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迫る特許切れ “特効薬”はM&A―大日本住友 買収・導入を積極展開

最主力品の抗精神病薬「ラツーダ」の特許切れが迫る大日本住友製薬が、パテントクリフの回避へ積極的にM&Aや製品導入を仕掛けています。昨年は、実用化が近い開発品を持つバイオベンチャー2社の買収を発表。さらに、スイス・ノバルティスからCOPD治療薬3製品の米国販売権を獲得しました。

 

連結売上高の4分の1余りを稼ぐ「ラツーダ」の特許切れで、業績悪化が懸念される大日本住友。相次ぐ買収や製品導入は、“ラツーダクリフ”の特効薬となるのでしょうか。

 

 

ベンチャー2社を相次ぎ買収 大型の新薬候補2品を獲得

大日本住友製薬は昨年後半、海外のバイオベンチャー2社の買収に相次いで合意しました。1社は、中枢神経系領域の医薬品開発を手がけるカナダのシナプサス・セラピューティクス。もう1社は、抗がん剤を開発する米トレロ・ファーマシューティカルズです。

 

シナプサスの買収額は約6億3500万ドル(当時のレートで約659億円)。買収は昨年10月に完了し、米子会社サノビオンの完全子会社となりました。

 

トレロとは昨年12月に買収合意し、今年2月に買収が完了する予定。買収には一時金2億ドル(買収合意時のレートで約236億円)を支払うほか、開発マイルストンとして最大4億3000万ドル(約507億円)、販売マイルストンとして最大1億5000万ドル(約177億円)を支払う可能性があり、買収の対価は最大で計920億円に達する見通しです。

大日本住友がこれまでに行った海外企業の買収 セプラコール サノビオン ボストン・バイオメディカル エレベーション シナプサス トレロ 買収額 一時金 開発マイルストン 販売マイルストン 大日本住友のプレスリリースをもとに作成

ピーク時売り上げはいずれも500億円規模

大日本住友は2つの買収で、承認申請が近く、いずれもピーク時に500億円規模の売り上げを見込む開発後期の新薬候補2品を手にしました。

 

シナプサス買収では、パーキンソン病治療薬「APL-130277」を獲得。2017年度の前半(4~9月)に米国で申請予定です。

 

「APL-130277」の有効成分アポモルヒネ塩酸塩は、パーキンソン病のオフ症状(薬の効果が薄れて急に体が動かしにくくなる症状)を一時的に改善する薬として注射薬がすでに承認されていますが、シナプサスの開発品は、フィルム製剤を舌下に投与するのが特徴。注射剤に比べて体が動かしにくい状況でも投与が簡単で、速やかな効果発現が期待できるといいます。

 

トレロ買収で獲得したのは、白血病治療薬アルボシディブ。サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)阻害剤という作用を持つ化合物で、CKD9を阻害することで、がん細胞の分裂や増殖に関与している遺伝子MCL-1の発現を抑制し、がん細胞の細胞死を誘導します。

 

アルボシディブは、急性骨髄性白血病の適応で臨床第2相(P2)試験を終了。バイオマーカーが陽性の慢性骨髄性白血病の適応でP2試験を行っています。大日本住友はバイオマーカー陽性の適応での開発を優先する考えで、米国で最速で18年度の承認申請を目指しています。

 

M&Aに託すV字回復 ノバルティスからはCOPD薬の販売権

大日本住友がこれら2つの買収に託すのは、2019年に特許切れを迎える抗精神病薬「ラツーダ」の穴埋めと、そこからのV字回復。多田正世社長は昨年12月21日、トレロ買収に関する電話会見で「ラツーダのパテントクリフ後の成長に寄与すると期待している」と語りました。

 

「ラツーダ」の売上高は1271億円(16年度見込み)に上り、連結売上高の3分の1を稼ぐ大日本住友の最主力品。特許切れのインパクトは大きく、昨年5月に公表した中期経営計画の見直しでは、19年度に営業利益がゼロに近い水準まで落ち込むとのイメージを示していました。

ラツーダ発売後の大日本住友の連結売上高推移 連結売上高 ラツーダ売上高 大日本住友の決算資料をもとに作成

ポスト・ラツーダの大本命として12年の米ボストン・バイオメディカル買収で獲得した、がん幹細胞を叩くとされるナパブカシンの開発は、当初の計画から遅れています。ブロックバスターとなることが期待されていますが、「ラツーダ」の特許切れには間に合わなくなりました。特許切れによる減収を補い、早期に業績を回復させるには、近い将来、収益に貢献する開発後期品が必要不可欠でした。

 

これら2つの買収とは別に、昨年12月にはスイス・ノバルティスと慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬の米国での独占販売権に関するライセンス契約を締結。「UTIBRON(日本製品名ウルティブロ)」「SEEBRI(同シーブリ)」「ARCAPTA(同オンブレス)」の米国販売権を獲得しました。

 

呼吸器領域は、米子会社サノビオンの得意領域。昨年7月には、自社でもCOPD治療薬を米国で申請しています。ノバルティスの決算によると、これら3つのCOPD治療薬の2015年の売上高は全世界で5億7600万ドル(15年の平均レートで697億円、前年比19%増)、16年は第3四半期までで4億9100万ドル(前年同期比16%増)。このうち米国での売上高がどれほどかは分かりませんが、販売権の獲得はすぐに収益を始めます。パンテントクリフの影響を緩和するのに果たす役割は小さくはないでしょう。

 

国内事業は立て直しの真っただ中 M&A・導入「引き続き検討」

大日本住友はM&Aや製品導入に1500~2000億円の資金を用意しており、シナプサスやトレロの買収もその一環です。

 

多田社長は昨年12月21日の電話会見で「(パテントクリフ)対策だけではないが、将来への投資として1500~2000億円までは使おうということは以前から言ってきた。今回2つ買収をし、金額としてはいい線にいっている。相当そろってきているのは事実だが、引き続きM&Aや導入の検討は進めていく」と述べました。

 

一方、国内では、早期退職を行ったり、生産拠点の統廃合を進めたりと、合理化による立て直しの真っただ中。長期収載品の売り上げ縮小や新製品発売の遅れなどにより、国内事業の業績低迷に歯止めがかからない中、当面は成長の材料を海外に求めざるを得ないのが実情です。

 

「ラツーダ」の成長で大日本住友の米国事業は大きく成長しました。特許切れ後も、その重要性は変わらないでしょう。シナプサスとトレロの買収、COPD治療薬の販売権獲得で“ラツーダクリフ”の対策には一定のメドがつきました。獲得した品目を、ナパブカシンのように計画から遅れることなく市場に届けられるか、そして見込み通りに成長させられるかが、V字回復へのカギとなります。

 

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