小野薬品、カナダ企業と創薬提携…がん領域で低分子化合物創製 など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2024年12月3日)
長期収載品の薬価
長期収載品の薬価を引き下げる2つの特別ルール
長期収載品(特許が切れて後発医薬品が販売されている先発医薬品)には、2つの特別な薬価改定ルールがあります。
後発品発売からの期間によって適用されるルールが違う
長期収載品の薬価改定ルールは、後発品が発売されてからの期間によって3つの段階に分けられます。
後発品発売から5年まで…通常の薬価改定
後発品の発売から5年以内の長期収載品は、通常の薬価改定と同様に、市場実勢価格に基づく薬価の引き下げが行われます。
薬価調査で把握した市場実勢価格に、調整幅として改定前薬価の2%を足した金額が、改定後の新薬価となります。
後発品発売5年〜10年…後発品への置き換え率に応じた引き下げ(いわゆるZ2)
後発品の発売から5年がたった長期収載品には、後発品への置き換え率に応じた引き下げ(いわゆるZ2)が適用されます。
Z2では、市場実勢価格に基づく引き下げにプラスして、
後発品への置き換え率が40%未満の場合…2%
置き換え率が40%以上60%未満の場合…1.75%
置き換え率が60%以上80%未満の場合…1.5%
薬価が引き下げられます。
このルールは薬価改定のたびに適用され、基準となる置き換え率に達しない場合は繰り返し薬価の引き下げを受けることになります。置き換え率が80%を超えれば、その後はZ2による引き下げは適用されません。
後発品発売10年以上…後発品の薬価を基準とした引き下げ(いわゆるG1、G2、C)
後発品の発売から10年たつとZ2の適用は終了し、今度は後発品の薬価を基準とした引き下げルール(いわゆるG1、G2とこれらを補完するC)が適用されます。
このルールは、適用開始時点で後発品にどれだけ置き換わっているかよって2つに分かれます。1つは後発品への置き換え率が80%以上の長期収載品に適用されるG1、もう1つが置き換え率80%未満の長期収載品が対象となるG2です。
いずれも後発品の発売から10年たった直後の改定で、まず後発品の2.5倍まで薬価を引き下げます。その後、G1は6年かけて後発品と同じ薬価に、G2は10年かけて後発品の薬価の1.5倍まで引き下げます。
このルールの開始時点ですでに薬価が後発品の2.5倍を下回っている場合は、補完的な引き下げ(いわゆるC)を受けます。引き下げの条件と引き下げ率はZ2と同じです。
「G1」「G2」「C」とは
ここからは、18年度から新しく導入された長期収載品の薬価引き下げルール「G1」「G2」「C」について詳しく見ていきます。
G1、G2とこれらを補完するCは、後発品の薬価を基準として段階的に薬価を引き下げていくルールです。最終的には後発品と同じか、それに近い水準まで引き下げます。G1、G2、Cのどれが適用されるかは、後発品の発売から10年たった時点で後発品への置き換えがどれくらい進んでいるかによって決まります。
【G1】6年かけて後発品と同じ薬価に
G1は、後発品の発売から10年で後発品への置き換え率が80%以上に達した長期収載品に適用されます。ただし、バイオ医薬品は対象となりません。
G1の対象となる品目はまず、後発品の発売から10年たった直後の薬価改定で、後発品の薬価の2.5倍まで薬価を引き下げます。その後は、2年に1度の改定ごとに「後発品の2倍」「1.5倍」と段階的に引き下げ、G1適用開始から6年後の改定で後発品と同じ薬価にします。
【G2】10年かけて後発品の1.5倍の薬価に
G2は、後発品の発売から10年たっても後発品への置き換え率が80%未満の長期収載品が対象です。G1と同じように、バイオ医薬品には適用されません。
G2の対象品目はG1同様、後発品の発売から10年たった直後の薬価改定で、後発品の薬価の2.5倍まで薬価を引き下げます。その後は、2年に1度の改定ごとに「後発品の2.3倍」「2.1倍」「1.9倍」「1.7倍」と段階的に引き下げ、G2適用開始から10年後の改定で後発品の薬価の1.5倍にします。
途中で後発品への置き換え率が80%を超えた場合は?
