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熊本地震で再認識される「おくすり手帳」の重要性…災害時の備え、今こそ確認を

熊本県などを襲った一連の地震。14日の「前震」発生から10日がたった今もなお、被災地では余震が続いており、多くの人が避難生活を余儀なくされています。

 

そんな中、地震などの災害時でもスムーズに薬物治療を受けるためのツールとして「おくすり手帳」への関心が高まっています。薬の服用履歴やアレルギーの有無などを記録しておくこの手帳。2011年の東日本大震災でも重要な役割を果たしました。熊本地震の発生を受けて、その大切さが改めて認識されています。

 

 

おくすり手帳があれば処方箋なしでも持病の薬がもらえる

医療用の薬は本来、医師の診察を受けた上で処方箋を出してもらわなければ、薬局で受け取ることはできません。しかし厚生労働省は今回の地震で、持病を持つ被災者が処方箋を持たずに薬局を訪れた場合でも、後から処方箋を書いてもらうことを条件に薬局で薬を受け取ることができるようにしました。

 

薬局の薬剤師に主治医と連絡をとってもらい、処方内容を確認してもらうのが原則です。ただし、主治医と連絡をとることができない場合は、薬歴(患者の服用履歴を薬局が管理するもの)、おくすり手帳、薬の包装などから持病の薬であることがわかれば、薬剤師に薬を出してもらうことができます。

 

災害時には、普段行く医療機関や薬局が被災によって閉まっていることも少なくありません。他県など遠方に避難することもあるでしょう。

 

こうした場合は普段とは違う薬局に行くことになりますが、初めて行く薬局には当然、あなたの薬歴はありません。ですが、おくすり手帳があれば、スムーズに薬を受け取ることができます。

 

東日本大震災で証明されたおくすり手帳の重要性

おくすり手帳は災害時にこそ重要な役割を果たします。それを証明したのが、2011年の東日本大震災でした。

 

おくすり手帳があるのとないのでは診察にかかる時間が大きく違った」(薬剤師)

既処方内容、併用薬などの薬剤情報、病歴などが確認できたので、医師に情報をフィードバックすると処方がスムーズになった」(薬剤師)

おくすり手帳には血圧などの変化も記録され、単純に薬剤の記録帳としてではなく、総合的な医療情報共有ツールとして活用されていた」(薬剤師)

治療中の病名だけでなく、履歴を見ることで病状把握に役立った」(医師)

震災で転居されてきた方の治療内容がわかり助かった」(医師)

 

日本薬剤師会の報告によると、震災で医療支援に入った多くの医療従事者が、被災地で診療を行う上でおくすり手帳が役に立ったと語っています。

 

逆に、おくすり手帳を持っていなかった被災者には、普段どんな薬を飲んでいるか分からず、最適な薬を出すのが難しかったそうです。実際、被災者から「血圧の薬」と言われて処方したものの、普段飲んでいる薬と違ったため血圧が下がらなかった、などといった事例も報告されています。

 

手帳があれば避難所でも安心して医療を受けられる

災害時に避難所などで医療支援を行う医師や薬剤師は、あなたがどんな持病を持っているのか、普段どんな薬を飲んでいるのか、一切分からない状態で診療や投薬を行わざるを得ません。

 

おくすり手帳を持っていれば、自分が普段どんな薬を飲んでいるか、正確に伝えることができます。過去に飲んでいた薬から病歴をうかがい知ることもできますし、アレルギーや副作用経験の有無も分かります。医師や薬剤師は、こうした情報をもとに、飲み合わせに問題がないかなどを判断し、適切な薬を出すことができます。

 

さらに、薬の情報だけでなく血圧や体調の変化を書き込むことで、カルテのような役割も果たします。災害時には、避難所を移動したり、同じ避難所でも医療スタッフが入れ替わったりすることが少なくありません。おくすり手帳があれば、こうした場合でも安心して医療を受けることができます。

 

東日本大震災被災地

東日本大震災では、災害時のおくすり手帳の重要性が証明された。写真は津波の被害を受けた宮城県南三陸町の防災対策庁舎 

 

おくすり手帳持参で医療費安く、国も普及を促進

一方で、おくすり手帳には批判が多いのも事実。特に最近では、その料金に対して患者から不満の声が出ていました。

 

ところが、今年4月に診療報酬が改定され、おくすり手帳に追加料金がかからなくなりました。それどころか、おくすり手帳を持参すれば医療費が安くなる仕組みに変わったのです。

 

おくすり手帳の料金は、薬局が薬歴を記入したり、飲み残しがないか確認したりした場合に支払われる「薬剤服用歴管理指導料」に含まれます。今年3月までは、おくすり手帳を持参すれば410円、お薬手帳がない場合は340円かかっていました。患者は窓口で1~3割を負担することになりますが、おくすり手帳がない方が安かったため、普及の妨げになっていました。

 

今年4月からは、この薬剤服用歴管理指導料を、おくすり手帳を持参した場合は380円に引き下げ、おくすり手帳がない場合は500円に引き上げました(ただし、おくすり手帳を持参して安くなるのは、6ヶ月以内に同じ薬局で薬をもらった場合に限られます)。おくすり手帳を持参した人の医療費を安くすることで、普及を進めようというのです。

 

ちなみに、以前はおくすり手帳を忘れると薬の名前などが書かれたシールをもらうこともあったかと思いますが、今ではほとんどありません。2年前の診療報酬改定で、シールを渡すだけでは薬局がおくすり手帳の料金を請求することができなくなったからです。

 

いざという時すぐ持ち出せるように

「くすりの適正使用協議会」が5年に1度行っている調査によると、おくすり手帳を利用している人の割合は、2010年は31.9%でしたが、15年には55.3%と半数を超えました。東日本大震災で重要性が認識されたことも普及の要因の1つと考えられます。ですが、「持ってはいるけどきちんと使っていない」という人も多いのではないでしょうか。

 

「毎回持って行くのを忘れてしまい、家に何冊もたまっている」という話もよく聞かれますが、それではおくすり手帳の意味はほとんどありません。手帳が何冊もあるという人は、薬局の薬剤師にお願いして1冊にまとめてもらいましょう。

 

地震などの災害は、いつ、どこで起こるかわかりません。仕事先にいるかもしれませんし、旅行に出かけているかもしれません。おくすり手帳は、普段から持ち歩くのが理想です。

 

それができない場合は、せめて災害が起こった時にすぐ持ち出せるようにしておくことが必要です。すぐに持ち出せるような場所で保管する、あるいは避難用持ち出し袋の中に入れておくなどし、家族にも保管場所を知らせておくことも大切です。

 

日本列島は今、地震の活動期に入ったと言われています。政府によると、南海トラフ全域を震源とする地震(マグニチュード8~9規模)は30年以内に60~70%の確率で起こると予測されています。熊本地震は他人事ではないのです。

 

普段、何気なく使っているおくすり手帳ですが、災害時ほど重要な役割を果たします。

 

今回の熊本地震を機に、持病がある人はおくすり手帳を作り、何冊も手帳がある人は1冊にまとめましょう。その上で、

「普段から常に持ち歩くようにする」
「すぐに持ち出せる場所に置いておく」
「避難用持ち出し袋の中に入れておく」
「保管場所を家族に知らせておく」

など、災害時の備えを再確認しておくことが大切です。

 

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