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政策・制度

17年度の薬価改定はひとまず回避も…消費増税再延期、製薬業界にどう影響?

安倍晋三首相が、2017年4月に予定していた消費税10%への引き上げを、19年10月まで2年半延期することを正式に表明しました。これにより、製薬業界にとって直近の最大の課題となっていた17年度の薬価改定は行われないことが確実となりました。

 

しかし、増税分を当て込んでいた社会保障財源の見直しは避けられず、薬剤費を含む医療費への削減圧力は高まります。医薬品使用の適正化策に関する議論が加速するのは必至。高額薬剤は通常の改定時期に関わらず薬価の引き下げを行うべきとの意見も出ており、製薬業界にとっては難しい状況が続きます。

 

 

薬価引き下げが焦点だった17年度改定

消費税10%への引き上げは当初、15年10月に予定されていましたが、景気の低迷を理由に17年4月に延期。安倍首相は今回、「世界経済はリスクに直面している。内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだ」として、19年10月に再び延期すると表明しました。

 

消費税引き上げをめぐっては、製薬業界では17年4月の薬価改定が大きな懸案事項となっていました。17年4月の薬価改定では、増税分の上乗せに加え、市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを行うかが焦点となっていたからです。

 

今回、安倍首相が増税の再延期を決めたことで、17年4月に薬価改定を行う理由は消えました。16、18年度の通常の薬価改定の谷間に薬価の引き下げが行われれば、製薬企業の経営に大きなダメージを与えると懸念されていただけに、増税の先送りは短期的には製薬業界にプラスの面もあります。

 

社会保障、財源めど立たず 医療費にしわ寄せ

安倍首相は今月1日の記者会見で「(社会保障については)引き上げた場合と同じことを全て行うことはできない」とし、増税によって行うはずだった政策の一部を先送りすることを示唆。一方で、保育士や介護職員の処遇改善などは「財源を確保して優先して実施していく」と述べました。

 

しかし、必要な財源を十分確保できるかは、見通しが立っていません。首相は会見で、2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとした財政健全化目標は維持するとも明言しました。政府は、16年度からの3年間で社会保障費の伸びを1兆5000億円(年間5000億円)以内に抑える方針です。16年度は、特例拡大再算定などによる薬価の引き下げで抑制の多くの部分を絞り出しました。

 

消費増税による財源が見込めなくなった中、保育士や介護士の処遇改善に充てる財源を確保しつつ抑制分を捻出するのは至難の業。予算編成は困難を極めることが予想されます。専門家からは「増税延期により、さらなる医療費抑制策は決定的」との声も聞かれ、医療費へのしわ寄せが懸念されています。

 

薬剤費ターゲットに “適正使用”の流れ加速

医療費の中でも、とりわけ狙われやすいのが薬剤費。政府が2日に閣議決定した「骨太の方針2016」は、医薬品の適正使用を推進する方向性を明確に打ち出しました。適正使用を促すことで、薬剤費の削減につなげたい考えです。

 

骨太の方針に盛り込まれた医薬品の適正使用策は、

▽後発医薬品の使用促進
▽複数種類の医薬品処方の適正化
▽革新的医薬品の使用の最適化
▽生活習慣病治療薬などの処方のあり方の検討

など。薬剤費の削減はこれまで、薬価の引き下げに重点が置かれてきましたが、製薬業界からは「薬価の引き下げだけでは限界」といった声が上がっています。特に、がん免疫療法剤「オプジーボ」に端を発する高額薬剤の問題は、薬価の引き下げだけで解決できる問題ではありません。今後、医薬品の適正使用を推進する流れが加速していくことになります。

 

熱帯びる高額薬剤問題 「適応追加で薬価下げ」議論に

増税の先送りは、高額薬剤への風当たりを一層強めることにもなりそうです。

 

高額薬剤の問題は中央社会保険医療協議会(中医協)でも議論になっています。日本医師会は「適応追加によって対象患者が急激に拡大した薬剤は、2年に1度の薬価改定を待たずに薬価を引き下げるべき」と主張しています。

 

17年度に仮に消費増税に併せて通常の薬価改定が行われていたとすれば、肺がんへの適応拡大で市場が急拡大する「オプジーボ」には特例拡大再算定が適用され、薬価が大幅に引き下げられる公算が大きくなっていました。

 

17年度改定がなくなったことで、「オプジーボ」の薬価は18年度の次回改定まで引き下げられないことになります。高額薬剤が社会的な問題として取り上げられる中、高額薬剤に対する薬価引き下げの圧力が強まる可能性があります。適応追加に併せた薬価見直しの実現性は不透明ですが、高額薬剤の議論は熱を帯びていくことになりそうです。

 

消えてはいない毎年改定の懸念

増税延期により、製薬業界が懸念していた3年連続の薬価改定はひとまず回避されました。しかし、増税時期が通常の薬価改定の谷間の年である19年10月に設定されたことで、「18年4月」「19年10月」「20年4月」の3年連続改定の可能性が新たな問題として浮上してきます。連続改定の先にちらつく毎年改定への懸念は消えてはいません。

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