
2024年のコントラクトMR(CMR)稼働人数が、前年に比べ実質的に減少したことが日本CSO協会の調査で明らかになりました。削減が加速する製薬業界全体のMR数に占める割合(アウトソーシング率)は0.5ポイント増の8.7%に上昇しましたが、目標とする「欧米並みの10%」に向け、CSOビジネスの機能拡充など事業のすそ野拡大が求められています。
実質減は「一時的な調整局面」
調査は24年10月時点。前年の調査はCSO協会加盟5社が対象でしたが、今回は賛助会員の2社を加えた7社に広げました。これにより、全CMRの大半を網羅できたとしています。
CMR数は23年に比べ4人減の4085人とほぼ横ばい。新型コロナウイルス感染症ワクチンでの稼働人数が約200人減ったことが主な要因で、稼働領域別で見た「ワクチン」は前年比44.3%減と落ち込みました。協会は調査結果を発表した6月27日の記者会見で、24年の減少は「一時的な調整局面」との見方を示しました。
ただ、調査対象企業は増えており、実質的には減少です。新たに加わった2社のCMR数は明らかにされておらず、具体的な影響度は不明ですが、一時的な調整なのか、製薬企業などのクライアント側で活用意欲に変化が出ているのか、注目されるところです。
製薬企業以外にも活用広がる
CMRの活用企業数は17社増の202社となり、初めて200社を超えました。押し上げたのは「MR数100人未満」に分類される最も規模の小さい企業群で、その数は全体の6割にあたる122社。バイオベンチャーや医療機器メーカーのほか医療機関(病院・薬局)なども含まれ、製薬企業にとどまらずヘルスケア業界への浸透が進んでいます。全体としてCMR数は減少したものの、企業側の需要は衰えていないように見えます。
もっとも、その大部分を占める製薬企業に限ると、3790人から3726人へと64人減少しています。内資と外資でCMRの稼働人数を比べてみると、前回調査の内資2002人・外資1818人から内資1788人・外資1908人と逆転。今回は内資の減少が顕著でした。製薬企業での減少を医療機器やヘルスケア分野が補う形です。
アウトソーシング率10%は「3~4年で達成」
アウトソーシング率は8.7%と過去最高を記録。業界の総MR数は1年間で3000人近く減少しており、CMRの存在感が相対的に増したと言えるでしょう。アウトソーシング率の算出にあたっても調査対象が2社増えた影響を加味する必要がありますが、協会が目指す「欧米並みの10%」の目標については、近年の着実な上昇ぶりから向こう3~4年で達成できるとの見方を変えていません。
協会の昌原清植会長(MIフォース社長)は「CMRが一気に増加するというより、分母となる総MR数が減っている。(今回の調査実施以降)さらに大規模な人員調整を行った企業もあり、今のままの流れでいくのではないか」と話しました。早期退職では武田薬品工業が今年2月末に670人、田辺三菱製薬も昨年末に1087人(一部自然減を含む)減少しており、MRも多く含まれていると見られます。
自販トータル支援も
加速する総MR数の減少はCSOビジネスの拡大を後押ししています。しかし、それは製薬企業が営業部門のコストを削減する中で進むことであり、追い風とは言い切れないところもありそうです。そのため、今後の拡大に向けては提供する機能を拡充し、事業の範囲を広げていくことが欠かせません。
CSO各社ではすでに、従来型の人員派遣に加え、新たなサービスを模索する動きも始まっています。例えば、営業リソースを持たないバイオベンチャーの自社販売をトータルで支援するケースなどが出てきています。働き方改革によって、女性MRのライフイベントに対応した形態も増えてきそうです。非人材型サービスでは、戦略立案に関するコンサルティングを手掛け始めるなど、事業のすそ野は広がりつつあります。
若手の採用など課題
こうした企業側のニーズをCSO自らがビジネスチャンスとして取り込んでいけるかが、今後の事業拡大のかぎになりそうです。「日本のMRの生産性はまだ改善が必要。多様な人材やサービスを提供することで、アウトソーシング率10%に向けて進んでいく」。協会の片岡恵連理事(サイネオス・ヘルス・バイスプレジデント)はこう話します。
課題もいくつかあります。ひとつは若手の採用が広がっていないことです。CMRの年齢構成は20~30代が減少し、40~50代が増加する傾向が続いています。スペシャリティ領域の製品が主体になるにつれ企業側が即戦力としての経験を重視するようになっているのに加え、製薬企業を早期退職したMRが労働市場に供給されているからです。年齢構成は「逆三角形型」となっており、協会は若い人材の採用や教育に取り組む必要があるとしています。
企業ニーズと人材のマッチング難易度は上昇
企業側の認識を変えてもらうことも重要です。CSOをいまだに欠員補充としか見ていないクライアントもあるため、サービス内容が多様化していることを訴え、若手人材が活躍できるステージを設けていく考えです。企業側は年齢や性別など、採用する人材の属性を重視します。一方でCMRは勤務地の限定を希望したり、親の介護といった事情を抱えていたりすることがあり、両者のマッチングは難易度が上がってきています。
CSOとしては今後、企業ニーズの変化を先回りできるレベルに対応速度を上げることが求められているようです。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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