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ニュース解説

GDPついに導入?「ハーボニー」偽造品問題 流通規制強化へ

C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品問題で、流通に関与した卸売業者や薬局に、自治体が相次いで医薬品医療機器等法に基づく改善措置命令を出しました。ニセモノが薬局から患者の手に渡るという、前代未聞の事態となった今回の偽造品問題。現金問屋と呼ばれる卸売業者が形成する「裏」の医薬品流通ルートの存在もさらけ出しました。

 

自治体は販売許可の取り消しや業務停止などさらなる行政処分を行う構えといい、厚生労働省は医薬品の適正流通の国際基準であるGDP(Good Distribution Practice)の導入も視野に、規制強化の検討を始めました。偽造品の出所もいまだ明らかになっておらず、問題はこれで終わりというわけにはいきません。

 

出所は未だ不明「秘密厳守」全容解明の壁に

東京都と大阪府は3月13日、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品の流通に関与した卸売業者6社に、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく改善措置命令(行政処分)を出しました。

 

命令を受けたのは、最初に無許可の個人から偽造品を仕入れた「エール薬品」(東京都千代田区)と、転売先の▽「大興薬品」(同)▽「高洋薬品」(同)▽「フジ薬品」(同)▽「野川薬品」(東京都台東区)▽「グローバルネットエルズ」(大阪市)――。いずれも、メーカー以外のルートから仕入れた薬を正規ルートよりも安く医療機関や薬局に転売する、いわゆる「現金問屋」です。

 

改善措置命令を受けて、これまで厚生労働省が業者名を伏せて公表してきた偽造品の流通ルートにも、ようやく社名が入りました。

 

偽造品はエール薬品から大興薬品、フジ薬品、高洋薬品の3社に渡り、さらに野川薬品とグローバルネットエルズを経由して、薬局チェーン「関西メディコ」が運営する「サン薬局」3店舗に納入。最終的には1ボトルが調剤され、患者の手に渡りました。関西メディコには、奈良県と奈良市が3月7日に改善措置命令を出しています。

「ハーボニー」偽造品の流通ルート

 

 現金問屋6社に対する今回の改善措置命令は、模造医薬品の販売を禁じる薬機法55条2項や、添付文書など定められた記載のない医薬品の販売を禁じる同1項に違反したことが理由です。ただ、処分はこれにとどまりそうにありません。

 

東京都と大阪府は、医薬品の適正な管理を義務付ける規定にも違反したとみて、販売許可取り消しなど追加の行政処分を検討しているといいます。奈良県と奈良市も、改善措置命令以外の処分を検討しているとコメントしています。

 

一方で、偽造品の出所は未だに分からないままです。

 

偽造品流通の出発点となったエール薬品は、医薬品の販売許可を確認せずに仕入れ、架空の社名を記載するなど、ウソの記録を残していたといいます。厚労省と警察は、エール薬品に偽造品を持ち込んだ人物と製造元の特定を急いでいますが、現金問屋がうたう「秘密厳守」の慣習が、全容の解明を難しくしています。

 

本人確認を厳格化 さらなる規制強化検討

今後の焦点となるのは、偽造薬の流通防止に向けた規制の強化です。

 

「2度とこういうことが起こらないためには、当然、制度の改変が必要だと思っている」。塩崎恭久厚生労働相は3月9日の参院厚生労働委員会で、偽造医薬品の流通防止に向けて、規制強化も含めた制度的な対応を検討する考えを示しました。

 

これに先立つ2月16日、厚労省は全国の医薬品卸売業者や薬局に対し、

▽医薬品を購入する際は、身分証明書などの提示を求めて本人確認を行うこと
▽本人確認と併せて販売許可番号や連絡先を確認し、氏名とともに記録に残すこと
▽購入した医薬品が本来の容器・包装に収められているか確認するとともに、疑念がある場合には仕入れの経緯や管理状況を確認すること

を求める通知を出しました。

 

薬機法の施行規則では、医薬品の売買を行う際、品名や数量、日付、相手の氏名を記録することを義務付けていますが、本人確認までは求めていません。現金問屋の秘密性の高い取り引きは、こうした法令の隙きを突くことで成り立ってきました。本人確認が徹底されれば、許可を持たない人物による不正な販売は発覚しやすくなります。

「ハーボニー」偽造品をめぐる経緯

厚労相がPIC/S-GDPに言及

規制強化の議論で特に注目なのは、医薬品の適正な流通を確保するための国際基準「GDP(Good Distribution Practice)」の導入と制度化です。

 

日本では現在、医薬品の製造から出荷までは「GMP(Good Manufacturing Practice)」が省令として定められていますが、出荷後の流通を管理する制度的な規制はありません。現状では、日本医薬品卸売連合会(卸連)の自主基準「JGSP」で適正流通の管理を行っています。

 

塩崎厚労相も3月9日の参院厚労委で、査察情報を国際的に共有するPIC/S(医薬品査察協定・医薬品査察協同スキーム、日本は2014年に加盟)が定めたGDPガイドラインに言及。「国際的な動向も踏まえながら制度的な対応を検討していきたい」と述べました。

 

PIC/SのGDPガイドラインへの対応は、もともと日本がPIC/Sに加盟した時からの課題ではありました。「JGSP」による流通管理は、卸連に加盟していない現金問屋には及ばず、それが今回、偽造品の流通を招いた面もあります。塩崎厚労相は「(PIC/SのGDPでは)取引相手の適格性を事前に評価することなどが定められている。こうした制度的な対応も含めて検討しなければ(偽造品が)すり抜けていってしまう」と強調しました。

 

一方、GDP導入による流通管理の厳格化は、医薬品卸売業者にとって大きな負担となる可能性もあります。国際標準を満たしながら、どう日本に合った形で導入していくのか、課題も少なくありません。

 

現金問屋が形成する転売市場は、在庫を現金化したい薬局や、少しでも安く医薬品を手に入れたい医療機関・薬局にとっては好都合な存在です。詐欺や脱税など不正の温床ともなってきた一方で、「必要悪」との意見も聞かれます。

 

そもそも偽造品を持ち込む人物がいなければ流通することもなかったわけですが、だからといって非正規の流通ルートをこのまま放置しておいていいということにはならないでしょう。

 

塩崎厚労相は3月14日の記者会見で「医薬品の製造から患者さんに至るまでの一貫した安全な流通を実現しないといけない。どのような規制を加えていき、このようなことが二度と起きないようにできるのかということをしっかり議論していただいて、早く実際のルール化を図っていきたい」と述べ、検討会を立ち上げて規制強化策の検討を本格化させる方針を明らかにしました。偽造品の侵入を許さない実効性のあるルールづくりが求められています。

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