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地域医療連携推進法人 4月スタート―設立検討は40件以上 医薬品業界へのインパクトは?

医薬品業界へのインパクトは、どれほどのものになるのでしょうか。

 

地域の医療機関同士の連携を促し、限られた医療資源の効率的な活用を目指す「地域医療連携推進法人」制度が、いよいよ4月からスタートします。厚生労働省によると、法人の設立が検討されているのは、全国で40カ所以上。早ければ4月2日にも第1号が認定される可能性があります。

 

新たな法人では、医薬品の共同購入も可能に。医薬品の採用や価格交渉にも影響がありそうです。

 

「競争」から「協調」へ 医療資源を効率活用

地域医療連携推進法人制度とは、2次医療圏を原則とする地域内の複数の医療法人などが参画して法人をつくり、複数の医療機関や介護施設を統一的な方針の下で一体的に運営する制度です。2015年9月の医療法改正で創設され、今年4月2日に施行されます。

 

制度の目的はその名の通り、地域の医療機関同士の連携を促すことにあります。複数の医療機関が参画することで、関係を「競争」から「協調」に転換し、効率的な医療提供体制を構築するのが狙いです。

 

地域医療連携推進法人に参加できるのは、病院・診療所や介護施設を運営する医療法人や公益法人、NPO法人などの非営利法人。こうした参加法人の本部機能を一括して担うのが地域医療連携推進法人です。地域医療連携推進法人では、参加法人間で病床や診療科を再編したり、医師の配置を変えたりすることができ、例えば

▽過剰な急性期病床を減らし、不足している回復期病床を増やす
▽分散している診療科を集約して病院間で役割を分担する

といったことも可能になります。これまで地域で「競争」していた医療機関が「協調」することで、限られた医療資源を有効に活用しようということです。

地域医療連携推進法人とは

 

「医薬品の共同購入」採用や価格交渉に影響か

地域医療連携推進法人では医薬品の共同購入を行うことも可能。経営効率の向上策として、厚労省も法人設立のメリットの1つに挙げています。

 

ただし、地域医療連携推進法人が医薬品を一括購入して参加法人に配ることは医薬品医療機器法上できません。このため、厚労省が2月に通知した新制度に関するガイドラインでは「地域医療連携推進法人が一括購入を調整し、個別の購入契約については参加法人がそれぞれ締結すること」とされました。地域医療連携推進法人が窓口として医薬品卸売業者と価格交渉を行い、実際の購入はそれをもとにして参加法人が個別に行うことになります。

 

地域医療連携推進法人による医薬品の共同購入は、医薬品の流通にどんな影響を与えるのでしょうか。

 

まず考えられるのが、採用品目の絞り込みです。

 共同購入を行おうとすれば、当然、それまで医療機関によってバラバラだった採用品目を、薬効や効能・効果ごとにある程度共通化しなければなりません。しかも、地域医療連携推進法人の採用品目は、法人に参加していない周辺の医療機関や薬局の医薬品の選定にも影響を与えると想定されます。製薬企業にとっては、採用品目に選ばれれば地域で大きなシェアを獲得できる一方、採用されなければ売り上げはほぼなくなります。地域医療連携推進法人の設立は、各地域でこうした「0か100か」の競争を生むことになるかもしれません。

 

もう1つ考えられるのは、価格交渉への影響です。

 医薬品の共同購入の大きな目的は、スケールメリットを発揮することで納入価格を下げること。医薬品卸との価格交渉は激しさを増すことになり、日本の医薬品流通の悪しき習慣とされる「未妥結・仮納入」や「総価取引」などが増える可能性も指摘されています。地域医療連携推進法人が各地で設立されることになれば、業界と行政が進めてきた「流通改善」が後退することも懸念されます。

 

連携のしかたはさまざま

地域医療連携推進法人の設立が検討されているのは、厚労省が把握しているだけでも全国で40カ所。連携のしかたはさまざまです。

地域医療連携推進法人の設立が検討されている事例(1)

岡山市では、岡山大病院を中心に、市内の6つの大規模病院による法人設立が検討されています。構想では、教育や臨床研究、情報連携などの分野から連携を開始し、将来的には大規模で質の高い医療・研究・教育事業体の構築を目指すとしています。

 

山形県酒田市では、日本海総合病院を運営する地方独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」が中心となり、周辺の民間病院や介護施設も含めた地域医療連携推進法人の設立を準備しています。岡山県真庭市では、金田病院と落合病院がすでに診療科目の分担などを行っており、法人設立を通じて訪問看護事業所の一体化などさらなる連携を進める考え。鹿児島県瀬戸内町と宇検村では、離島での医療提供体制構築に向けた連携が検討されています。

地域医療連携推進法人の設立が検討されている事例(2)

ただし、地域医療連携推進法人への参加で医療機関が得られる“うまみ”はさほど大きくありません。診療報酬上の措置もなければ、税制上の優遇があるわけでもありません。

 

個々の医療機関がそれぞれの方針で動いていたこれまでの状況ではやりにくかった病床や診療科の融通・再編がしやすくなったり、医薬品の共同購入などを通じて経営を効率化したりといったメリットはあるものの、病床や診療科の融通・再編は医療機関の収入にも直結するだけに、参加法人が本当に足並みを揃えられるか不安な面もあります。

 

厚労省は「法人の設立を検討する動きが広がりつつある」としていますが、実際にどれほどの法人が立ち上がるかは現時点では不透明。医薬品業界への影響も、法人にどんな医療機関が参加するか、法人がどんな連携を行うか、などによっても違ってくる可能性があり、どれほどのものになるのか読み切れない部分もあります。地域の状況によっても大きく異なるだけに、動向を注視しておく必要がありそうです。

 

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