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免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬とは

免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫細胞(T細胞)の働きを抑制するシステムである免疫チェックポイント機構を標的としたがん治療薬です。がん免疫療法の一種で、英語ではimmune checkpoint inhibitor(略してICI)と言います。

 

免疫細胞にはそもそも、免疫が過剰に働いて正常な細胞を攻撃することがないよう、その働きを抑制するシステムが備わっています。これが免疫チェックポイント機構です。近年の研究で、がん細胞がこの仕組みを利用して免疫細胞の攻撃から逃れていることが明らかになってきました。

 

がん細胞が免疫にかけるブレーキを解除

がん細胞の中には「PD-L1」という分子を発現しているものがあり、これがT細胞表面の「PD-1」という分子に結合すると、「がん細胞を攻撃するな」という信号が伝わり、T細胞の働きにブレーキがかかります。そうなると、T細胞はがん細胞を攻撃することができなくなり、がんはどんどん増殖していきます。

 

免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1とPD-1の結合を阻害する薬剤です。この作用により、がん細胞がT細胞にかけているブレーキを解除し、T細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにするのです。

 

代表的な免疫チェックポイント分子であるPD-1は、1992年に京都大の本庶佑特別教授(現)らの研究チームが発見。その後、小野薬品工業と共同研究を始め、免疫チェックポイント阻害薬の代表格「オプジーボ」の開発につながりました。

 

国内で販売されている免疫チェックポイント阻害薬

日本国内では現在、6つの免疫チェックポイント阻害薬が販売されています。

 

国内で販売されている免疫チェックポイント阻害薬のリスト。

 

抗PD-1抗体

小野薬品工業が2014年9月に世界に先駆けて発売したのが、抗PD-1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)。悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に発売されたあと、次々に適応を広げ、現在では非小細胞肺がんや胃がんなど7つの適応で承認されています。

 

オプジーボと同じPD-1抗体では、2017年2月にMSDが「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)を悪性黒色腫と非小細胞肺がんの適応で発売。現在では、ホジキンリンパ腫や尿路上皮がんでも使用が可能です。

 

抗PD-L1抗体

PD-1と対の関係にあるがん細胞側のPD-L1に結合する抗PD-L1抗体としては、メルクセローノが2017年11月に「バベンチオ」(アベルマブ)をメルケル細胞がんの適応で発売。2018年4月には中外製薬が「テセントリク」(アテゾリズマブ)を、同年8月にはアストラゼネカが「イミフィンジ」(デュルバルマブ)を発売しました。

 

抗CTLA-4抗体

免疫チェックポイント分子はPD-1とPD-L1だけではありません。これら2つ以外によく知られているのが、免疫細胞に発現する「CTLA-4」です。CTLA-4は、抗原提示細胞(免疫細胞に攻撃対象であるがん細胞の目印を提示する細胞)である樹状細胞のB7という分子と結合することで働きが抑制されます。

 

このCTLA-4に結合することで免疫の抑制を解除するのが、ブリストル・マイヤーズスクイブの抗CTLA-4抗体「ヤーボイ」(イピリムマブ)です。ヤーボイは2015年8月に悪性黒色腫を対象に発売されました。

 

免疫チェックポイント阻害薬の国内での開発状況

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機構に作用するという特性上、さまざまながん種に効果を発揮すると期待されており、適応拡大に向けた開発も活発です。治療のどの段階で使うかも含め、国内でもさまざまな臨床試験が行われています。

 

免疫チェックポイント阻害薬の開発状況(国内)

 

併用療法の開発が活発化

免疫チェックポイント阻害薬の開発で特に活発なのが、ほかの抗がん剤との併用療法の開発です。各薬剤とも、化学療法や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬との併用療法の開発を進めています。

 

例えばオプジーボの場合、ヤーボイとの併用療法はすでに悪性黒色腫と腎細胞がんの適応で承認を取得しています。また、エーザイの抗がん剤「レンビマ」(レンバチニブ)との併用療法も開発中です。

 

免疫チェックポイント阻害薬の特徴

効果のあらわれ方が従来の抗がん剤とは異なる

免疫チェックポイント阻害薬では、臨床効果のあらわれ方が従来の抗がん剤とは異なることが知られています。大きな特徴としては、効果が長く持続する例があることが挙げられ、治療を中止した症例でも効果が持続した例も報告されています。

 

一方、免疫チェックポイント阻害薬はどんな患者にも効くわけではなく、現状では効果が得られるのは一部の患者に限られます。どんな患者に効くのかはまだはっきりとはわかっておらず、バイオマーカーの開発が課題となっています。

 

免疫関連副作用(irAE)が起こる可能性がある

免疫チェックポイント阻害薬の副作用として特徴的なのが、免疫関連副作用(irAE)です。免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫抑制だけを解除するわけではなく、活性化された免疫細胞によって自己免疫疾患に似た症状を引き起こす場合があります。

 

免疫チェックポイント阻害薬によるirEAでは、全身のあらゆる臓器に炎症性の免疫反応が起こることが知られており、発熱・倦怠感・悪寒、下垂体炎、腎炎、大腸炎、重症筋無力症などが報告されています。間質性肺障害や心筋炎、劇症型1型糖尿病などは重大な副作用で、特に注意が必要とされています。

 

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