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ニュース解説

拡大する製薬企業の海外事業―命運左右する“グローバル新薬”、その実力は?

国内市場の不振も背景に、売り上げの半分前後を海外市場で稼ぎ出す日本の大手製薬企業。海外売上高比率は高い企業で60%を超える中、世界展開する“グローバル新薬”の成否は、各社の業績にダイレクトに響きます。

 

各社の命運を左右すると言っても過言ではない、グローバル新薬。その実力を、直近の動向から探ってみました。

 

 

新薬貢献で拡大する海外事業

まずは、直近の2016年3月期決算から、各社の海外事業の状況を眺めてみましょう。

 

下の表は、16年3月期決算から、国内の製薬企業の海外売上高比率をランキングしたもの。抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れが直撃した大塚ホールディングスを除けば、各社とも海外売上高比率を上昇させました。為替が円安に振れたことも大きな要因ですが、グローバル新薬の成長が海外事業の拡大に大きく貢献しています。

 

海外売上高比率ランキング

 

3000億円に届く勢いのイクスタンジ、ラツーダもブロックバスターに

発売からおおむね5年以内の各社の主なグローバル新薬を表にまとめました。

 国内製薬企業の主なグローバル新薬

 

海外売上高比率でトップとなったアステラス製薬は、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」(海外製品名「XTANDI」)が好調。12年9月に米国で発売された同剤は現在、世界約60カ国で販売中。売上高は2521億円(前期比83.7%増)に上り、免疫抑制剤「プログラフ」を抜いて同社の最主力品となりました。

 

16年度は、化学療法前の患者に対する適応でのさらなる浸透や米国以外での売り上げ拡大で、世界売上高は3000億円に届く勢い。乳がんや肝臓がんへの適応拡大に向けた開発も進行中で、好調なアステラスの業績を牽引します。

 

ベタニスも今期ブロックバスターへ

アステラスが得意とする泌尿器領域では、11年9月に世界に先駆けて日本で発売し、現在では約50カ国で販売されている「ベタニス」(海外製品名「ミラベトリック/ベットミガ」)が前期比1.5倍に成長。16年度は1004億円を見込み、ブロックバスターの仲間入りとなりそうです。

 

15年度に海外売上高比率が初めて50%を超えた大日本住友製薬は、北米で展開する抗精神病薬「ラツーダ」(日本未発売)がブロックバスターに成長しました。15年度の売上高は1204億円で、16年度は1267億円を予想。19年に特許切れを控えるラツーダのライフサイクルはピークに差し掛かっています。

 

米国でのがん事業の立ち上げが想定より遅れる中、ラツーダの収益をどこまで最大化できるかが、当面の業績を大きく左右することになります。

 

エンティビオが急成長する武田、エドキサバンにかける第一三共

海外売上高が2年連続で1兆円を超えた武田薬品工業は、収益回復を託して14年6月に発売した潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(日本未発売)が軽快に飛ばしています。

 

「エンティビオ」は発売初年度に278億円と垂直立ち上げに成功し、15年度は209.5%増の862億円。発売から1年半余りで累計売上高は1000億円を超えました。クリストフ・ウェバー社長は従来から「年間売上高20億ドル以上の可能性がある」と発言してきましたが、16年3月期決算の説明会では、これを18年度中に達成すると明言。大型化に向けて視界は良好です。

 

ニンラーロも「数十億ドル規模期待」

武田薬品が消化器領域とともに柱に据えるがん領域では、15年12月に米国で多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」(日本未発売)の販売がスタート。初年度は40億円を売り上げ、立ち上がりは良好といいます。「数十億ドル規模の製品になることを期待したい」(ウェバー社長)としていますが、欧州では今年5月、承認に否定的な見解が示されました。販売への影響が注目されます。

 

米で苦戦のエドキサバン、日欧での成長期待

第一三共は、16年から特許切れが始まるARB「オルメテック」の減収を、抗凝固薬エドキサバン(日欧製品名「リクシアナ」、米国製品名「サベイサ」)で補いたい考えです。しかし、米国では腎機能が正常な患者への投与が制限されており、苦戦を強いられています。

 

第一三共はアクセスの拡大に向けて規制当局と交渉を続けていますが、当面の成長は日本と欧州が中心になります。今年3月に発表した中期経営計画では、20年度までにエドキサバンを1200億円以上に引き上げるとしており、その大半は日本と欧州で稼ぐ計画。特許切れからの業績回復を担う製品だけに、その成否に注目が集まります。

 

エーザイのレンビマも立ち上がり好調

エーザイは15年2月発売の抗がん剤「レンビマ」が115億円と好調な立ち上がり。抗がん剤「ハラヴェン」や抗てんかん薬「フィコンパ」も軌道に乗ってきました。抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れが直撃する大塚ホールディングスは、持続性注射剤「エビリファイメンテナ」や「エビリファイ」の後継品「レキサルティ」などの動向がカギになります。

 

ロイヤリティー収入が伸びる田辺三菱と塩野義

導出品が大型化し、ロイヤリティー収入で海外売上高を伸ばしているのが、田辺三菱製薬と塩野義製薬です。

 

田辺三菱製薬、米ヤンセンに導出したSGLT-2阻害薬「インヴォカナ」(日本製品名「カナグル」)のロイヤリティー収入が206億円となり、前期から倍増。スイス・ノバルティスに導出し、特許切れが近づく多発性硬化症治療薬「ジレニア」も合わせると、これら2剤のロイヤリティー収入は723億円(34.6%増)に上ります。

 

導出先の15年の売上高は、「ジレニア」が27億7600万ドル、「インヴォカナ」(配合剤「インヴォカメット」を含む)が13億800万ドルと、いずれもブロックバスターに成長しました。

 

塩野義製薬は、英ヴィーブヘルスケアに導出した抗HIV薬「テビケイ」と抗HIV薬の配合剤「トリーメク」のロイヤリティーが、前期の4倍近い405億円となりました。ヴィーブによる両剤の販売は好調で、16年度は620億円に膨らむ見通しです。

 

ロイヤリティー収入の推移

 

主力製品の特許切れが業績を直撃した「2010年問題」を乗り越え、新たな収益の柱となるグローバル新薬が育ってきた国内の製薬各社。海外事業を強化する動きはもはや大手だけにとどまらず、準大手や中堅クラスの企業にも広がってきました。

 

ビジネスの軸足は確実に海外に移りつつあるだけに、稼げる新薬をいかに世界に送り出し、収益を最大化させられるかが、各社の将来を分けることになるでしょう。

 

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