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[新旧比較]20年ぶりに記載要領見直し 医薬品の添付文書はどう変わる?

更新日

医療用医薬品の安全で適切な使用に欠かせない基本的な情報が詰め込まれた添付文書。その「書き方」を定めた記載要領が20年ぶり改訂され、2019年4月から適用されることになりました。医療用医薬品の添付文書はどう変わるのか、改訂前後を比べました。

 

「原則禁忌」「慎重投与」を廃止

厚生労働省は6月8日、製薬企業が医療用医薬品の添付文書を作成する際の指針となる「医療用医薬品の添付文書等の記載要領」の改訂を製薬業界団体などに通知しました。現行の記載要領は1997年に定められたもので、見直しは20年ぶりとなります。

 

今回の改訂の柱は
▽「原則禁忌」「慎重投与」の廃止
▽「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設
▽「警告」以降の全項目に通し番号をつけ、該当がない項目は欠番とする
の3点です。

 

今回の改訂の主なポイントを図にまとめました。

添付文書の記載項目の主な見直し点

見直しの1つ目のポイントは、現行の添付文書に存在する「原則禁忌」と「慎重投与」の廃止です。

 

廃止の「原則禁忌」解釈分かれる

「原則禁忌」は、その医薬品を使用しないことを原則としながらも、ほかに治療法がないなどの理由で特に必要とする場合には慎重な使い方をすべき患者について記載している項目。例えば、肺がん治療薬「イレッサ」の場合、「妊娠または妊娠している可能性のある婦人」は原則禁忌とされています。

 

ところがこれには、「原則として妊婦には投与してはいけない」「慎重に使えば妊婦にも投与してよい」という2つの解釈が成り立ち、医療現場からも「わかりにくい」という声が上がっていたといいます。厚労省の研究班が行った調査でも、原則禁忌を「禁忌と同等」と捉える医師・薬剤師と、「慎重投与と同等」と捉える医師・薬剤師がほぼ半数ずついることが明らかとなり、厚労省は解釈が大きく分かれる項目を添付文書に記載すべきではないと判断しました。

 

「慎重投与」については、欧米の添付文書に同じような項目がない上、「高齢者への投与」「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」「小児等への投与」とも記載内容が重複することから、今回、廃止されることになりました。

 

新設の「特定の背景を有する患者に関する注意」とは

「原則禁忌」と「慎重投与」が廃止されるかわりに、新たに設けられるのが「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目。これら見直しの2つ目のポイントです。

 

この項目には、現行の添付文書にも記載がある「高齢者への投与」「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」「小児等への投与」が集約されるほか、「合併症や既往歴等のある患者」「腎機能障害患者」「肝機能障害患者」といった項目も新設。現行では「原則禁忌」や「慎重投与」に書かれている内容もここに移し、注意すべき患者集団として整理して示されることもなります。

 

現行の添付文書では、投与にあたって注意が必要な患者が添付文書のあちこちに散らばって記載されていました。「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に情報が集約されることで、より注意喚起がされやすくなると期待されます。ちなみに、米国の医療用医薬品添付文書でも、「Use in special Population」として注意すべき患者を一括して記載しています。

 

「通し番号」で情報の有無わかりやすく

3つ目のポイントは、「警告」以降の各項目に通し番号をつけ、該当する情報がない場合には欠番とすることです。

 

現行ではそれぞれの項目と番号は紐付けられておらず、例えば「1.慎重投与」「2重要な基本的事項」「3.相互作用」「4.副作用」としている医薬品もあれば、相互作用が特になく「1.慎重投与」「2重要な基本的事項」「3.副作用」としている医薬品もあります。

 

見直し後はこのように該当する項目がない場合でも番号を繰り上げず、「4.副作用」のまま記載することになります。こうすることで、知りたい項目を探しやすくし、その項目に情報があるのかないのかがすぐに分かるようにするのが狙いです。

 

適用は19年4月 5年間の経過措置

記載要領の改訂は2019年4月1日から適用され、販売中・承認申請中の医薬品には5年間(2024年3月31日まで)の経過措置が設けられました。

 

医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されている医療用医薬品の添付文書は、2016年3月末時点で1万4843件。見直しは膨大な作業となります。

 

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