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薬価制度の抜本改革 主要事項の議論一巡…どこまで進んだ?ポイントまとめ

昨年末の「基本方針」の決定を受け、今年1月から議論がスタートした薬価制度の抜本改革。4月末の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で、主な改革事項に関する議論はおおむね一巡しました。

 

これまでにどんな検討課題が示され、どんな議論がなされたのか。ポイントをまとめました。

 

【毎年改定】対象品目「乖離率」か「乖離額」か

薬価制度の抜本改革の大きな柱の1つである薬価の毎年改定。これまでの中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会の議論でも最も多くの時間が割かれました。

 

政府が昨年末にまとめた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では、

市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するため、全品を対象に毎年、薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行う。そのため、現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年にも大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う。

とされています。

 

最大の焦点となっているのが対象品目です。基本方針には「価格乖離の大きな品目」と書かれているだけで、価格乖離は「乖離率」なのか「乖離額」なのか、どれくらいの乖離を「大きい」とするのかも明らかではありません。価格乖離をどう捉えるかによって、対象品目は大きく変わってきます。

 

2年に1度の通常の薬価改定が指標としているのは、市場実勢価格と薬価の「乖離率」。しかし、これが大きい品目を谷間の年の改定の対象にしてしまうと、市場実勢価格の下がりやすい後発品ばかりが対象となってしまう可能性が指摘されています。

 

後発品は「乖離率」こそ大きいものの、もともとの価格が安いため「乖離額」は先発医薬品ほど大きくありません。後発品業界からは「乖離率で対象を決めれば薬剤費の抑制効果も限定的。乖離額に注目すべき」との声も聞かれます。

 

そもそも、対象となる品目の具体的な基準を公表するかどうかについても、意見が分かれています。例えば「乖離率◯%以上」といった基準をあらかじめ示すと、価格交渉に影響が出ると製薬業界は懸念。一方、予見性や公平性の観点から何かしらの基準は示すべきとの意見も出ています。

 

【適応追加に伴う販売増】対象品目の範囲 引き下げ方法が焦点に

小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が議論に火をつけた、適応拡大に伴って販売が急激に拡大した医薬品の薬価引き下げ。毎年改定と並ぶ改革の柱で、基本方針には「新薬の薬価収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す」と明記されました。

 

こちらも焦点となるのは、薬価引き下げの対象となる医薬品の範囲。厚労省は、適応追加に伴う販売の増加には、▽類似薬がなく新たな市場が拡大した場合▽競合品とのシェアが変わっただけ場合――の2つのケースが考えられるとしています。製薬業界側は「後者は医療保険財政への影響が小さいので、前者に限定すべき」との主張ですが、日本医師会は後者の場合でも市場全体が一定以上なら対象とするよう求めています。

 

引き下げの方法も論点です。「オプジーボ」の場合、厚生労働省が推計した年間販売額1516億円という数字をもとに、「特例拡大再算定」を適用し、薬価を半額に引き下げ。このやり方に、製薬業界からは反発の声が上がりました。

既存の薬価再算定ルール

ただし、製薬業界側も「オプジーボ」のような特殊なケースに限り、薬価を見直す何かしらのルールを導入するのはやむを得ないとの認識です。昨年12月の中医協・薬価専門部会では「効能追加などによって大幅に市場規模が拡大する医薬品の薬価見直しについて、柔軟に対応するルールの検討が必要と認識している」との意見を表明しました。一方で、適応拡大に向けた開発意欲を削ぐとの意見も強く、納得性の高いルールづくりが課題となります。

 

【薬価算定の正確性・透明性】比較薬の選定は?製造原価の公表は?

