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後発品メーカー 大型買収ににじむ「焦り」…国内停滞 成長求め米国へ

後発医薬品大手の沢井製薬が、米国進出へ大型買収に踏み切りました。4月20日、米国の後発品企業アップシャー・スミス・ラボラトリーズを1155億円で買収することで合意したと発表。米国を日本に次ぐ収益の柱としたい考えです。

 

後発品大手では昨年、日医工が米国企業を約750億円で買収。世界最大市場への進出を果たしました。相次ぐ大型買収には、国内市場の停滞が迫る中、新たな成長機会を確保しなければならない「焦り」がにじみます。

 

沢井の買収、日本の後発品企業では過去最大

沢井製薬は4月20日、米国の後発医薬品企業アップシャー・スミス・ラボラトリーズ(ミネソタ州)を買収することで合意したと発表しました。買収額は1155億円。日本の後発品企業としては過去最大の大型買収となります。買収費用は借り入れと手元資金でまかない、買収は6月末までに完了する予定です。

 

沢井製薬は2013年6月に米国子会社を設立し、同年8月には高脂血症治療薬ピタバスタチン(製品名「リバロ」)を米食品医薬品局(FDA)に申請。以来、米国市場への本格参入に向けた足がかりを探してきたといいます。

 

アップシャー・スミスは1919年設立と歴史が長く、米国で約30品目を販売し、さらに30品目がパイプラインに控えます。一方、沢井製薬が米国に進出する上で課題となっていたのが、FDAへの対応や、販売・生産インフラの構築。「米国内での認知度が高く、研究開発・製造・薬事・販売・能力を持ち、経験に長け、揺るぎない事業基盤を持つアップシャー・ス
ミスを一員にすることは飛躍的成長に不可欠だと考えた」。沢井製薬は今回の買収の意義をこう説明します。

 

国外に成長源確保が急務

沢井製薬の2017年3月期の売上高見込みは1345億円。年間売上高に匹敵するほどの巨額の費用を投じるのは、日本以外の新たな成長源の確保が急務だからです。

 

日本国内の後発品市場は、政府が立てた「2018~20年度のなるべく早い時期に数量シェア80%」という目標に向かって堅調に推移しています。政府は、一般名処方加算や後発品調剤体制加算など、医療機関や薬局に対して診療報酬・調剤報酬上のインセンティブを与え、後発品の使用を強力に後押し。結果として、後発品大手3社の業績は高い伸びを続けてきました。

後発品大手3社の売上高の推移

 民間調査会社の富士経済によると、16年には8346億円だったと見込まれる国内の後発品市場(バイオシミラーとオーソライズド・ジェネリックを含む)は、20年には1兆769億円まで伸びると予測。ですがその先の見通しは決して明るくはありません。

 

足元ではすでに変調の兆しが見えています。

 

16年度は診療報酬・調剤報酬改定で新たな使用促進策が打ち出されたものの、数量の伸びは過去に改定のあった12年度や14年度に比べて低調。薬価への圧力も強く、16年度の薬価制度改革では、新たに薬価収載される後発品の薬価が「先発医薬品の6割(内用薬で10品目超が収載される場合は5割)」から「5割(4割)」に引き下げられました。

 

18年度の薬価制度改革に向けては、さらなる薬価の引き下げや価格帯の集約が議論に。今後導入される毎年改定では、市場価格との乖離率が大きい後発品が大きな影響を受けるとの指摘もあります。

 

「日本の総人口は減少傾向ながら、主たるユーザーである65歳以上の人口は増加」「成長余地を残す日本のジェネリック市場で圧倒的な地位確立を目指す」。沢井製薬は買収に関する説明資料で、日本市場でもまだ成長できるとの見通しを示しました。しかし、これまでのような高い成長が続くということにはならないでしょう。国内の後発品市場は、数量の伸びが必ずしも売り上げの伸びにつながらない時代に入りつつあります。

 

「日本にとどまったままでは成長は停滞する。将来の成長を継続するために買収を決断した」。昨年夏、米セージェント・ファーマシューティカルズを約750億円で買収し、米国進出を果たした日医工の田村友一社長は当時会見でこう述べました。業績好調な今のうちに次なる成長への布石を打っておきたかったというのが、両社共通の思いでしょう。

 

「高品質」でポジション築けるか

沢井製薬はそもそも、自社で申請したピタバスタチンを2017年に発売して米国市場に進出する予定でした。

 

しかし、先発品の原薬を製造する日産化学工業と販売権を持つ興和が、特許侵害だとして提訴。沢井製薬のピタバスタチンは今年2月に承認を取得したものの、特許訴訟の和解の取り決めにより、23年5月以降にならなければ発売できなくなりました。米国参入の目算が狂ったことも、大型買収を決断させた1つの要因とみられます。市場環境が急速に変化する中、これ以上遅らせることはできないとの判断があったのかもしれません。

 

「日本だけでなく米国の患者にも高品質で付加価値のあるジェネリック医薬品を提供する」。沢井製薬はウリとする品質で米国市場を攻める構えです。しかし米国は、コスト競争力に勝るインド勢が幅をきかせる市場でもあります。激しい価格競争の中、明確なポジションを築くことができるのか。勝負はこれからです。

 

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