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製薬各社、国内営業「地域」に照準…医療提供体制改革で変わる市場環境に対応

製薬各社の間で、「地域医療」に照準を合わせて国内営業を見直す動きが鮮明になってきました。

 

国が進める医療提供体制改革により、地域医療が大きな転換点に差し掛かる中、市場環境の変化を先取りした営業体制を構築する企業が相次いでいます。改革は今後、さらに本格化する見通しで、地域重視の動きはさらに加速しそうです。

 

 

地域医療の新たな担い手にフォーカス

今年4月から、2025年度までの10ヵ年の中期経営計画をスタートさせたエーザイ。国内営業では「地域医療へのフォーカス」を戦略の柱に掲げました。今後拡大が見込まれる在宅医療や、地域の複数の医療機関で医薬品の共同購入が可能となる地域医療連携推進法人へのアプローチを強化する方針を打ち出しました。

 

20年度に売上高8000億円以上(15年度見込みは5565億円)を目指す中計のコンセプトは“立地”。エーザイがフロントランナーとなり得る機会=“立地”を見いだし、イノベーションを通じてその場所で主導的役割を果たそうというのが基本戦略です。

 

これから国内市場に生まれる“立地”。それが、在宅医療や地域医療連携推進法人といった地域医療の新たな担い手だと言います。

 

こうした新たなターゲットに対し、エーザイはグループが持つ新薬や長期収載品、後発医薬品を疾患ごとに組み合わせ、治療成果や経済性を訴求する「パッケージ戦略」を描きます。

 

4月の組織改編では、この戦略を立案・実行する専門部署を立ち上げ、MRが所属する「地域統括部」を35から70に倍増。きめ細やかな営業体制を敷き、地域営業強化へアクセルを踏み込みます。

 

「病床の機能分化・連携」と「地域包括ケア」

地域の医療提供体制は今、大きな転換点を迎えています。国は「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて医療提供体制の改革を実行中。大きなテーマは、「病床の機能分化・連携」と「地域包括ケアシステムの構築」です。

 

国が目指す25年の医療提供体制は、

過剰な急性期病床を削減した上で医療資源を集中投入する一方、不足している回復期病床を充実させ、病床間の連携を促進して患者が状態に応じてスムーズに流れる仕組みを構築する

というもの。こうした方向性に沿って、病床の機能分化と連携を進めるためのさまざまな背施策が動き出しています。

 

地域医療構想の策定がスタート

14年からは、医療機関が今の医療機能と将来果たす医療機能を自ら選んで申告する「病床機能報告制度」がスタート。都道府県ではこれをもとに「地域医療構想」の策定が進められています。

 

地域医療構想とは、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4機能ごとに、25年の医療需要と必要病床数を、2次医療圏を基本とする「構想区域」単位で推計し、実現の方策を定めるものです。

 

さらに来年度からは、地域医療構想を実現するための手段の1つとして「地域医療連携推進法人」制度が施行されます。地域の複数の医療機関を束ねて一体的に運営するこの制度では、同一法人内で診療科や病床の融通が可能に。経営の効率性を高めるため、医薬品の共同購入もできるようになります(地域医療連携推進法人についてはこちらで詳しく解説しています)。

 

在宅医療イメージ

 

在宅医療の拡充も急ピッチ

地域包括ケアシステムの構築に向けては、在宅医療の拡充が急ピッチで進みます。16年度の診療報酬改定では、在宅医療を専門に行う医療機関の開設も認められました。かかりつけ医やかかりつけ薬剤師の普及も始まり、「病院完結型」から「地域完結型」の医療に変わろうとしています。

 

営業所の再編加速、重要性増すMSL

エーザイが地域営業の強化を打ち出したのは、こうした改革によって変化する市場環境に対応するためです。

 

地域医療構想や地域包括ケアシステムが進めば、個々の病院の機能は変わり、患者の居場所も変わります。エーザイが指摘するように、新たな地域医療の担い手が出てきますし、地域医療連携推進法人が行う医薬品の共同購入は地域の医薬品市場に大きなインパクトをもたらします。

 

「人の動きやネットワークを正確に捉えないと、必要な医師に必要な情報をどう届けるかという、本来なすべきことが抜け落ちていく」(第一三共の中山譲治社長)という認識は各社共通でしょう。今年に入って多くの製薬企業が中期経営計画を公表していますが、各社とも地域営業の強化や見直しを掲げました。

 

第一三共や協和発酵キリンは、地域医療構想の構想区域に合わせて営業所を再編する方針です。協和発酵キリンは従来のような「病院担当」「開業医担当」という役割分担ではなく、2次医療圏をベースとしたエリアを担当する体制に移行。第一三共も、営業所の担当区域を見直します。

 

支店の権限強化も

ニーズが多様化・高度化する地域の市場を攻略するには、メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)などMR以外の社内機能の重要性も増します。

 

中外製薬は、MRがMSLや医療連携支援を担当するメディカル・ネットワーク・リエゾン(MNL)といった社内専門家とチームを組み、地域のニーズに合った戦略を立案・実行する体制を2018年度までに構築。第一三共の中山社長も、4月に発足させたメディカルアフェアーズ本部の活動が重要になると話しています。

 

大日本住友製薬は4月から、これまで支店を束ねていた「地域本部」「地域統括部」を廃止し、これらの組織が持っていた戦略立案機能を支店に移す組織再編を行いました。より地域の実情に応じた営業を行うのが狙いで、5月に発表予定の中期経営計画でどのような地域戦略を打ち出すのか注目されます。

 

18年にさらなる変革の波?

「地域包括ケアというものが概念として、あるいは法制度として出てきてはいるが、完全に動き出したわけではない。まだいろんな変化があると思うので、全面的に変えるということはない」

 

第一三共の中山社長がこう話すように、地域医療が実際にどう変化するかは、必ずしもはっきりとしているわけではありません。地域営業の強化・見直しという方向性は鮮明になってきましたが、まだ手探りの部分も少なくないようです。

 

すでにさまざまな施策が動き出している医療提供体制の改革ですが、変化のピークは2018年と見られています。この年は診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されているほか、新たな医療計画と介護保険事業計画がスタートします。国が目指す2025年の医療提供体制を実現するための重要な年になるのは間違いありません。

 

製薬各社の国内営業には、さらなる変革の波が待ち受けていそうです。

 

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