薬価算定の正確性・透明性の向上も抜本改革の大きな課題です。

 

日本の薬価制度の基本である、効能・効果や薬理作用の似た薬は同じ薬価とする「類似薬効比較方式」をめぐっては、比較対象とする類似薬の選定方法が議論に。これまでの中医協・薬価専門部会では、低分子医薬品であるC型肝炎治療薬「ソバルティ」の比較薬の1つに、生物由来のインターフェロンが含まれていたことなどが問題視されてきました。

 

低分子医薬品とバイオ医薬品や抗体医薬は製造コストが全く異なります。このため、抗体医薬を比較薬として低分子医薬品の薬価を算出した場合、低分子薬同士を比較した場合と比べて薬価が高くなることも考えられます。日本医師会は、加算を受けた医薬品を比較薬とする場合も同様だとして、比較薬の選定方法を抜本的に見直すよう求めています。

 

一方、低分子薬を比較薬に抗体医薬の薬価を算出した場合は、抗体医薬同士を比較した場合に比べて逆に薬価が安くなることも考えられます。仮に比較薬の選定方法を見直すとすれば、こうした点にどう落とし所を見つけるのかも課題となるかもしれません。

低分子薬と抗体医薬を1日薬価合わせすることで算定した例

比較薬がない場合に、製造原価や企業の利益などを積み上げて薬価を算定する「原価計算方式」にも見直しのメスが入ります。一部から「ブラックボックス」と指摘される製造原価や一般管理費の明確化が大きな論点となっています。

 

【外国平均価格調整】類似薬効比較方式では「妥当性ない」

内外価格差を是正するためのルールである「外国平均価格調整」は、類似薬効比較方式で薬価算定される薬には適用しない方向で検討が進んでいます。

 

類似薬効比較方式では、公正な市場競争を確保するために、類似薬と1日当たりでほぼ同じ薬価がつけられます。しかし、昨年11月に薬価収載された日本イーライリリーの乾癬治療薬「トルツ」の場合、外国平均価格調整によって薬価が引き上げられ、比較薬を大きく上回るという問題が発生。一時メーカーが薬価収載の希望を取り下げる異例の事態となりました。

 

中医協の議論では製薬業界側が「(類似薬効比較方式を基本とする)日本の薬価の決め方として妥当性は低い」と発言。「トルツ」の問題を見る限り、確かに「似た薬は同じ薬価」とする日本の制度とは整合性がとれていません。製薬業界は適用を限定的なものとするよう求めています。

 

一方、「オプジーボ」のように原価計算方式で薬価算定され、かつ世界で初めて日本で発売された薬については、事後的に外国平均価格調整を適用することもほぼ決まりました。

 

「オプジーボ」の日本の薬価は、後から発売された欧米各国よりも高いことが問題視されましたが、これを調整するルールは現行の薬価制度にはありません。世界で初めて日本で発売された薬は、海外で発売され次第、その価格と比較して薬価の上げ下げが行われることになる方向です。

 

【後発品の薬価】価格帯の集約 毎年改定との絡みも

2年に1度の薬価制度改革のたびに引き下げが行われている後発品ですが、今回もその薬価のあり方が議論の俎上に上っています。具体的な検討は、今年行われる薬価調査の結果を見て行われる見通しです。

 

前回2016年度の薬価制度改革では見送られた価格帯の集約も焦点となります。同じ成分・同じ規格なのに価格の違う品目があるのは、医療現場からするとわかりづらく、現在3つの価格帯をさらに集約するよう求める声は根強くあります。

14年度に実施された後発医薬品の価格帯の集約(例)

 ただし、価格帯ごとに加重平均を用いて薬価を設定する現在の仕組みでは、品目によっては市場実勢価格よりも薬価が安くなったり、逆に薬価が引き上げられたりすることもあります。毎年改定との絡みでは、ある価格帯の一部が「価格乖離の大きな品目」として対象となった場合、同じ価格帯の品目をすべて引き下げるのかどうかも議論になります。

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薬価制度の抜本改革をめぐる議論は、5月中旬の製薬業界からのヒアリングを経て二巡目に突入。年末の取りまとめに向けてさらに突っ込んだ検討が行われることになります。

 

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