MSL、MA、研究職などへの就職
ポスドクの経験/Ph.Dの学識を活かして企業で働く
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最近、ポスドクやPh.D保有者を求める企業が増えている
製薬業界で最近、ポストドクター(ポスドク、博士研究員)の採用ニーズが高まっています。
ポスドクとは、大学院博士課程修了後、大学や公的研究機関に任期付きで採用されている研究員のこと。任期付きという不安定な身分ですので、雇用の安定を求めて企業で働くことを希望する人も多くいますが、企業への就職は難しいと言われてきました。
しかし、製薬業界では、環境の変化や企業の戦略により、理系のサイエンスバックグラウンドを持った人材が求められるようになってきています。そこで企業が注目しているのがポスドク。研究職にとどまらず、さまざまな職種でポスドクを求める企業が増える傾向にあります。
特に製薬と関係の深い医学や薬学、生物といったバイオ系ポスドクや、遺伝子や細胞などを専門としているポスドクは有利。これまでの研究活動で培った経験や専門性を活かしながら、安定した仕事に就きたいと考えているポスドクにとっては、今がいいタイミングと言えます。
企業がポスドクやPh.D保有者を求める理由
企業がポスドクを求めるのには、次のような理由があります。
バイオベンチャーの活動が活発化している
ベンチャー企業が育たないと言われてきた日本の製薬業界ですが、国の後押しもあってバイオベンチャーの数は増加傾向にあります。
大手製薬企業もベンチャーの持つ独自技術に高い関心を寄せており、共同研究や技術提携の動きも盛ん。再生医療の実用化を推進する国の方針もあり、この分野でもバイオベンチャーの果たす役割は大きくなっています。
こうしたことから、バイオベンチャーは研究者やテクニシャンの採用に積極的です。アカデミアでの研究経験を持つポスドクは即戦力として期待が高く、ポスドク歓迎の求人も増加傾向にあります。もちろん、研究活動が活発化している大手製薬企業の中にも、ポスドクを求めている企業はあります。
医師への情報提供にも高い専門性が求められている
製薬業界では、MRによる医師への接待行為が2012年に原則禁止されてから、医薬品に関するより専門性の高い情報提供が求められるようになりました。そこで最近、大手を中心に製薬企業が積極的に採用しているのが、メディカルサイエンスリエゾン(MSL)やメディカルアフェアーズ(MA)という職種です。
MSLやMAは、KOL(キーオピニオンリーダー)に対する情報提供を中心に、製品開発に関するエビデンスの構築、臨床研究・論文投稿の支援などを行います。KOLと対等に意見を交わす必要があるため、医学や薬学、科学に関するハイレベルな知識は必須。高い専門性を持つ人材として、ポスドクへの需要が高まっています。
ポスドクやPh.D保有者の活躍の場は研究だけではない
ポスドクが活躍できる職種は、研究職に限りません。
メディカルサイエンスリエゾン(MSL)
MSLは研究職以外でポスドクが活躍できる代表的な職種のひとつ。これまでの研究活動で培った専門性を大いに活用することもできますし、医学や薬学に関する最先端の情報に日々触れられるため、やりがいも感じられるでしょう。
MSLは、KOLをはじめ社内外のさまざまな職種の人と関わっていく仕事ですので、コミュニケーション力が重要なスキルの一つ。人と話すのが苦にならないという人に向いていると言えます。日本ではまだ歴史の浅い職種ですので、企業側は未経験者の採用にも積極的です。
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臨床開発モニター(CRA)
医薬品の治験を支えるCRA(臨床開発モニター)も、ポスドクが活躍できる職種です。CRAの主な仕事は、治験がプロトコルに沿って適切に実施されているか監視すること。製薬企業が治験業務をCRO(医薬品開発業務受託機関)に外部委託するケースが増えているため、未経験採用も活発です。
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テクニシャン
研究活動で培った経験をよりダイレクトに活かしたいという人には、テクニシャン(研究補助者)という選択肢も。実験や培養、分析などの業務を通じて研究を補佐するこの仕事は、バイオ医薬品の普及や再生医療研究の加速により、細胞培養を中心にニーズが高まっています。「人と話すよりも手先を動かしたい」「実験に没頭したい」という人には向いているでしょう。
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もちろん、研究職でポスドクを求めている企業もあります。
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このほかにも、ファーマコビジランス(PV)やドラッグインフォメーション(DI)、医療系広告代理店で医薬品のプロモーションに携わるメディカルプランナーやメディカルコピーライターなど、活躍の場は多岐にわたります。
ファーマコビジランス(PV)
医薬品の安全性を担保するため、製薬企業やCROで副作用情報を評価する職種。業務は、MRからの報告や文献を通じた副作用情報の収集・評価、規制当局への報告や添付文書の作成・改訂など。医薬品の安全な使用には欠かせない仕事です。
ドラッグインフォメーション(DI)
医療従事者やMRからの問い合わせに応じて、医薬品に関する情報を提供する仕事。文献を通じた情報収集や資料作成、MRへの教育を担当することもあります。