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なぜ起こる? なくならない製薬企業の“副作用報告漏れ”

厚生労働省は3月14日、多発性骨髄腫治療薬の副作用報告に漏れがあったとして、セルジーンに医薬品医療機器等法に基づく業務改善命令を出しました。報告漏れがあったのは、死因の特定できない海外での死亡症例4573例。原因は、同法に対する理解不足にあったといいます。

 

ノバルティスファーマが2015年に業務停止命令を受けたのをはじめ、振り返ってみると意外にある製薬企業の副作用報告漏れ。過去の事例と原因をまとめました。

 

「原因特定できない海外死亡例」報告対象と認識せず

セルジーンが副作用報告を怠っていたのは、血液がん治療薬「レブラミド」「ポマリスト」「デキサメタゾン」の3製品を服用した患者のうち、死亡したものの原因が特定できなかった海外の症例4573例。報告の遅れは、最大で約6年間に及びました。

 

法律の規定は…

医薬品医療機器等法(薬機法)では、製薬企業の副作用報告義務について

副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生(中略)を知ったときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない」(68条の10の1)

と規定。さらに同法施行規則では

死亡の発生のうち、当該医薬品の副作用によるものと疑われるもの」は把握から15日以内に報告しなければならない」(228条の20の1)

と定められています。ここで言う「副作用によるものと疑われるもの」は、薬との因果関係を否定できるもの以外の症例を指しており、原因が特定できないものも含め因果関係が不明なものも報告の対象となります。

 

厚生労働省の発表によると、セルジーンは原因が特定できない海外の死亡事例が報告対象になることを会社として認識しておらず、他社から転職してきた医薬品安全性情報の評価責任者の指摘で報告の必要があるということを認識しました。

 

報告漏れの症例はいずれもがんの進行による死亡とみられ、副作用の可能性は低いといいます。セルジーンは「精査・評価したところ、安全性プロファイルに影響を及ぼすような懸念事項は認められていない」とコメントしました。

 

5500例未報告も…3年足らずで9社発覚

厚労省のまとめによると、2015年度に国が受けた医薬品の副作用報告のうち、医師や薬剤師など医療従事者からの報告は6129件だったのに対し、製薬企業からの報告は5万977件。企業からの報告は医薬品の安全対策の要ですが、過去を振り返っても報告漏れは後を絶ちません。

 

厚労省や企業の発表などをもとに、副作用報告義務違反で初めて行政処分が行われた14年7月以降に明らかになった報告漏れの事例をまとめました。今年3月までの3年足らずの間に9社13件の報告漏れが発覚しており、このうち4社7件で行政処分が行われています。

製薬企業による副作用報告漏れ

ノバルティス 3度処分

厚労省が初めて副作用報告漏れを理由に行政処分を行ったのは、14年7月のノバルティスファーマに対する業務改善命令。同社の白血病治療薬「タシグナ」の医師主導臨床研究「SIGN」への不適切な関与を調査する過程で、「タシグナ」と同「グリベック」の副作用14例の報告を怠っていたことが発覚しました。

 

さらにノバルティスが調査を行ったところ、ほかにも26製品で3264例に上る報告漏れがあったことが判明。15年3月、副作用報告義務違反としては初めて、業務停止命令(15日間)を受けました。同じ年の11月には57製品5475例の報告漏れが新たに分かり、業務改善命令の処分を受けています。

 

ノバルティスによる副作用報告漏れを受けて、厚労省は15年2月、すべての第一種医薬品製造販売業者(処方箋医薬品を製造販売)を対象に、報告漏れがないか自主的に点検するよう要請。その結果、6社88例の報告漏れが判明しました。

 

このうちメルクセローノは、当初は「報告漏れなし」と回答したものの、後に抗がん剤「アービタックス」で42例の報告漏れがあったことが判明。ファイザーは抗がん剤「スーテント」など11製品212例の報告漏れで15年9月に業務改善命令を受けました。

 

治験薬でも報告漏れ

ギリアド・サイエンシズでは、C型肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」など3品目の治験中に、海外で発生した副作用を把握したにも関わらず報告を怠ったとして業務改善指示の処分に。ノバルティスも治験薬28品目で国内外の154例を報告していなかったことを理由に処分を受けています。

 

薬機法では、治験中の薬剤についても副作用報告義務を

治験の対象とされる薬物等について、当該薬物等の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生(中略)を知ったときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない」(80条の2の6)

と規定。同法施行規則では

死亡や死亡につながるおそれのある症例は7日以内、そのほかは15日以内に報告しなければならない(273条1項、2項)

と定められています。

 

「体制不備」「理解不足」「システム障害」…報告漏れなぜ起こる?

副作用報告漏れの原因

なかなかなくらない副作用報告漏れ。原因はどこにあるのでしょうか。

 

「有害事象に関するトレーニングを受けていたにも関わらず、MR が知り得た全ての有害事象を報告することの重要性を十分に認識していなかったことに加え、上長(営業所長)及び営業部長を含む営業部門の管理者の監視が十分ではなかったことが問題として考えられる」

 

ノバルティスが最初の業務改善命令を受けて厚労省に提出した業務改善計画には、報告漏れの原因についてこのような記載があります。MRだけでなく、上長や部長を含む営業部門全体で副作用報告の認識が不十分だったことが、問題を発生させ、それを助長したと分析しました。ノバルティスは研修などを通じて「知り得たあらゆる有害事象が報告対象であり、24 時間以内に安全管理統括部門に報告する社内ルールを改めて周知した」といいます。

 

ファイザーの事例では「安全管理上の体制不備」が原因とされました。

 

MRが会社に報告する医療従事者との面談記録には副作用情報を記入していたにも関わらず、それが安全管理部門に届いていないケースがあったといいます。厚労省は「安全管理責任者または安全管理実施責任者が安全管理情報を適切に収集する義務を果たしていなかった」とも指摘。ファイザーは業務改善命令を受けて、安全管理の手順書を見直すとともに、MRや安全管理責任者への教育を行いました。

 

厚労省の自主点検でも、医療関係者から入手した講演資料や、コールセンターに寄せられた患者情報に含まれていた副作用が安全管理統括部門に報告されなかったことが主な原因として挙がりました。メルクセローノの事例では、安全管理統括部門での使用成績調査票に対する確認が不十分だったことから、有害事象の症例を認識していませんでした。

 

法令への理解不足が原因となったケースもあります。

 

セルジーンは「海外の安全性情報に関して、死因が特定されていない死亡症例を誤って報告不要と判断したことに起因する」とコメント。厚労省は「薬機法と同法施行規則に対する理解不足」と指摘しました。治験薬に関する海外の副作用情報を報告していなかったギリアド・サイエンシズも、報告義務についての認識不足と原因を分析。厚労省の自主点検でも、MRが報告不要と誤って判断したケースがありました。

 

三役制度 改善を検討

行政処分が相次いだことを受け、厚労省は、いわゆる「三役制度」の運用改善を図る方針です。三役制度とは、医薬品の品質管理・安全管理を適正に行うため、製薬企業に「総括製造販売責任者」「品質保証責任者」「安全管理責任者」の設置を義務付けている制度。業界団体を通じて行った製薬企業へのアンケートでは、「三役の組織上の上位者と法律上の指揮命令系統にズレがある」といった課題が指摘されました。

 

企業からの副作用報告は医薬品の安全対策の要。管理体制の整備とともに、法令や副作用報告の重要性に対する認識を徹底し、それを維持していくことが大切と言えそうです。

 

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