塩野義に行政指導、「アシテア」講演会がガイドラインに抵触/大塚、アイオニスからALS向け核酸医薬を導入 など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2024年11月22日)
CAR-T細胞療法
CAR-T細胞療法とは
CAR-T(カーティー)細胞療法とは、患者から採取したT細胞に、がん細胞を攻撃する遺伝子改変を加えた上で、患者の体内に戻す治療法です。CARはキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor)の略。免疫チェックポイント阻害薬に続く新たながん免疫療法として期待されています。
米国では2017年9月、世界初のCAR-T細胞療法としてスイス・ノバルティスの「Kymriah」(キムリア、一般名・tisagenlecleucel)が承認。同年10月には米ギリアド・サイエンシズの「Yescarta」(イエスカルタ、axicabtagene ciloleucel)も米国で承認されました。両製品は18年7月に欧州でも承認されており、Kymriahは同年4月に日本でも申請を行いました。
CAR-T細胞療法の作用機序
キメラ抗原受容体(CAR)とは、抗体の抗原認識部位とT細胞受容体の細胞内シグナル伝達部位をつなぎ合わせた人工的なタンパク質。CARを発現させたT細胞は、標的とするがん細胞表面の抗原を特異的に認識します。
CAR-T細胞療法では、患者の血液から取り出したT細胞に、ウイルスベクター(レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター)を使ってCAR遺伝子を導入し、培養した上で患者の体内に戻します。
遺伝子改変によってCARを発現したT細胞は、患者の体内でターゲットとなるがん細胞の抗原を認識。T細胞内に活性化シグナルが伝達され、がんに対する高い攻撃力を発揮します。CAR-T細胞療法の奏効率は他の抗がん剤と比べて極めて高い一方、サイトカイン放出症候群など特有の副作用もあります。
CAR-T細胞療法の開発状況
KymriahとYescartaはいずれも「CD19」という抗原をターゲットとしたものです。欧米では、B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)といったB細胞性の血液がんを対象に承認されています。
これら2製品以外にも、CD19をターゲットとしたCAR-T細胞療法の開発が世界中で盛んに行われています。例えば、米セルジーンはB細胞性非ホジキンリンパ腫を対象にCD19CAR-T細胞療法「JCAR017」を開発中です。
日本国内では、ノバルティスがKymriahを18年4月に申請。セルジーンのJCAR017は臨床大2相(P2)試験を行っており、Yescartaは日本での権利を持つ第一三共がP2試験を準備中。大塚製薬は、タカラバイオから導入した「TBI-1501」のP1/2試験を行っています。
日本企業でもCAR-T細胞療法に対する取り組みが広がっています。
武田薬品工業は17年9月、バイオベンチャーのノイルイミューン・バイオテックと研究開発で提携。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」がヒットした小野薬品工業は、16年にベルギーのセリアドと、18年には米フェイト・セラピューティクスと、それぞれ創薬提携を結びました。ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは、信州大と名古屋大が共同開発したCAR-T細胞療法の製造技術を導入しています。
CAR-T細胞療法の問題点
CAR-T細胞療法は有効性が高い一方、費用が高いことが課題となっています。米国での価格はKymriahが5400万円、Yescartaが4200万円(いずれも投与1回)。ノバルティスは、投与1か月後に効果のなかった患者だけに費用の支払いを求める成功報酬型の支払い方法を採用。Kymriahは近く日本でも初認される見通しで、公的医療保険の中でどう使っていくのか、議論になっています。
価格の問題を解決するための策として期待されるのが、患者以外の細胞を使った「他家」のCAR-T細胞療法です。患者自身の細胞を使う「自家」CAR-T細胞療法は、オーダーメイド型のため、どうしても高くなってしまいます。小野薬品がフェイトとの提携でiPS細胞を使った他家CAR-T細胞療法の創製を目指すなど、費用低減に向けた取り組みも進んでいます。
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