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JAK阻害薬 IBD治療薬としての可能性…ゼルヤンツ 米で潰瘍性大腸炎への適応拡大を申請|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはJAK阻害薬。米ファイザーの「ゼルヤンツ」が潰瘍性大腸炎への適応拡大を米FDAに申請しました。JAK阻害薬の炎症性腸疾患(IBD)治療薬としての可能性は?

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

ゼルヤンツの適応拡大 FDAが申請を受理

2017年7月13日、米ファイザーはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ゼルヤンツ」(トファシチニブ)の潰瘍性大腸炎に対する適応拡大の申請が、米FDA(食品医薬品局)に受理されたと発表した。

 

ファイザーは順風満帆だ。ゼルヤンツは今年3月、5年前の最初の申請では承認に至らなかった欧州で、関節リウマチの治療薬として承認を取得した。乾癬性関節炎への適応拡大では、FDA諮問委員会が承認を支持。さらに、米イーライリリーのJAK阻害薬バリシチニブがFDAの承認獲得に失敗したことで、米国での市場競争も免れた。これはファイザーにとって歓迎すべきニュースだ。FDAが潰瘍性大腸炎への適応拡大を承認するかどうか判断する来年3月まで、ファイザーは我が世の春を謳歌することになる。

 

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安全性への懸念は解消方向に

ゼルヤンツが潰瘍性大腸炎に対する承認を得られるかどうか、現時点ではわからない。

 

当初、関節リウマチへの承認を得るにあたってゼルヤンツが手こずった安全性の懸念は、実臨床での使用と継続的な試験から長期データと使用経験が得られるにつれ、解消に向かっていると思われる。重大な心血管イベントの発生率を上昇させないことが明らかになっており、JAK阻害薬服用患者に見られる脂質レベルの上昇に対する懸念もやわらぐ可能性がある。

 

潰瘍性大腸炎を対象としたゼルヤンツの臨床第3相(P3)試験「OCTAVE Induction」「CTAVE Sustain」から得られた有効性のデータは、P2試験から期待されたほど目覚ましいものではなかったが、奏効率と寛解率ではプラセボを明らかに上回り、現在販売されている生物学的製剤と比べても遜色なかった。安全性への懸念がやわらぎ、プラセボとの比較で有効性が示されたことを考え合わせると、潰瘍性大腸炎に対する適応拡大はおそらく承認されるだろう

 

クローン病ではつまづき 追うギリアドのfilgotinib

ゼルヤンツは、潰瘍性大腸炎の臨床試験で良好な成績を得たものの、炎症性腸疾患(IBD)のもう1つの市場であるクローン病ではつまずいた。

 

用量設定のP2試験でプラセボ群の応答率が異常に高いという不本意な結果を受け、ファイザーはクローン病に対するゼルヤンツの開発から手を引いた。クローン病は潰瘍性大腸炎より患者数が少ないとみられるが、経口メサラミン(日本ではメサラジン)などIBDの標準的な治療薬は、一般的にクローン病には効果がない。これは、患者がかなり早い段階でより強力な免疫抑制剤や生物学的製剤に切り替えることを意味している。

 

この市場では、米ギリアドとベルギーのGalapagos NV社が共同開発するもう1つのJAK阻害薬filgotinibの開発が加速している。filgotinibのP2試験データは寛解率がプラセボを上回るなど有望で、クローン病で2つ、潰瘍性大腸炎でも2つのP3試験が進行中だ。filgotinibが両方の疾患で承認を取得することが、柱となる治療薬を求める消化器内科医にとって魅力的なものとなるならば、filgotinibは優位となるだろう。

 

潰瘍性大腸炎とクローン病を対象とするfilgotinibの臨床試験の主要データが報告されるのは2019~2022年。つまり、ファイザーにとっては、もう1つのJAK阻害剤がIBD市場に参入してくるまで数年しか残されていないのだ。

 

消化器内科医の期待は高い

医師と保険者はいずれも、JAK阻害剤に大きな期待を寄せている。

 

Decision Resources Groupのレポート(Access and Reimbursement | CD/UC | US)によると、米国の32の支払機関と消化器内科医100人を対象に行った調査で、潰瘍性大腸炎とクローン病で最も影響力が見込まれる新たな治療法として、支払機関の大半が潰瘍性大腸炎ではゼルヤンツを、クローン病ではfilgotinibを挙げた。また、医師の3分の2以上が、ゼルヤンツとfilgotinibが使えるようになれば1年以内に処方するだろうと述べている。

 

医師と支払機関が新たな経口療法をここまで切望しているのも、潰瘍性大腸炎とクローン病、いずれのニーズにも市場がまだ応えきれていないためで、驚くべきことではない。メサラミンはクローン病にはほとんど効かないし、潰瘍性大腸炎でも効果が低く、患者の多くは治療に満足していない。一方で、免疫抑制剤やステロイド剤には長期使用のリスクや副作用が伴う。

 

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TNF-α阻害薬で効果が得られない患者への選択肢に

気になるのは、注射の生物学的製剤に切り替える前に、経口薬治療の追加的な選択肢としてJAK阻害剤を使用するのか、あるいはTNF-α阻害薬が効かない場合に備えてこの新規療法を使わずに残しておくのかだ。

 

Decision Resources Groupの調査では、消化器内科医は少なくともはじめのうちは後者を選ぶ可能性が高いことが示唆された。われわれがレポート(Access and Reimbursement | Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus| US)で発表したデータによると、関節リウマチ患者に5年間ゼルヤンツを使ってきたリウマチ専門医でさえ、TNF-α阻害薬に治療抵抗性を示す場合に備えて通常は使わずにとっておくという。

 

JAK阻害薬はIBD治療薬市場で一人勝ちとはならない。潰瘍性大腸炎とクローン病の両方で武田薬品工業の「エンティビオ」(ベドリズマブ)と、クローン病では米ジョンソン&ジョンソンの「ステラーラ」(ウステキヌマブ)と競合する。

 

それでも、われわれの調査が示唆するように、JAK阻害薬はクローン病と潰瘍性大腸炎で成功を収めるだろうし、JAK阻害薬を幅広い疾患に活用することを目指すファイザー、ギリアド、Galapagosにとって、IBDに目を向けることは適応拡大へのまっとうな選択と言える。

 

(原文公開日:2017年8月18日)

【AnswersNews編集長の目】

細胞内のシグナル伝達経路の1つであるJAK経路を遮断することで、免疫細胞の遊走やサイトカインの産生を促すシグナル伝達を阻害し、炎症を抑えるJAK阻害薬。日本では関節リウマチ治療薬として「ゼルヤンツ」(トファシチニブ)と「オルミエント」(バリシチニブ)が承認されており、アステラス製薬のペフィシチニブとギリアドのfilgotinibがP3試験を行っています。

 

IBDの適応では、ゼルヤンツが潰瘍性大腸炎でP3、filgotinibが潰瘍性大腸炎とクローン病でP3を実施中。一方で、オルミエントはアトピー性皮膚炎と全身性エリテマトーデスへの適応拡大に向けたP2試験を行っています。

 

さまざまな炎症性疾患への可能性を秘めるJAK阻害薬。記事にもある通り、安全性への懸念から市場浸透には時間がかかっていますが、近い将来、活用の幅は大きく広がっていきそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupの下記レポート:

・Access and Reimbursement | CD/UC | US

・Access and Reimbursement | Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus| US

をもとに同社アナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。レポートに関する問い合わせはこちら

 

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