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「MSL」じわり存在感 1社平均25人に…業務・評価 模索続く  JAPhMed調査 

更新日

高度な医学的・科学的知識を武器に、キーオピニオンリーダーのマネジメントやメディカル戦略の策定などを担うメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)が、じわじわと存在感を増しています。

 

7月1日、日本製薬医学会(JAPhMed)の年次大会で発表された調査結果によると、国内に拠点を置く製薬企業1社あたりの平均MSL数は約25人となり、2011年の調査から2.2倍に増加。職種として着実に定着してきていることがうかがえる一方、担う業務は少しずつ変化していることも明らかになりました。評価指標も含め、各社とも模索を続けているようです。

 

1社あたりMSL数 6年で2.2倍に

7月1日、東京・日本橋で開かれた日本製薬医学会(JAPhMed)の年次大会で、同学会メディカルアフェアーズ(MA)部会が国内に拠点を置く製薬企業を対象に行ったメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)に関するアンケート調査の結果が発表されました。

 

調査は2年に1度行われているもので、今回で4回目。今年4月19日~5月19日、製薬企業47社を対象に行い、内資系企業19社、外資系企業12社の計31社から回答を得ました(回答率66%)。

 

JAPhMedの定義によれば、MSLとは「製品の販売活動を担当する職種から独立し、医学的・科学的に高度な専門性・学術知識を持ち、社外・社内で医学的・科学的な面から製品の適正使用・製品価値の至適化などを推進する職種」。国内では外資系企業で取り組みが先行していましたが、情報提供の高度化や研究支援の透明化が求められるようになってきたことを背景に、内資系企業でもMA部門の設置が加速。MA部門が手がける業務を中心的に担うMSLも増加しています。

 

最も多い企業は110人

今回発表された調査結果によると、回答があった企業に所属するMSLは1社あたり24.8人。15年の前回調査から0.8人増加し、調査が始まった11年(11.4人)と比べると2.2倍となりました。社名は公表されていませんが、MSL数が最も多い企業では110人に上り、次いで62人、52人、50人と続きました。

1社あたりMSL数と国内MR数に対する比率の推移

各社の国内MR数に対するMSL数の比率は、最も高い企業で25%。平均は4.1%でした。15年(2.2%)からほぼ倍増し、11年からは3ポイント上昇。MR数が減少傾向にある中、情報提供の新たな担い手としてMSLが存在感を増していることがうかがえます。

MSLの在籍数の多い企業・MRに対するMSLの比率が高い企業

MSLの所属部門では、65.7%でMA部門が最多。次いで多かったのは研究開発部門(20.0%)でした。内資系企業に限ってみると、15年は研究開発部門と答えた企業が40%を超えていたものの、今回は22.2%に低下。内資系企業でもMA部門の設置が進んでいることが、こうした数字からも分かります。アンケートに回答した企業の多くが、今後もMSLの増員を予定していると回答しました。普及により一層拍車がかかっていくことは間違いなさそうです。

 

高まる「メディカル戦略関連業務」の重要性

MSLの増員傾向が強まる一方、企業ごとに大きく違うとされるのがMSLの業務内容。調査ではMSLの役割と責任の範囲についても聞いており、「MSLが主導し、責任を負う」と答えた企業が半数を超えた業務をまとめたのが下の図です。

MSLの業務

MSLの主導・責任と答えた企業が最も多かった業務は、ソートリーダー(TL)やキーオピニオンリーダー(KOL)のマネジメント。次いで多かったのは、TL/KOLから入手した情報の社内へのフィードバックで、▽アンメット・メディカル・ニーズの収集・解釈▽メディカルアドバイザリーボードの立案・実施▽外部顧客への医学・学術情報の提供――と続きました。

 

「メディカルアドバイザリーボードの立案・実施」と「メディカル戦略の策定」は、2015年の前回調査ではMSLの主導・責任と答えた企業は半数を下回っていました。一方、前回調査で半数を上回っていた「最新医学情報を収集し、社内関連部署に提供」と「医師自主研究に関するコンサルテーション・アドバイス」は50%を割りました。MSLの役割も変化しており、特にメディカル戦略に関連した業務が重視される傾向が見て取れます。

 

Ph.D保有者の採用が増加

MSLの役割の変化は、MSL自身が持つ学位や経歴にも表れていいます。MSLとしてPh.Dを採用している企業は、前回調査では18.8%だったのに対し、今回の調査では30%を超えました。特に外資系企業では40%がPh.Dを採用。自社のMSLの社外での経歴を聞いたところ、大学(アカデミア)や研究機関、病院といった回答も見られました。今後MSLを増員予定の企業では、薬剤師資格保有者に加えて、内資系では医学博士や薬学博士を求める企業が多くなっています。

 

評価指標は試行錯誤

営業部門から独立し、売り上げ目標を持たないMSLですが、そのパフォーマンスはどういった指標で評価されているのでしょうか。

 

回答企業にMSLのKPI(重要業績評価指標)を尋ねたところ、最も多かったのは「KOLの訪問回数」。「KOLの情報提供に対するフィードバック」と答えた企業も多く、KOLに関連した指標を採用している企業が多くを占めました。内資と外資で違いもあり、内資では▽臨床研究支援数▽新規KOLの発掘数▽論文の投稿数――といった回答があり、外資では学会・イベントの支援数をKPIに置いている企業が多くありました。

MSLの評価指標

そのほかでは「外勤比率」や「面会時間」「医師との関係性構築のための計画とその達成度」「得られたインサイト数」「KOLとの連携度」といった回答も。年次大会で調査結果を報告したJAPhMed・MA部会の水野裕久氏は「KPIという点では各企業とも試行錯誤しており、いろんな評価指標を考えているのではないかという傾向が出ている」と分析しました。

 

国内の製薬企業で導入が進み、医師らの認知度も高まってきたMSL。一方で、MRとの棲み分けや高度人材の確保、教育のあり方など課題も少なくありません。MSLに関する各社の社内制度に対する認定制度を運用しているJAPhMedは、新たにMSLの教育カリキュラムを策定。年次大会で公表しました。MSLを重視する製薬企業が増える中、役割を確立し、質を高めていくことが求められていると言えるでしょう。

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