塩野義に行政指導、「アシテア」講演会がガイドラインに抵触/大塚、アイオニスからALS向け核酸医薬を導入 など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2024年11月22日)
新薬創出加算とは
新薬創出加算とは
新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出加算)とは、薬価改定時に一定の条件を満たした新薬に与えられる加算のことです。特許が切れるまで薬価を維持したり、下がりにくくしたりすることで、革新的新薬の創出や未承認薬・適応外薬(*1)の開発を促進するのを目的に、2010年度の薬価制度改革で試行的に導入されました。
*1…未承認薬とは、海外で承認されているものの日本では承認されていない医薬品。適応外薬は、海外でも日本でも承認されているものの適応が異なり、日本では一部の適応で使用できない医薬品。
新薬創出加算のしくみ
薬価は通常、2年に1度の薬価改定で、市場実勢価格(医薬品卸売業者から医療機関・薬局への販売価格)に合わせて引き下げられます。新薬創出加算は、薬価改定時に一定の条件を満たした新薬に加算をつけ、特許が切れるまで(=後発医薬品が発売されるまで)薬価を維持したり、下がりにくくしたりする制度です。
新薬創出加算の対象品目
新薬創出加算の対象品目は、
(1) 後発医薬品が発売されていない
(2) 薬価収載から15年たっていない
新薬で、かつ、
(3)希少疾病用医薬品
(4)厚生労働省の公募に応じて開発された医薬品
(5)薬価算定時に画期性加算や有用性加算がついた医薬品
(6)新規作用機序の医薬品(革新性や有用性があるもの)
(7)(6)と同じ作用機序を持つ医薬品で、最初の品目が薬価収載されてから3年以内・3番手以内に薬価収載された医薬品
のいずれかを満たした新薬。ただし、薬価改定時に市場拡大再算定(当初の予測を大きく上回って売り上げが拡大した医薬品の薬価を引き下げるルール)の対象となった新薬は、これらの条件を満たしていても新薬創出加算を受けることはできません。
新薬創出加算は特許期間中の新薬の薬価を維持する制度なので、特許が切れた、すなわち(1)(2)の条件に当てはまらなくなった医薬品は加算の対象から外れます。この場合、それまで加算されていた額に相当する分が、直後の薬価改定で一気に引き下げられることになります。これを加算の返還といいます。
新薬創出の取り組みに応じて加算に差
加算額は一定の計算式を用いて算出されますが、新薬創出加算には、新薬開発やドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みに応じて、企業ごとに加算に差をつける仕組みがあります。日本で積極的に新薬開発に取り組む企業には加算を厚く与え、そうでない企業は加算を減らすのです。
具体的には、国内での臨床試験数や新薬収載数、開発公募品目の開発数・承認数などを点数化し、その合計点で上位25%に入った企業は加算を全額受け取ることができる一方、最低点数の企業はそこから2割、それ以外の企業は1割、加算が減額されます。
新薬創出加算が導入された背景
日本では2005年ごろから、日本では海外で使える医薬品が日本では使えない、いわゆる「ドラッグ・ラグ」が社会的に大きな問題となっていました。
市場実勢価格に基づいて薬価改定で薬価を引き下げることを原則とする日本の薬価制度では、せっかく新薬を開発しても薬価は2年ごとに下がり続けます。製薬企業にとっては、研究開発にかかった費用を回収できないリスクがありました。
製薬業界は長らく、こうした環境では企業が積極的に新薬を開発するのは難しく、結果としてドラッグ・ラグを引き起こしているとして、「特許期間中の新薬の薬価を維持する仕組み」をつくるよう求めていました。
一方、当時の日本は後発医薬品の普及が進んでおらず、特許が切れて長期収載品となっても売り上げが大きく下がることはありませんでした。製薬企業にとって当時の日本は「特許期間中も薬価は下がり続けるが、特許が切れても長く稼げる市場」でした。こうした環境では次々と新薬を開発しようというモチベーションも生まれにくく、これが日本での新薬開発を遅らせているとの指摘もありました。
新薬創出加算は、こうした状況を改善し、革新的新薬の創出とドラッグ・ラグの解消を後押しするために導入されました。一定の条件を満たした新薬は特許が切れるまで薬価を維持し、研究開発投資を回収しやすくする一方、特許が切れたらそれまでの加算分も含めて薬価を一気に引き下げることで、次の新薬開発へのモチベーションを高めること狙ったのです。
18年度薬価制度改革で大幅な見直し
新薬創出加算は2018年度の薬価制度改革で、その中身が大きく変更されました。「真に有効な医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価する」との方針の下、それまで「乖離率が全医薬品の平均を下回る」だけだった対象品目の条件を、上で説明したような条件に厳しく見直されました。
そもそも乖離率に着目した条件が設けられたのは、「医療現場で評価の高い新薬は、医薬品卸から医療機関・薬局に販売される際の値引き率が小さい(=乖離率が小さい)」との理屈からでした。しかし、薬剤費を抑制したい財務当局などは、新薬創出加算の導入当初から「乖離率は医薬品の革新性・有用性を評価する指標ではない」と批判。見直しを求め続けてきました。
こうした中、2016年には、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」などの高額薬剤に端を発し、政府内で薬価制度の抜本改革に向けた議論が活発化しました。この年の年末に政府がまとめた改革の基本方針には、新薬創出加算をゼロベースで見直すと明記。これが18年度薬価制度改革での大幅な見直しにつながりました。
加算対象は大幅に減少
条件が厳しくなった結果、18年度改定で新薬創出加算の対象となったのは315成分562品目と前回の16年度改定から101成分261品目減少しました。
ドラッグ・ラグ解消には一定の成果があったが…
こうした見直しに対し、製薬業界は「新薬開発の意欲が削がれる」などと反対。特に、日本国内での臨床試験数など企業要件で不利になる外資系製薬企業は強く反発しています。
米国研究製薬工業協会(PhRMA)の調査によると、新薬創出加算の導入以降、欧米と日本での承認申請の時間差は短縮し、国内で承認申請される新薬も増加。新薬創出加算は新薬開発の促進やドラッグ・ラグの解消に一定の効果を発揮してきたと言えます。
欧米の製薬業界団体は、新薬創出加算の対象が大幅に縮小したことで、「日本の患者が新薬を早期に使用することが難しくなる」と指摘。ドラッグ・ラグが再び拡大するとの懸念を示しています。
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