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バイオシミラー、激しさ増す開発競争―米アムジェンも日本市場に名乗り、エタネルセプトはP3に3社

近く本格化するバイオ医薬品の特許切れを見据え、製薬各社が激しいバイオシミラーの開発競争を繰り広げています。

 

各社がアライアンスを通じてラインナップを拡充させる中、米アムジェンが第一三共とバイオシミラー9品目の商業化で提携すると発表しました。その第一三共は、関節リウマチ治療薬エタネルセプトのバイオシミラーを2016年度中に申請予定で、持田製薬など2社もP3試験を実施中。同じ関節リウマチ治療薬のアダリムマブや、トラスツズマブなどの抗がん剤でも開発が進んでいます。

 

ピークアウトが迫る低分子医薬品の特許切れ。世界的なバイオ医薬品企業の参入で、バイオシミラーの主導権をめぐる争いは、一段と激しさを増しそうです。

 

 

第一三共、アムジェンと提携で品揃えトップクラスに

第一三共と米アムジェンは7月14日、アムジェンが開発中のバイオシミラーについて、日本での商業化で独占的契約を結んだと発表しました。

 

提携の対象となるのは、開発の後期段階にある関節リウマチ治療薬アダリムマブ(先行品名ヒュミラ)や抗がん剤ベバシズマブ(アバスチン)、同トラスツズマブ(ハーセプチン)など9品目。アムジェンのパイプラインにはこのほか、関節リウマチ治療薬インフリキシマブ(レミケード)や抗がん剤セツキシマブ(アービタックス)、同リツキシマブ(リツキサン)が並んでおり、こうした品目が提携対象に含まれているとみられます。

 

第一三共は現在、米コヒーラス社から導入した関節リウマチ治療薬エタネルセプト(エンブレル)を開発中で、臨床第3相(P3)試験をすでに終了。2016年度中の承認申請に向けて準備を進めています。

 

アムジェンとの提携でこれに9品目が加わると、第一三共のバイオシミラーの品揃えは国内トップクラスに。中山譲治社長は「自社開発に加え、他社との協業を推進し、幅広い品揃えを実現していく」と意気込みます。

 

増えるプレーヤー、充実するパイプライン

バイオ医薬品の特許切れが本格化するのを間近に控え、バイオシミラー開発のプレーヤーは増え、各社のパイプラインも充実してきました。

 

開発中のバイオシミラー

 

申請まで秒読み段階となっているのが、エタネルセプト。第一三共は16年度の申請、17年度の承認・発売を見込んでいるほか、持田製薬が18年度の承認取得を目指してP3試験を実施中。陽進堂と後発医薬品大手ルピン(インド)の合弁会社YLバイオロジクスもP3試験を進めています。

 

持田製薬、広範な提携でラインナップ拡充

第一三共と並んでパイプラインの充実ぶりが目立つのが、持田製薬です。エタネルセプトのほか、アダリムマブと骨粗鬆症治療薬テリパラチド(フォルテオ)が新たにP3試験に入りました。

 

持田製薬も幅広いアライアンスでパイプラインを拡充させています。エタネルセプトとアダリムマブでは、韓国のLGライフサイエンスと提携。テリパラチドは、ハンガリーのゲデオン・リヒターとの長期包括提携からパイプラインに加わりました。バイオベンチャーのジーンテクノサイエンスとはがん領域のバイオシミラー開発で提携を結んでおり、今後、臨床入りするものが出てくる見通しです。

 

富士製薬工業と共同開発し、自社初のバイオシミラーとして13年に発売したヒト顆粒球コロニー形成刺激因子(GCS-F)製剤フィルグラスチム(グラン)は、競合する4社を抑えてトップシェアを獲得。販売面でも実績を固めつつあります。

 

がん領域ではトラスツズマブなどターゲット

がん領域では、トラスツズマブやベバシズマブ、リツキシマブなどがターゲット。ファイザーがこれら3つの品目でP2/3試験を行っており、がん領域の後発品に強い日本化薬はトラスツズマブのP3を実施中しています。

 

