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日医工、米国企業買収で狙う「80%後」の成長―迫る国内市場の停滞期、後発品企業も海外展開加速

国内市場の縮小を見据え、後発医薬品企業が海外市場の開拓を急いでいます。

 

国内最大手の日医工は今月11日、2018年にも予定するバイオシミラー投入の足がかりとするため、米国の後発品企業を買収すると発表。沢井製薬は17年にも米国で高脂血症治療薬の後発品を発売する予定です。

 

数量シェア80%に向かって右肩上がりを続ける国内後発品市場ですが、その先に待っているのは市場の停滞期。コスト競争力の強化を狙って海外に製造拠点を求める企業もあり、「80%後」をめぐる動きが活発化しています。

 

 

「世界トップ10への重要なステップ」

世界のジェネリック医薬品メーカートップ10入りを達成するための重要なステップ――。

 

今月11日、米国の後発品企業セージェント・ファーマシューティカルズ(イリノイ州)の買収を発表した日医工。同時に公表した説明資料の中で、今回の買収の意義をこう強調しました。日医工は売上高1435億円(2015年度)の国内最大手ですが、世界ではまだ20位あたり。田村友一社長は、富山市の本社で行った会見で「日本にとどまっていると成長は停滞する。日医工の将来の成長を継続するために買収を決断した」と語ったといいます。

 

後発品メーカーの売上規模

 

バイオシミラー展開の足がかりに

日医工が中期経営計画で成長戦略の柱に掲げているのが、バイオシミラーの展開と米国市場への参入です。セージェント買収の目的は、米国市場へのアクセスを早期に確保し、バイオシミラー展開の足がかりを築くことにあります。

 

セージェントは注射剤に強い後発品メーカーで、がんや感染症、救急の領域を中心に55の製品を販売。このうち3割は市場でトップまたは2位のシェアを獲得しています。

 

一方、日医工は、関節リウマチ治療薬インフリキシマブ(製品名「レミケード」)のバイオシミラーを19年にも米国で発売する予定。日医工は「セージェントが強みとする注射剤は、日医工が開発しているバイオシミラーがラインナップとして加わることで、よりいっそうの市場競争力を発揮する」とシナジーを期待します。

 

国内市場は停滞目前

今回の買収額は総額7億3600万ドル(約750億円)。売上高1435億円という日医工の規模からすれば、今回の買収はかなり大型の投資となります。財務負担のリスクから買収後に日医工株は売りが先行、株価は値を下げました。

 

そうまでして日医工が米国市場の開拓を急ぐのは、国内の後発品市場が停滞局面を迎える“その時”が迫っているからです。「日本にとどまっていると成長は停滞する」という田村社長の言葉が、その危機感を如実に物語っています。

 

国内の後発品市場は、国の強力な使用促進策を追い風に成長を続けています。矢野経済研究所が昨年発表したレポートによると、12年度に9315億円だった市場規模は、14年には1兆1130億円まで拡大。17年度には1兆4715億円に達すると予測されています。

 

後発品の使用割合(数量ベース)は15年9月時点で56.2%。政府はこれを18~20年度に80%以上に引き上げることを目標としており、それまでは市場の拡大基調は続く見通しです。

 

ただし、80%の目標を達成した後は、市場が縮小に転じるとの見方が少なくありません。大型製品の特許切れは18年ごろを境に減少するとみられ、薬価の引き下げや値下げ競争による価格の下落も懸念されます。16年度の薬価制度改革では、新たに薬価収載される後発品の薬価が先発品の4割まで引き下げられました。

 

高成長見込まれる米国のバイオシミラー市場

一方、日医工が狙う米国のバイオシミラー市場は、これから本格的な成長が始まる市場です。日医工によると、米国のバイオシミラー市場は、法や規制の整備が遅れていた影響で約220億円とまだ小規模。日医工のような新たなプレーヤーにも大きな参入機会が残されています。バイオシミラーの開発はようやく活発化してきたところで、今後市場は急成長するとみられています。

 

日医工が開発中のバイシミラーは3つ。19年に発売予定のインフリキシマブのほか、抗がん剤のトラスツズマブ(ハーセプチン)とリツキシマブ(リツキサン)が控えます。日医工によると、これら3品目の先行品の市場規模は計1兆600億円。セージェントを通じてスピーディーに市場投入を進め、成長市場でプレゼンスを確立したい考えです。

 

沢井は高脂血症薬で米市場参入へ

「80%後」の成長戦略は、どの後発品企業にとっても大きな課題です。

 

沢井製薬は13年に米国に現地法人を立ち上げました。高脂血症治療薬ピタバスタチン(リバロ)の後発品をすでに申請済で、17年にも発売できる見通しです。中期経営計画では海外事業の基盤構築を重点施策の1つに掲げており、ピタバスタチンに続く製品も複数準備しているようです。

 

Meiji Seika ファルマは昨年2月にインドの後発品企業メドライクを買収し、製造コストを低減するとともにアジア・アフリカに販売網を拡大。日本ケミファも、コスト削減と将来的なアジアへの販路構築を視野に、ベトナムに自社工場の建設を進めています。

 

市場拡大の波に乗って業績を伸ばしてきた後発品企業ですが、「80%後」の成熟市場で成長性を確保するのは容易ではありません。厚生労働省が昨年まとめた「医薬品産業強化総合戦略」では、「今の段階から将来を見越して、各メーカーは集約化・大型化も含めてそのあり方について検討することが必要ではないか」と指摘されています。業界再編も含め、生き残りをかけた動きが今後さらに活発化してきそうです。

 

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