労省)として、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の薬価が半額に引き下げられ、製薬業界の強い反発を招きました。

 

政府は社会保障費の自然増を年5000億円程度に抑える目標を掲げていますが、厚生労働省の18年度予算概算要求は自然増を6300億円程度と見込んでおり、年末の予算編成に向けて目標をオーバーする1300億円をどう捻出するかが焦点となっています。18年度薬価制度改革の柱は年末に決まりますが、この1300億円という数字もにらみながら、「イノベーション評価」と「国民皆保険維持」の間で激しい議論が行われることになります。

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