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東和薬品 新事業創出へ動き活発化…認知症や介護などに相次ぎ投資

更新日

国内後発医薬品3番手の東和薬品が、新規事業の創出に向けた動きを活発化させています。本業の医薬品ビジネスの枠を超え、介護や認知症の予防・診断といった領域に相次いで投資。いわゆる「Beyond the Pill」の動きは新薬大手で広がっていますが、後発品企業では珍しく、市場の成熟化を見据えて新たな収益源の確立を急いでいます。

 

提携通じ事業機会模索

東和薬品は2018~20年度の中期経営計画「PROACTIVE」で、(1)国内ジェネリック事業の確実な成長、(2)さらなる製品品質の進化、(3)新規市場への進出・新規事業の創出、を基本方針に掲げています。最終年度の数値目標は「売上高1000億円」「営業利益累計400億円以上」。売上高目標は18年度に前倒しで達成し、営業利益も当初の「累計300億円」から100億円引き上げました。

 

【東和薬品の業績推移のグラフ】(売上高/営業利益)(単位:億円): <2015年度>821.15/111.34 <2016年度>849.4968.69 <2017年度>934.3/116.43 <2018年度>1051.04/159.68 <2019年度(予想)>1110/145 |※東和薬品の決算短信をもとに作成

 

東和は現在の中計を、▽後発品80%時代を下支えするための最終準備期間▽医療体制の変化に応じた新事業を展開するための準備期間――と位置付けています。「20年9月までに使用割合80%」の政府目標は達成期限が目前に迫り、健康寿命の延伸や地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが進むなど、後発品メーカーを取り巻く環境は大きく変化。東和は中計で掲げる3つの基本方針を通じて「医薬品産業の中で確かなポジションを確立する」としています。

 

中計公表時は「『人々の健康に貢献する』という理念に沿って幅広く検討を開始する」としていた新規事業は、スタートから2年たって方向性が定まりつつあります。軸となるのは「認知症」や「介護」で、外部との提携を通じて事業機会を模索しています。

 

認知症 診断や予防に照準

認知症の分野では今年4月、大阪府立病院機構大阪精神医療センターと、アルツハイマー型認知症のバイオマーカーに関する共同研究契約を締結。アミロイドβよりも早く発現し、血中に漏出する「KLK8」を軽度認知障害(MCI)のバイオマーカーとして臨床応用することを目指しており、将来的には発症前の診断や予防への活用を視野に入れています。国立循環器病研究センターとも同月、アザミなどに含まれる「タキシフォリン」の認知症予防効果に関する共同研究を開始。こちらは健康食品やサプリメントの開発につなげることを目指しています。

 

認知症の分野では、新薬ビジネスへの参入も伺っています。19年8月、創薬ベンチャーのタイムセラと、パーキンソン病治療薬として販売されているブロモクリプチンを家族性アルツハイマー病治療薬として共同開発する契約を締結。新薬としての承認取得を狙っており、ほかの精神疾患でもドラッグ・リポジショニングによる治療薬の創出に取り組む構えです。

 

新規事業の創出では、異業種との提携もカギになります。東和は18年10月、ヘルスケア領域の課題を解決するサービスやソリューションの提供を目指し、ソフトウェア開発のTISと合弁会社「Tスクエアソリューションズ」を設立。同社は19年10月、話し手の声を聞き取りやすい音質に変換する難聴者向け支援機器の販売を開始しました。今年1月にはバンダイナムコ研究所とゲームの手法を取り入れた服薬支援ツールの共同開発で基本合意。装着型作業支援ロボットを開発するイノフィスにも出資しており、介護従事者向けにマッスルスーツを展開することも計画しています。

 

【東和薬品/新事業創出に向けた動き】 18年10月/TISと合弁会社「Tスクエアソリューションズ」を設立 |19年7月/国立循環器病研究センターのオープンイノベーションラボに「健都ヘルスケア科学センター」を開設。健康寿命の延伸に関する共同研究を開始 |19年8月/タイムセラとiPS創薬によるドラッグ・リポジショニングに関する共同研究契約を締結 |19年10月/Tスクエアソリューションズが対話型支援機器「comuoon」の販売を開始 |20年1月/バンダイナムコ研究所と服薬支援ツールの開発に向けた基本合意書を締結 |20年1月/マッスルスーツを開発するイノフィスに出資 |20年3月/北海道厚真町と新規産業の創出と健康づくりに関する協定を締結 |20年4月/国立循環器病研究センターと「タキシフォリン」の認知症予防効果に関する共同研究を開始 |20年4月/大阪府立病院機構大阪精神医療センターとアルツハイマー型認知症のバイオマーカーに関する共同研究契約を締結 |※東和薬品のプレスリリースをもとに作成

 

脱「国内ジェネリック一本足打法」

後発品の使用割合が政府目標の80%に到達すると、国内の後発品市場は成熟期に入るとみられています。21年度から始まる薬価の毎年改定では後発品企業も大きな影響を受けると予想され、各社は新たな成長源の開拓を急いでいます。

 

海外市場への進出も相次いでおり、16年8月には日医工が米セージェント・ファーマシューティカルズを約750億円で、17年5月には沢井製薬が米アップシャー・スミス・ラボラトリーズを約1155億円で買収。欧米市場への展開が遅れていた東和も今年1月にスペインのペンサ・インベストメンツを約395億円で買収し、海外展開の足がかりを確保しました。

 

インド・ルピンや南アフリカのアスペンが日本法人を相次いで売却するなど、外資系後発品メーカーの間では日本市場から撤退する動きも出てきています。ルピン傘下を離れた共和薬品工業は、投資ファンドのユニゾン・キャピタルの下で、中枢神経系領域を中心に医薬品にとどまらない製品やサービスの提供を志向。FRONTEOとAI(人工知能)を活用した認知症診断支援システムの事業化を進めているほか、定量的脳波測定などのソリューションを持つ独ニューロケアグループと資本提携を結びました。

 

大手後発品メーカーが「国内ジェネリック一本足打法」からの脱却を目指す中、中堅メーカーや後発品事業を展開する新薬メーカーがどんな打ち手を見せるのか。業界再編の可能性も指摘されるだけに、各社の動きが注目されます。

 

(前田雄樹)

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