塩野義に行政指導、「アシテア」講演会がガイドラインに抵触/大塚、アイオニスからALS向け核酸医薬を導入 など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2024年11月22日)
腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスとは
腫瘍溶解性ウイルスとは、がん細胞に感染してがん細胞を破壊するウイルスのことです。その名の通り、腫瘍溶解性ウイルスに感染したがん細胞は溶解し、ウイルスを放出して周囲のがん細胞に感染を広げます。
腫瘍溶解性ウイルスには、がん細胞で特異的に増殖して破壊する特性を持った野生型ウイルスや弱毒化ウイルスのほか、遺伝子改変によってこうした特性を持たせたウイルスが使われます。いずれもがん細胞だけで増殖するので、正常細胞を傷つけることはありません。
腫瘍溶解性ウイルスに使われるのは、一般的なかぜを引き起こす「アデノウイルス」や、口唇ヘルペスの原因となる「単純ヘルペスウイルス」のほか、「麻しん(はしか)ウイルス」「水疱性口内炎ウイルス」「レオウイルス」「ニューキャッスル病ウイルス」「ボックスウイルス」「センダイウイルス」などがあります。
がん細胞は正常細胞に比べてウイルスに弱いとされており、20世紀初頭から「狂犬病ワクチンを投与した子宮頸がん患者の腫瘍が縮小した」「はしかに感染した子どものリンパ腫が消失した」といった報告なされてきました。ウイルスを使ってがんを治療するというアイデア自体は100年以上前からあるものです。
腫瘍溶解性ウイルスの開発状況
意図的なウイルス感染によるがん治療の研究は、20世紀半ばから本格化しましたが、当初は自然界から腫瘍溶解性を持つウイルスを探し出すのがメインでした。そうしたウイルスを見つけ出すことができても、ウイルスの動きをコントロールするのは難しく、長らく治療法としては確立されていませんでした。しかし近年、遺伝子改変技術の発展により、がん細胞だけで特異的に増殖するウイルスを作ることが可能となり、開発が活発化しています。
2015年には、単純ヘルペスウイルス1型に遺伝子改変を施した「IMLYGIC」(一般名・talimogene laherparepvec、米アムジェン)がメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に、腫瘍溶解性ウイルスとして初めて欧米で承認。中国では2003年にアデノウイルスを使った「Oncorine」が承認されています。
日本では腫瘍溶解性ウイルスはまだ承認されていません。現在、最も開発が進んでいるのは、タカラバイオの「C-REV」(一般名・canerpaturev)で、メラノーマを対象に19年3月に申請しました。C-REVは単純ヘルペスウイルス1型の弱毒化株。自然変異型ウイルスで、遺伝子改変は施されていません。
日本国内で開発が行われている腫瘍溶解性ウイルスは、C-REVのほか、第一三共の「DS-1647」(通称・G47Δ)、オンコリスバイオファーマの「OPB-301」(通称・テロメライシン)、アステラス・アムジェン・バイオファーマの「AMG678」(海外製品名・IMLYGIC)など。
DS-1647は遺伝子改変を加えた単純ヘルペス1型で、東京大の藤堂具紀教授(脳腫瘍外科)らの研究グループが膠芽腫を対象に医師主導治験を進めています。19年2月に発表された臨床第2相試験の中間解析結果によると、G47Δを投与された患者は、治療開始後1年間生存した患者の割合で既存治療を大きく上回りました。
OPB-301はアデノウイルス5型を使用。アステラス・アムジェン・バイオファーマは欧米で承認されているIMLYGICを日本で開発しているほか、アステラス製薬は鳥取大から免疫を賦活化する遺伝子を搭載した腫瘍溶解性ウイルスを導入し、「ASP9801」として開発を進めています。
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