G2の対象となった品目が、途中でG1の適用条件である「後発品への置き換え率が80%以上」になった場合、その品目は次の改定でG1に移行することになります。
途中でG1に移行する場合は、その時点での後発品との価格比を維持したまま移行し、その後6年かけて後発品と同じ薬価にします。例えば、後発品の1.7倍まで薬価が下がった時点でG1に移行する場合、2年後の改定では1.7倍を維持し、その後「1.5倍」「1倍」と引き下げます。
【C】すでに後発品の2.5倍まで薬価が下がっているものが対象
長期収載品の中には、後発品の発売から10年ですでに薬価が後発品の2.5倍以下まで下がっているものも少なくありません。こうした品目は、G1やG2による引き下げ(後発品発売から10年たった直後の改定で後発品の2.5倍に引き下げる)ができないため、補完的な引き下げルールCの対象となります。
Cでは、
後発品の置き換え率が40%未満の場合…2%
置き換え率が40%以上60%未満の場合…1.75%
置き換え率が60%以上80%未満の場合…1.5%
の引き下げが行われます。引き下げの条件と引き下げ率はZ2と同じです。
G1の長期収載品は販売中止が認められる
後発品の発売から16年後には後発品と同薬価となるG1では、対象となった長期収載品が不採算に陥る可能性があります。安全性に関する情報などを提供する役割は長期収載品を販売するメーカーが中心的に担っており、これが後発品に比べて販売コストがかかる要因となっているからです。
それにもかかわらず後発品と薬価をそろえることになるため、G1では長期収載品を販売するメーカーが自ら市場からの撤退(=販売の中止)を判断することが認められています。
ただし、長期収載品が販売を中止する場合は、その分、後発品の供給量を増やす必要があります。G1ルールでは、適用開始から後発品と同薬価になるまでの6年間を「後発品の増産準備期間」と位置付け、撤退する場合は原則として6年後に薬価が1倍になる時点で販売を中止できます。後発品の増産体制がこれより前に整う場合には、6年を待たずに販売を中止することも可能です。撤退するには、長期収載品を販売するメーカーが後発品メーカーに増産を依頼し、了承を得なければなりません。
厳しさ増す長期収載品の薬価引き下げ
長期収載品の薬価引き下げルールはここ最近、2年に1度の薬価制度改革のたびに厳しくなっています。
G1・G2・Cは950品目が対象に
2014年度の薬価制度改革で導入されたZ2は、政府の後発品使用割合の目標引き上げに伴い、基準となる後発品への置き換え率も16年度、18年度と2回連続で引き上げられました。18年度改定では、85成分207品目がZ2による薬価引き下げを受けました。
18年度の制度改革で導入されたG1、G2、Cは、あわせて443成分950品目が対象となりました。内訳は、G1が38成分85品目、G2が137成分293品目、Cが268成分572品目。G1には鳥居薬品のタンパク分解酵素阻害薬「注射用フサン」など、G2には科研製薬の関節機能改善薬「アルツ」など、製薬各社の主力製品も含まれており、影響は甚大です。
新薬へのシフトを促す
厚生労働省は、長期収載品の薬価を大きく引き下げることで、長期収載品に依存したビジネスモデルから脱却し、新薬を主体とした経営にシフトするよう、製薬企業に促しています。
日本の医薬品市場はつい最近まで、後発品の普及率も低く、特許が切れて長期収載品となった製品でもそれなりに収益を上げることが可能でした。ところがここ数年、医療費を削減したい政府の強力な後押しによって後発品の使用は急速に広がり、薬価も下がったことで長期収載品の売上高は急速に縮小しています。
大手は長期収載品を売却
国内の大手製薬企業の中には、収益が下がった長期収載品を他社に売却し、新薬に経営資源を集中的に投入しようとするところが出てきています。
国内最大手の武田薬品工業はイスラエル・テバとの合弁会社に、かつての主力製品だった高血圧症治療薬「ブロプレス」や消化性潰瘍薬「タケプロン」を売却。アステラス製薬や中外製薬なども同様の取り組みを行っています。
長期収載品が主力の中小企業は
一方、中小の製薬企業の場合、長期収載品がいまだに経営の大黒柱というところも少なくありません。例えば、久光製薬は消炎鎮痛剤「モーラス」で売上高全体の約4割を稼いでいますし、科研製薬は売上高の約3割を関節機能改善剤「アルツ」に頼っています(いずれも17年度)。
後発品の普及や薬価の引き下げにより、こうした製品も売り上げは減少傾向にあり、久光製薬は今後、一般用医薬品(OTC)に力を入れていく方針を掲げました。新薬にシフトするのか、それとも別の事業で稼ぐのか。長期収載品の薬価引き下げは、製薬会社に戦略の再考を迫っています。
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