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【UPDATE】転売に次ぐ転売…「ハーボニー」偽造品がさらけ出した医薬品流通の暗部

C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品問題が、さらなる広がりをみせています。奈良県の薬局チェーンで偽造品の入ったボトル5本が見つかったのに続き、東京都内の卸売業者2社から新たに9本の偽造品を発見。さらに別の都内の卸売業者からも1本が見つかりました。

 

厚生労働省は2月1日、偽造品の流通ルートをほぼ確定したと発表しました。最終的に偽造品の流通に関与したとされた卸売業者は6社。正規とは異なる裏のルートで、転売に転売が重ねられていました。流通の起点となった業者は、販売許可のない個人から偽造品を仕入れたといいます。

 

安全だと信じられていた日本の医薬品流通。その暗部の一端を、「ハーボニー」の偽造品がさらけ出しました。

 

※この記事は、厚生労働省の2月1日の発表(偽造品の成分分析結果と流通ルートの確定)を受けて、1月30日に掲載した記事の内容を一部修正したものです。

 

偽造品がたどった複雑な流通ルート

「医療を食い物にして金儲けしようとすることは許されるものではない」。1月24日の記者会見で、塩崎恭久厚生労働相は憤りを隠しませんでした。

 

この前日、厚生労働省は、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が入ったボトルが、新たに東京都内の卸売業者2社から計9本見つかったと発表しました。さらに2月1日には、都内の別の卸売業者から偽造品1本を発見。奈良県の薬局チェーン「関西メディコ」で発見された5本と合わせ、見つかった偽造品は15本に上ります。

 

見つかった偽造品は、正規と同じボトルに色や形の異なる錠剤が入っており、外箱や添付文書がない状態で流通していました。偽造品のラベルに記載されたロット番号は、いずれも正規品でも使用されている番号で、ロットから正規品と偽造品を見分けることはできません。

 

製造販売元のギリアド・サイエンシズや東京都などが、これまでに見つかった偽造品のうち6本の成分を分析した結果、3本は中身がすべてビタミン剤。残りは、別のC型肝炎治療薬「ソバルディ」と漢方製剤が混在したものと、すべて「ソバルディ」のもの、「ハーボニー」と「ソバルディー」が混在したものでした。

 

問題が広がりを見せる中、驚かされたのは偽造品がたどった複雑な流通ルートです。厚生労働省は当初、偽造品の流通に9つの卸売業者が関与したと発表していましたが、その後の調査でこのうち3社は正規品を販売していたことを確認。厚労省は、6つの卸売業者が偽造品の流通に関与したと確定しました。

 

「ハーボニー」偽造品の流通ルート(厚生労働省の2月1日の発表資料をもとに作成)

偽造品は、都内の卸売業者Aから別の都内の卸売業者3社に渡り、このうち2社からさらに東京と大阪の卸売業者2社を経由して、関西メディコが運営するサン薬局3店舗に納入。転売に転売が重ねられ、最終的にはこのうち1本が患者の手に渡ってしまいました。通常、正規のルートではメーカーから薬局・医療機関に納入されるまでに卸売業者が3つも間に入ることはありません。

 

無許可の個人から購入?

厚生労働省は、流通の起点となった卸売業者Aが偽造品を無許可の個人から仕入れたとみています。関西メディコで見つかった5本の偽造品が卸売業者Aに持ち込まれたのは昨年11~12月。卸売業者Aは、本人確認をせずに偽造品を買い取っていたとされます。

 

医薬品流通の世界には、メーカーから直接薬を仕入れて薬局や医療機関に販売する正規の卸売業者のほかに、メーカー以外のルートから薬を仕入れ、正規ルートよりも安く販売する卸売業者が存在します。薬局や医療機関から余った薬を買い取って転売する、いわゆる「現金問屋」です。卸売業者Aもそうでした。

 

「弊社は(ハーボニーの正規卸売業者の)スズケン以外に、医薬品卸売販売業4社よりハーボニーを購入していました。すべて医薬品医療機器等法はじめ関係法規に抵触することのない取引です」

 

偽造品が見つかった関西メディコは1月23日、ホームページに掲載したコメントで、仕入れに違法性がないことを強調しました。現金問屋は通常、医薬品の販売業の許可を得て営業しています。正規ではない裏ルートの取引とはいえ、許可があれば違法ではありません。

 

しかし、現金問屋を中心に形成される医薬品の転売市場は、従来から脱税など不正の温床になってきました。昨年には、生活保護を悪用し、横流し目的でギリアドのC型肝炎治療薬「ソバルディ」を騙し取った男女が逮捕される事件も起こっています。

 

転売市場が生んだ“隙”

「ハーボニー」の偽造品問題は、転売市場という裏のルートが、無許可の個人による偽造品を持ち込み、身元確認もせずに卸売業者が買い取るという不正な売買を許したために起こったと言わざるを得ません。転売市場が生んだ隙を突いて、偽造品は日本の市場に忍び込んできました。

 

転売市場という非正規の流通ルートといえど、まさか偽造品が紛れ込むとは関係者の誰もが想像もしていなかったことでしょう。だからこそ、外箱や添付文書がない状態で流通していても本物と疑わず、結局は患者のもとまで流れ着いてしまいました。

 

日本の医薬品市場はこれまで、国民皆保険と厳格に管理された流通網により、偽造医薬品が侵入する危険性は少ないと信じられてきました。しかし今回の問題は、転売市場を通せば日本でも偽造品を流通させられること、そして、ひとたび偽造品が紛れ込むと流通の過程で見つけ出すのは難しいことが明らかになりました。

 

安さに目がくらんだ薬局が現金問屋に手を出した――。今回の問題を薬局のモラルの問題として捉える向きもあります。確かに、非正規のルートから薬を仕入れた薬局の見識は疑われても仕方ありませんが、同様の問題は病院や診療所でも起こらないとも限りません。モラルに頼った対策は、どこかで必ずほころびが出てきます。偽造品の侵入を許した構造的な隙を埋めなければ、再び同じような問題が起こりかねません。

 

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