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政策・制度

【グラフで見る】概算医療費、40兆円超え 13年連続で過去最高更新…高額薬剤の影響浮き彫りに

厚生労働省が9月13日、2015年度の「医療費の動向」「調剤医療費の動向」を公表しました。15年度の医療費は概算で41.5兆円(前年度比1.5兆円増)と初めて40兆円を超え、13年連続で過去最高を更新したことは、主要メディアでも報じられました。

 

2010年度以来、5年ぶりに3%台後半の高い伸びとなった背景にあるのは、調剤医療費、特に薬剤料の増加。「ソバルディ」「ハーボニー」など、C型肝炎に対する高額な新薬のインパクトの大きさが改めて浮き彫りになりました。

 

 

5年ぶりに3%台後半の伸び

厚生労働省が9月13日に発表した2015年度の概算医療費は41.5兆円。前年度から1.51兆円、率にして3.8%増加しました。概算医療費が40兆円を超えるのは初めてで、過去最高を更新するのは13年連続です。

 

厚労省が今回発表した医療費は、医療機関からの診療報酬請求に基づく速報値。公的医療保険や公費負担医療(生活保護など)はカバーしていますが、労災や全額自費の医療費は含まれないため、「概算医療費」と呼ばれます。

 

概算医療費の伸びは、12~14年度は2%前後の伸びにとどまっていましたが、15年度は大きな伸びに転じました。3%台の伸びとなるのは11年度以来4年ぶり、3%台後半となるのは10年度以来5年ぶりです。

 

概算医療費の推移

 

医療費押し上げた「調剤」

概算医療費の内訳は、「入院」が16.4兆円で全体の39.5%を占め、「入院外(外来)」が14.2兆円(34.3%)、「調剤」が7.9兆円(19.0%)、「歯科」が2.8兆円(6.8%)と続きます。特に伸びが大きいのが調剤で、前年度から6800億円(9.4%)増加。調剤医療費の伸びが概算医療費全体を押し上げる大きな要因と言えます。

 

調剤医療費の推移

 

調剤基本料や調剤料などの「技術料」と「薬剤料」などが含まれる調剤医療費は、ここ数年、医療費全体の伸びを上回るペースで増加しています。要因としては、▽高齢化に伴う患者増や院外処方箋を発行する医療機関の増加により、処方箋の枚数が増加▽技術料や薬剤料の上昇により処方箋1枚あたりの単価が上昇――が挙げられますが、上のグラフを見ても分かる通り、15年度は過去10年でも最も大きな伸びとなりました。

 

抗ウイルス剤は3.5倍に 「ハーボニー」など影響

調剤医療費がこれほど大きく伸びたのは、薬剤料が大幅に増加したからです。

 

15年度の調剤医療費を技術料と薬剤料に分けて見てみると、技術料は1兆8283億円(3.4%増)だったのに対し、薬剤料は5兆9783億円(11.3%増)と大きく伸びました。薬剤料の伸びは薬価改定によって2年ごとに上下しますが、15年度は薬価改定のなかった年としても近年にない高い伸びを示しました。

 

技術料と薬剤料の推移

 

薬剤料を大きく押し上げたのは、14~15年に相次いで発売されたC型肝炎治療薬の影響とみられます。

 

薬効分類別薬剤料(内服薬)トップ10

 

C型肝炎治療薬を含む「抗ウイルス剤」の薬剤料は、前年度の1185億円から3.5倍に増え、4139億円に達しました。薬剤料全体の増加は6000億円ほどなので、抗ウイルス剤だけで増加の半分を占めた計算です。厚労省は、概算医療費の伸び3.8%のうち、1%程度はC型肝炎の新薬によるものだと分析しています。

 

IMSジャパンのまとめによると、ギリアド・サイエンシズの「ハーボニー」は15年度に2693億円、「ソバルディ」は1509億円を売り上げ、国内医療用医薬品の売上高ランキングで1位と2位を独占。発売から急激に売り上げを伸ばし、市場を席巻したC型肝炎の新薬ですが、医療保険財政にも大きなインパクトを与えたことが改めて浮き彫りになりました。

 

薬剤料の伸びを薬効分類別に分解すると…

 

ただ、薬剤料が増えたのは、C型肝炎治療薬の影響だけではありません。薬効別に薬剤料を見ると、トップの「血圧降下剤」を除けば上位は軒並み増加。前年度から減ったのは、「合成抗菌薬」や「血管拡張剤」などごくわずかです。

 

伸びが大きいのは、分子標的薬が相次いで発売されている「その他の腫瘍用薬」(19.7%増)や、患者数が増加する「糖尿病用剤」(11.2%増)、認知症治療薬などを含む「その他中枢神経系用薬」(9.1%増)など。この数字は薬局で調剤された内服薬のみを対象としたものですので、病院で投与される薬剤は含みません。抗体医薬の使用が広がる腫瘍用薬の伸び率は、病院も含めるとさらに大きくなると考えられます。

 

 薬剤費が増えた薬効・減った薬効

 

薬価制度は抜本見直しへ

厚労省が薬剤費抑制のために推進している後発医薬品の使用割合は増加を続けており、16年3月時点で63.1%。15年度1年間で4.3ポイント上昇しましたが、高額薬剤や高齢化の影響がこれを上回っている状況で、薬剤費の増加にはなかなか歯止めがかかりません。

 

厚労省は昨年「17年半ばまでに70%、18~20年度のなるべく早期に80%」とする新たな後発品の使用目標を設定。薬局や医療機関などへの報酬上のインセンティブを引き上げ、使用を強力に後押ししています。

 

高額薬剤をめぐっては今年4月、予想を大幅に超えて売り上げを伸ばした医薬品の薬価を最大50%引き下げる「特例拡大再算定」を導入。「ソバルディ」や「ハーボニー」も3割以上の薬価引き下げを受けました。高額薬剤の費用対効果を評価する取り組みも試行的にスタートしています。

 

加えて、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の薬価を、18年度の次回薬価改定を待たずに引き下げることを検討。「オプジーボ」などを対象に、適正使用を厳格化するためのガイドラインの策定も進みます。

 

18年度の次期薬価制度改革に向けては、薬価のあり方全体について抜本的な見直しが議論されることになっています。薬剤費を抑制しながらイノベーションを評価するというジレンマに、最適解を見つけることはできるのでしょうか。

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