日医工やMeijiSeikaファルマ、サンドなど後発品に強い企業もこれらの品目の開発に名乗りを上げており、市場競争も激しくなりそう。サンドはリツキシマブの販売で協和発酵キリンと提携するなど、上市後を見据えたアライアンスも見られるようになってきました。

 

“オーソライズド・バイオシミラー”のインパクト

一方、低分子の後発品ではおなじみとなったオーソライズド・ジェネリックを、バイオ医薬品に展開しようという動きも出てきました。

 

協和発酵キリンは今年1月に公表した中期経営計画で、2019年に特許切れを迎える腎性貧血治療薬「ネスプ」(ダルベポエチンアルファ)のオーソライズド・ジェネリックの開発を検討する方針を表明。同社の花井陳雄社長は「法律上のことやレギュレーション上のことなど、実現にはハードルもある」としながらも、「新しいチャレンジだ」と意欲を示しています。

 

「ネスプ」は低分子医薬品ではなく、バイオ医薬品なので、厳密に言えば“オーソライズド・バイオシミラー”とも言うべきでしょうか。ダルベポエチンアルファのバイオシミラーは、キッセイ薬品工業とJCRファーマの共同開発品はP3試験に入っており、三和化学研究所や富士製薬工業、日医工も候補品を導入するなどして開発を進めています。

 

オーソライズド・ジェネリックは、▽先発品と同じ原薬や添加剤を使い、同じ方法で製造できる▽先発品の特許切れを待たずに競合他社に先行して発売できる――などが利点。市場での優位性はすでに低分子医薬品で実証されています。先行品との同等性に根強い懸念のあるバイオシミラーならなおさらでしょう。

 

オーソライズド・バイオシミラーが出現すれば、市場で圧倒的なシェアを握るのは確実で、競合他社は全く太刀打ちできない可能性が高いでしょう。バイオシミラー開発には多額の投資を要するだけに、協和発酵キリンの決断は各社のバイオシミラー事業にも大きな影響を与えそうです。

 

市場はまだ限定的

大型のバイオ医薬品の特許切れが近づき、参入企業も増えているバイオシミラーですが、現時点ではまだ市場は限定的です。

国内で販売されているバイオシミラーと、直近の年間売上高を表にまとめました。発売から6年がたったJCRファーマとキッセイ薬品工業のエポエチンアルファが60億円を売り上げたものの、先行品の市場が700億円規模のインフリキシマブはまだ数億~十数億円。本格的な普及はこれからです。

 

国内で販売中のバイオシミラー

 

60億円規模の製品に育ったエポエチンアルファも、発売当初は苦戦を強いられ、売り上げ目標が未達の年が続きました。転換点となったのは2012年4月。診療報酬改定で、人工腎臓(透析)の包括点数が引き下げられたことから、価格の低いバイオシミラーへの切り替えが進みました。キッセイ薬品の地道な情報提供により、先行品との同等性に対する理解が進んだことも、売り上げを拡大させている大きな要因です。

 

日本化薬は16年度、インフリキシマブの売上目標を41億円に設定。日医工の競合品も承認が近づいており、本格的な普及に向けてアクセルを踏み込みます。

 

高額療養費も普及の壁に

今後、大型品に続々とバイオシミラーが参入してくることで、市場は開かれていく見通しですが、普及には課題も残ります。

 

理解が進みつつあるとはいえ、臨床現場では先行品との同等性に対して依然として根強い懸念があるのも事実です。臨床現場での評価を高めることが普及に向けた最大のカギで、同等性への懸念を払拭するためのエビデンス構築や情報提供活動は欠かせません。

 

一方で、関節リウマチやがんなどは治療費が高額になりがちで、一定額を超えた分は自己負担せずに済む高額療養費制度の対象となる患者も多くいます。バイオシミラーの使用は公的保険財政にとってはメリットが大きいものの、先行品とバイオシミラーのどちらを選んでも自己負担額が変わらないとなれば、患者側にとってはあえて切り替える動機に乏しいのが現状です。

 

市場性のみならず、医療費削減の観点からも期待の高いバイオシミラー。患者へのインセンティブも含め、普及には政策的な後押しが必要となりそうです。

 

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