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相次ぐ「消費税引き上げ先送り」報道…どちらに転んでも製薬業界には厳しい

安倍晋三首相が、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げの延期を検討しているとの報道が相次いでいます。

 

仮に消費税率の引き上げが延期となれば、製薬業界にとって懸案となっている3年連続の薬価改定は避けられる反面、増税分を当て込む社会保障財源の見直しは避けられず、薬剤費へのしわ寄せも懸念されます。

 

一方、予定通りに消費増税が実施されれば、3年連続で薬価改定が行われることになり、毎年改定へのレールが敷かれることになりかねません。

 

予定通り増税を実施したとしても、先送りしたとしても、製薬業界は厳しい状況に置かれることになります。

 

 

首相は否定も広がる先送り論

世界に冠たるこの社会保障制度を次世代にしっかりと引き渡していくため、また、市場や国際社会の信認を確保するために、リーマン・ショックあるいは大震災のような事態が発生しない限り、来年、予定通り引き上げていく考えには変わりはございません――。

 

安倍首相は3月29日の記者会見で、消費税率引き上げについて従来通りの見解を繰り返し、先送りを否定しました。が、今、首相の発言を額面通りに受け取る向きはほとんどありません。読売新聞は会見翌日の朝刊1面で「安倍首相は消費増税の先送りを本格的に検討する」と伝えました。

 

3月中旬以降、消費増率引き上げの先送りに関する報道が相次いでいます。

 

◆消費税率引き上げ延期をめぐる主な報道(電子版、日付は3月)

「首相、消費税先送り検討…経済減速に配慮」(18日、読売)

「安倍首相、消費増税の再延期検討=世界経済動向見極め」(18日、時事)

「首相、衆参同日選5月判断へ 消費増税先送り視野」(19日、共同)

「安倍首相、消費増税先送り検討 サミット前後に判断か」(26日、朝日)

「消費税10%再延期へ 安倍首相が方針固める 5月に正式表明」(28日、産経)

「消費増税、再延期検討 サミット前後に安倍首相が判断=関係筋」(28日、ロイター)

「安倍首相 衆参同日選、5月に判断 増税是非も」(29日、毎日)

「消費増税先送り、サミット前後に最終判断…首相」(30日、読売)

「消費増税延期や衆参同日選 首相判断、5月メド」(30日、日経)

 

各紙が増税延期の背景要因として指摘しているのが、世界経済の減速です。年明け以降、中国経済の減速や原油安を受けて株式市場が急変。円高・株安が進んでいます。

 

首相は従来、リーマン・ショックや東日本大震災のような事態が起きない限り、増税を行うと繰り返してきました。しかし、円高・株安が進むにつれ発言も変化。最近では、増税の可否を判断する材料の一つとして「世界経済の大幅な縮減」に言及するようになりました。

 

首相も出席する「国際金融経済分析会合」ではノーベル経済学賞受賞者が先送りを求め、首相の経済ブレーンも増税凍結を唱えており、先送り論に拍車が掛かっています。

消費税に関する新聞記事

相次ぐ増税延期の報道。写真は3月28日付産経新聞朝刊(右)と30日付読売新聞朝刊

 

増税先送りなら…3年連続改定は回避も医療費に削減圧力

消費税率の引き上げが先送りされた場合、製薬業界にとって当面の懸案事項となっている2017年4月の薬価改定を行う理由はなくなります。

 

消費増税分を薬価に反映させるために予定されている2017年4月の改定では、増税分の上乗せに加え、市場実勢価格に基づく通常の改定を行うかが焦点となっています。3年連続の改定は製薬企業にとって大きなダメージとなりますが、増税延期となればこれを回避することができます。

 

社会保障財源の見直し不可避、薬剤費の適正化議論に?

一方で、頭の痛い問題もあります。

 

消費税の引き上げで得られた財源は、法律によって全額社会保障に使うと決められています。増税分を当て込んでいた社会保障財源の見直しは避けられません。

 

政府は2017年度から、介護保険料の軽減措置の拡充や、年金生活者に対する支援金の給付などを行う予定です。増税が延期されれば、代わりの財源を見つけるか、実施を先送りしなければなりません。

 

政府は2016年度からの3年間で、社会保障費の伸びを1兆5000億円(年間5000億円)に抑えることを目標としています。増税がない中で財源を捻出するとなると、薬剤費を含む医療費にしわ寄せが来かねません。

 

政府が2015年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、

▽多剤・重複投薬の解消
▽後発医薬品の使用促進
▽長期収載品と後発医薬品との差額の自己負担化(いわゆる参照価格制度)
▽市販薬と類似した医療用医薬品に対する保険給付の見直し
▽医薬品の不適切な給付の防止
▽費用面も考慮した生活習慣病治療薬の処方のルール化

といった薬剤費削減策の検討を求めています。増税延期となれば、財源捻出のためにこうしたことが再び議論になるでしょう。

 

改定財源不足で薬価切り詰め?

3月18日の読売新聞の報道によると、首相は増税を1~2年間延期することを検討しているといいます。

 

仮に2年間の延期となれば、2018年度に予定される診療報酬と介護報酬の同時改定は、増税による財源がない中で実施されることになります。改定財源の確保が至難を極めるのは必至です。改定財源を確保するため、2018年度改定では薬価の切り詰めがさらに厳しくなる可能性があります。

 

増税実施なら…毎年改定に現実味?

逆に予定通り消費税率が引き上げられれば、2017年4月には薬価改定が行われることになります。

 

繰り返しになりますが、2017年4月に薬価改定が行われる場合、焦点となるのは市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを行うかどうか。製薬業界は増税分を反映させる小幅な改定を求めていますが、財務省などは市場実勢価格に基づく通常改定を実施すべきと主張しています。

 

増税分の上乗せだけでなく、市場実勢価格に基づく薬価の引き下げが行われれば、製薬企業にとっては大きな痛手です。

 

2015年度の「骨太の方針」では、2018年度までの3年連続の改定実績をもとに、薬価改定の頻度を検討するとされました。2017年4月に市場実勢価格に基づく改定が行われれば、その先にちらつく毎年改定が現実味を帯びてくるかもしれません。

 

判断は5月のサミット前後か

衆参ダブル選など政治的思惑も絡み、増税先送り論は急速に広がっています。

 

各紙の報道によれば、首相が消費税率引き上げの可否を決めるのは5月。2016年1~3月期の国内総生産(GDP)の速報値を踏まえ、5月26、27日に予定される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の前後に最終判断すると見られています。

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