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新たながん免疫療法薬 「CAR-T」の世界初承認が間近―画期的治療も課題多く

新たなカテゴリーのがん免疫療法薬の承認が間近に迫っています。

 

米FDA(食品医薬品局)の諮問委員会は今月、スイス・ノバルティスが申請したCAR-T細胞治療薬の承認を全会一致で支持。FDAは今秋までに承認の可否を最終判断する見通しで、CAR-T細胞治療薬が世界で初めて承認される可能性が高まりました。

 

患者の免疫細胞を取り出し、がん細胞を攻撃しやすいように遺伝子改変を加えて再び体内に戻すこの治療法。高い有効性が期待される一方、供給体制や高額な治療費など、多くの課題が横たわっています。

 

FDA諮問委 全会一致で「CTL019」の承認支持

米FDA(食品医薬品局)の諮問委員会は7月12日、スイス・ノバルティスが申請していたCAR-T細胞治療薬「CTL019」の承認を支持するとの見解を全会一致でまとめました。FDAが設定した同薬の審査終了目標日は今年10月3日。諮問委員会の見解に拘束力はありませんが、FDAが承認の可否を判断する大きな材料となります。諮問委員会が承認を支持したことで、「CTL019」が世界初のCAR-T細胞治療薬として承認される可能性が高まりました。

 

CAR-Tは、キメラ抗原受容体T細胞の略。免疫細胞の1つであるT細胞を患者から採取し、がん細胞の表面に発現する抗原を標的として認識するよう遺伝子改変を加え、再び患者の体内に戻す治療法です。免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすい状態にすることで、抗腫瘍効果を発揮します。

 

ノバルティスは今年はじめに「CTL019」を米国で申請。米FDAから「ブレークスルーセラピー」(画期的治療薬)の指定を受け、優先審査の対象となっていました。今回承認が支持された適応は「小児・若年成人の再発・難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病」。ノバルティスのプレスリリースによると、B細胞急性リンパ芽球性白血病は15歳未満の小児のがん診断の約25%を占めるといいます。

 

日本ではP2段階 第一三共も名乗り

2016年12月の米国血液学会で発表された、小児・若年成人の再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病を対象とした国際共同臨床第2相(P2)試験「ELIANA」では、「CTL019」を輸注した患者の82%(50人中41人)が、輸注3カ月後に完全寛解または血球の完全な回復を伴わない完全寛解を達成しました。

 

安全性では、グレード3またはグレード4のサイトカイン放出症候群(CRS)が48%、脳症やせん妄といったグレード3の神経・精神事象が15%など。CRSは患者の体内で組み換え細胞が活性化した場合に発症するとされ、CAR-T細胞治療薬では既知のものといいます。CRSによる死亡例はありませんでした。

 

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CAR-T細胞治療は、「オプジーボ」など免疫チェックポイント阻害薬で急速に開かれているがん免疫療法の中でも、特に開発が活発化している分野。海外のバイオベンチャーを中心に、ノバルティスや米ファイザーといったメガファーマも絡み、開発競争が激しくなっています。

 

ノバルティスは「CTL019」について、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応でも開発中。欧米では今年後半の承認申請を予定しており、日本ではB細胞性急性リンパ芽球性白血病とともにP2試験の段階にあります。日本ではこれらを予定適応症として希少疾病用医薬品に指定されています。

 

日本企業では今年1月、第一三共が米バイオベンチャーのカイトファーマから、悪性リンパ腫を対象に同社が開発中の「KTE-C19」を導入。日本での開発・製造・販売の独占的権利を獲得しました。同薬は「CTL019」と同じくブレークスルーセラピーの指定を受けており、米国ではカイト社が2016年12月に申請済み。FDAによる審査終了目標日が今年11月に迫っています。

 

治療費は5000万円超か

免疫チェックポイント阻害薬に続く画期的な治療法として期待を集めるCAR-T細胞治療薬ですが、いくつか課題も抱えています。

 

1つは治療費が高額になることです。「CTL019」を含むCAR-T細胞治療薬には50万ドル(1ドル=100円換算で5000万円)の費用がかかると言われています。さらに、治療で失われるB細胞を補うため、免疫グロブリンの投与も必要です。これは、「CTL019」をはじめとするCAR-T細胞治療薬の多くが、B細胞上に発現するCD19を標的として認識するよう遺伝子改変されているため、治療によって正常なB細胞まで除去されてしまうからです。ブルームバーグの報道によれば、免疫グロブリンの投与には1万ドル(同100万円)の費用がかかるといいます。

 

英国の調査会社エバリュエートの編集チームEP Vantegeが2016年に発表したレポートでは、

効果の持続性
サイトカイン放出症候群や神経毒性をはじめとする副作用
CAR-T細胞の製造過程

など、CAR-T細胞治療が直面するいくつもの課題を指摘しています。

 

ノバルティスが7月に発表したELIANA試験の追跡データの結果によると、奏効例の輸注6カ月後の無再発率は75%、12カ月後は64%。生存率は6カ月後が89%、12カ月後が79%でした。

 

一方、同試験に登録された患者88人のうち、7人は十分量のCAR-T細胞を作成することができず、輸注を受けられませんでした。治療に必要な細胞の製造は重要なポイントで、ノバルティスはすでに数百人分の治験薬を製造した経験を強調し「これまでも製造に投資しており、今後も続けていく」とコメントしています。

 

実用化が近付いたとはいえ、CAR-T細胞治療薬はまだ発展途上。EP Vantageのレポートは、CAR-T細胞治療が抱える多くの課題を挙げた上で「まだ道のりは長い。業界は最初の適応症で肯定的なデータを生み出し、CAR-Tが商業的に実行可能であることを証明する必要がある」と指摘しています。目前に迫った世界初承認は、ゴールではなく、新たなスタートだと言えるでしょう。

 

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